ヒギンス(Higgins E. T.)の制御焦点

 前回ご紹介したメタ動機づけの中のヒギンス(Higgins)の制御焦点について説明します。

 Higgins (1998)は、基本的に異なった欲求に基づいて、違った方略で働く動機づけがあると仮定しました。それは、栄養・育成(nurturance; e.g. nourishment)の欲求と、安全・保護(security; e.g. protection)の欲求に基づくものです。前者の欲求に基づく快楽原理を満たす方略を促進焦点(promotion focus) 、後者の欲求に基づく快楽原理を満たす方略を予防焦点(prevention focus)と呼びました。どちらの焦点を使うかが制御焦点(regulatory focus )です。これは、Higgins(1987)のセルフ・ディスクレパンシー理論の理想自己への自己制御(促進焦点)と義務自己への自己制御(予防焦点)と対応すます。

 この理論では、人間は環境に合わせて促進焦点と予防焦点のいずれかの戦略を選び、行動するとされています。促進焦点時には、なるべく利得を増やすことを目指し、利得を獲得するための行動をできるかぎり実行しようとします。一方、予防焦点時には、なるべく損失を出さないことを目指し、損失のリスクのある行動をできるかぎり抑えようとします。例えば、野球になぞらえてみると、打者はヒット(これが利得)を打つためにはバットを振らなければならないが、ボール球を振ると三振や凡打(これが損失)などのリスクが高まります。この時にヒットを打つチャンスを優先させて、積極的にバットを振っていくのが促進焦点に基づく戦略であり、三振や凡打を防ぐことを優先させて、慎重に見送ろうとするのが予防焦点に基づく戦略のだと言えます*1

*1: 追うもの、追われるものどちらが利己的か? 日本社会心理学会論文ニュース 佐藤俊雄から抜粋修正
http://www.socialpsychology.jp/ronbun_news/33_02_0947.html






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