ヤクザと家族 The Familyはラブストーリーだ。

----2021年のベストワン

結論から言うと、すばらしい映画だった。
（細かい描写のツッコミは置いといて素直に）

簡単なあらすじを言うと、全体的に3つの時代で構成されている。

綾野剛扮するチンピラの賢坊が舘ひろし演じる柴咲組組長柴咲に拾われるところから始まる第一部。

賢坊が組内で成長し世の中も少しずつ変化する中、キャバクラ嬢の尾野真千子扮する由香と出会い、他の組との抗争も激化し、最悪の結末で綴じる第二部。

世の中が変わり果て、任侠の人間には生きにくい毎日となった数年後。色々な想い、因縁、変化が全ての登場人物を囲う。そんな第三部。

そして、最後、悲しい終わりへと。

----演者の卓越性

シナリオももちろん良いのだが、演者のクオリティでもっていかれた。

綾野剛、舘ひろしの演技は勿論すばらしかった。

冷たい。でもあったかい。そんな演技だ。

ただ一番この映画を良い方向に導いたのは、この2人なのではないかと思う。

北村 有起哉が演じる若頭中村だ。

台詞が少ない。でも色々な感情やうちに秘めた想いを言葉のない演技で圧倒していた。物語中でも存在感を余すことなく、観ている者への記憶を刻んだ。組長に対する圧倒的な忠誠心、使命感、人に対する想い、自己犠牲の精神。生き方は真っ当ではないが、狂気的に素敵に感じた。

この物語を濃くしたもう1人は
木村翼を演じる磯村勇斗だ。

この物語中、木村翼という人物は第一部から出てくるが、それは子役だ。磯村勇斗が演じる木村翼は第三部にしか出てこない。
第三部のみでも圧倒的な演技力で、バスっと脳に突き刺さる演技をしてきた。スクリーンで余すことなく。同性を惹きつける役者というもの、それは中々いない。同じ性で感情が同じ領域にあるため、とても難しいからだ。しかしながら、短い時間で人を惹きつける演技力に素直に他の作品も見たくなった。

----任侠映画ではない

ヤクザとファミリーは、任侠映画ではない。それこそバイオレンスの描写が出てくるが、それは表現手段の一つだ。

テーマは、「愛」だ。

世間体的に「愛」を語るとカッコ悪いとされている。
みんな持ってるもので、毎日使うものなのに剥き出しになったり語ると途端にカッコが悪いとされてるものだ。

いろんなカタチがあって、いろんな終わり方がある。2度と会わないという終わり方もあれば、裏切りという終わり方もあるし、死して終わる場合もある。

そんな全ての愛の始まり方、終わり方を目一杯の尺を使って表現している。

「それ」を素晴らしいシナリオと演者で、とにかく生々しくそして人間臭く描いている。

公開後すぐに見たが、見終わったあと「あぁ、いい映画だったな、今年一だろ」とベストワンを決めてしまった。

そんな映画だ。