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一体、自分は何の為に創っているのか?

若い時に仕事をしていて、タイトルのような疑問を感じる事がありました。今はその答えがこれだと考えています。

私は建築業界で1996年から働いております。工業高校を卒業した18歳から現場に出て、あの頃はどろどろになりながらも何もかもが新鮮で、汗水を垂らしながら働いていたのを覚えています。20代半ばからは建築設計の道に進むべく、ゼネコン設計部や設計事務所に在席をし、設計の基礎を覚えノウハウを身に着けてきました。



常々、建築は奇跡的な巡り合わせの産物であると感じています。基本的に建物は事業主、設計者、施工者の三者によって人が築いていきます。そして、各々がその機会に恵まれるかどうか、まさに運命だとも思います。この人と人との巡り合わせによって最終の建築の姿も全く違ったものに出来上がるでしょう。当然そこに至るまでにそれぞれが個性を発揮し、意見交換をしながら創り上げていくのですから。



さて、建築物を創るプロジェクトは規模によって長期的になる事は容易に想像出来ます。そういう意味では我々設計者も生涯携わる事の出来る仕事には限りがあり、どんなプロジェクトに従事し、そしてどのような成果を残せるかで人生そのものが変わると考えます。また施工者においても、より一つの現場に専従する度合いが強いという意味では、他の進行中の物件の兼ね合いでそのプロジェクトの担当になるかどうかが決まるので、タイミングは非常に難しいと言えます。そして事業主から見た場合の設計者と施工者の業者選定という場面においては、誰もがなかなか思い通りには行かないというのが現実かと思います。これが住宅であれば一生に一回の事ですから過剰に慎重にもなるでしょう。いずれにせよ、理想的なものに仕上がるかどうかはタッグを組む者によって大きく変わります。ですから三者の関係は本当に重要で、良い関係性で協力しながら仕事をして行く事が良い結果を生む、これは誰が見ても明らかでしょう。



そして、もっと重要なのは、建築は事業主の所有欲を満たすだけの物でもなく、設計者の作品を残す為だけの物でもなく、施工者の売り上げだけの物では無いと信じています。



「機会」(Oppotunithy)を大切にしながら、「誠実」(Sincere)な仕事をし、

「後世のために」(Ieave for posterity)、創っていく。



このような考えで設計を行います。具体的には、事業主は世代が変わってもその建物を同じ価値感で使用する事が出来、設計者の後輩はその建物から精神的な継承と技術的なノウハウを引継ぎ、施工者の変更があってもその建物に施されたシステムにより改修工事やリニューアル工事をする事が出来る。何十年、何百年経った後でも。そう、後世を素晴らしい世界とする為に創っていく。私はここが建築を創るという精根の在り処だと考えています。



事務所のロゴは、未来においても自然と共存しながらも精神的なリズムと可変性を後世へと繋げていく。このイメージで知り合いのデザイナーさんと一緒に創りました。私の好きな「平家物語」の ”沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす” にある沙羅双樹の花の色のように、これからの新しい変化にも対応していく覚悟と信念を持って進んでいきたいと思います。



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