見出し画像

Compressed Gas Association (CGA) V9 全文要約ガイド<CGA V9技術要綱大全>

圧縮ガスバルブ専門家への道を究めるための深掘りガイド


圧縮ガスの扱いにおける専門知識は、単に安全規則を守るだけではなく、業界のプロフェッショナルとして自身を確立するための基盤です。本ブログでは、圧縮ガス業界での専門性を深めたい方々に向けて、包括的かつ詳細な情報を提供しています。ここからは、種類別バルブの徹底解説から始まり、型式認定試験の通過法、資格試験の準備、生産過程での品質管理、そして長期にわたる保守とメンテナンスの方法に至るまで、圧縮ガスを安全かつ効率的に使用するための実用的な知識と技術を細かく解説していきます。

専門家としての知識を深めることは、単に業務の質を高めるだけでなく、業界内での信頼性と自身のキャリアを向上させることにもつながります。特に、型式認定試験の内容とその準備方法には焦点を当て、実際に読み込んだCGA基準をベースにわかりやすく、具体的にご紹介します。

この文書が読み終わる際には、

  • 圧縮ガスシリンダーバルブの安全設計、製造、利用に必要な基本知識。

  • 操作温度限界、圧力範囲、流量能力など、バルブ性能要件の理解。

  • シリンダーバルブにおける材料選択の重要性とその影響。

  • バルブ接続、マーキング、圧力解放デバイスなどの設計考慮事項。

  • 様々なタイプのバルブとそれらの特徴、利点、用途。

  • バルブの適格性試験手順と必要なドキュメント。

  • 生産過程における要件、テスト方法、品質管理。

以上について理解、業務に反映するレベルに達していることが狙いです。
内容は多岐にわたりますので、何度も読み返しながら理解を深めることをお勧めします。
また、このガイドはCGA V9をよりわかりやすく理解するために要約し、作成されていますので、詳細な情報は省略している箇所もあります。実際の認証取得は最新のCGA V9を参照ください。
では、早速見ていきましょう。

  1. CGAとは?:圧縮ガス協会(Compressed Gas Association)について

  2. 圧縮ガスシリンダーバルブの重要性

  3. 安全基準の範囲:安全基準の範囲:CGA V9がカバーしている範囲は?

  4. バルブ設計の要素:インレット、アウトレット、材質

  5. 【全種網羅】種類別バルブ解説:機能と使用方法

  6. 型式認定試験の試験内容概略:どのように取得を進めればいい?

  7. 資格試験:バルブの性能保証

  8. 生産要件について:品質管理と製造基準

  9. 保守とメンテナンス:長期使用のためのキーポイント

  10. シリンダーバルブ保護キャップ:追加の安全措置

1.CGAとは?:圧縮ガス協会(Compressed Gas Association)について


Compressed Gas Association (CGA)は、1913年以来、圧縮ガスの安全基準を設定してきた組織です。アメリカ、バージニア州シャンティリーに本部を置くこの組織は、圧縮ガス業界における安全基準の向上と公共の安全の促進を目的としています。
CGAのガイドラインと基準は、製造業者、使用者、および規制当局によって広く採用されており、圧縮ガス製品の安全かつ効率的な取り扱いに不可欠な要素となっています。CGAの基準は、圧縮ガスシリンダーの安全な使用における業界のコンセンサスを反映したものであり、業界関係者にとって信頼できる情報源となっています。
 

2.圧縮ガスシリンダーバルブの重要性


圧縮ガスは、その化学的組成と特性が多岐にわたります。これには酸化性ガス、可燃性ガス、不活性ガスなどが含まれ、腐食性、毒性、圧力の度合いもさまざまで、純粋な状態だけでなく、様々な混合物として存在します。したがって、圧縮ガスシリンダーバルブがその目的に合った設計と試験を経ていることは、重要かつ基本的な安全要件となります。
 
Compressed Gas Association, Inc. (CGA)は、長年にわたり圧縮ガスシリンダーバルブの使用における公共の安全を促進する必要性を認識してきました。この基準は、圧縮ガスの安全な設計、製造、および使用に寄与する要因を定義しています。さらにバルブの選択、使用ガイドライン、およびバルブ保護キャップに関する情報も提供しています。また、*U.S. Department of Transportation (DOT)および**Transport Canada (TC)のシリンダーに充填された圧縮ガス用バルブについても対象としています。
 
*Department of Transportation(DOT)規格:アメリカ合衆国運輸省が定める安全基準。圧縮ガスシリンダーを含む様々な輸送用コンテナの設計、製造、使用に関する規定を含む。これらの規格は、シリンダーの安全性を確保し、輸送中や使用中の事故を防ぐための重要なガイドラインとなっており、例えば、低炭素鋼製のサンプルシリンダーがDOT規格4B-350や4B-240に適合していることが示されており、これは定格圧力240psiで使用できることを意味する。
 
**Transport Canada (TC)規格:カナダの運輸省が定める輸送に関する安全基準。これには、圧縮ガスシリンダーを含むさまざまな輸送手段と貨物の安全な取り扱いに関する規定が含まれる。圧縮ガスシリンダーの基準では、これらの規格はシリンダーの設計、製造、試験、マーキング、使用に関する要件を定めており、適切な取り扱いと安全な輸送を保証するための指針となっている。
 
圧縮ガスシリンダーバルブの重要性とその安全基準に対するCGAの取り組みを説明しました。圧縮ガスシリンダーのバルブは、ガスの安全な取り扱いにおいて中心的な役割を果たすため、バルブはその使用目的に応じて慎重に設計され、適切にテストされる必要があります。
テストについては第何章で詳しく説明します。
 

3.安全基準の範囲:CGA V9がカバーしている範囲は?


この基準はシリンダーバルブの設計、製造、および使用全般にわたり、操作温度の限界、圧力範囲、流量能力などの性能要件を扱っています。また、以下のような幅広い要件もカバーしています:

  • 使用される材料

  • インレットとアウトレットの接続方法

  • クリーニングプロセス

  • 資格、生産試験

  • 保守と再調整

さらに、シリンダーバルブ保護キャップの設計、材料選択、試験、マーキングに関するガイドラインと要件も含まれています。この基準は、主に*アメリカ運輸省(DOT)および**カナダ運輸省(TC)によって梱包された圧縮ガス用バルブに適用されます(最終段落に記載の例外を除く)。
バルブの選択、使用に関するガイドライン、そしてバルブ保護キャップについての情報が提供されています。
この基準の有効日以前に製造されたバルブに関しては、それらが原バルブ製造業者によって識別可能であり、製造期間に追跡可能である限り、引き続き使用することが許可されています。基準の有効日は、この版の公開日から3年後の2019年11月15日です。その有効日以降に製造されたバルブは、この基準に準拠していなければなりません。
 

4.バルブ設計の要素:インレット、アウトレット、材質


前提として、バルブ設計に関する要件は、ISO 10297を元に、CGA V9に記載された追加要件を満たす必要があります。
バルブの接続方式は以下に詳細を説明します:

インレット接続:基本的に、ねじ込み式のインレット接続が使用され、これらの接続にはテーパーねじ、ストレートねじが使用されます。これらのねじは、特定の仕様が認識される場合を除き、FED-STD-H28Aねじ規格または他の規格に従う必要があります。インレット接続の設計上の検討事項として以下についても検討してください。

  • Modified National Gas Taper (NGT):ガスシリンダーバルブのインレットやシリンダーネックのねじに使用されるアメリカンガスパイプねじ(テーパー式)。ANSI CGA V-1規格に定義されている。NGTねじは、特にガスシリンダーのバルブに関連して使用され、圧縮ガスにおける信頼性の高い接続を提供するために設計される。

  • 3/4"-14 NGT (Cl)ねじ:主に塩素ガスシリンダーに使用されるバルブのインレット接続に関連する特定のねじ規格。塩素バルブ3/4"-14 NGTは、クロリン研究所(The Chlorine Institut)のパンフレット17(Packaging Plant Safety and Operational Guidelines)に準拠して製造されており、最高使用圧力が500 PSI / 34 Barに設定されている。これらのバルブは、ガスシリンダーの耐久性と安全性を確保するために特別に設計され、オーバーサイズのねじがシリンダーのねじ摩耗に対応し、シリンダーの寿命を延ばすことができる。

アウトレット接続:充填および圧縮ガスを使用する際に、機器にバルブを接続する手段であり、テーパーねじ、ストレートねじ、またはねじ山が使用されないヨーク接続で構成されます。
CGA アウトレット接続のトルク:CGA V-1、CGA V-17、CGA 630/710 、CGA V-21、シール用トルクガイド付録 II に記載。

材料の選定:金属および非金属材料共にバルブを使用する環境に応じて選定しなくてはなりません。
腐食性ガスに使用するバルブには、互換性のある材料を使用することを推奨しています。Ex)塩素に使用するバルブにはシール材として、クロリン研究所によって推奨されるパッキンが使用されます。一方、多くの他のバルブではPTFE(通称テフロン®)パッキンが一般的に使用されます。
銅を65%以上含む合金の使用における注意点:アセチレン、塩化ビニル、塩化ビニルメチルエーテル、およびメチルアセチレン型プロパジエン安定化ガス(MAPPガス)など、特定のガスとの反応により爆発性アセチリドが形成される可能性があるため使用できません。また、アンモニアを含むガス濡れ部分には、ストレス腐食割れ(SCC)の傾向があるため、銅およびその合金を使用することはできません。同様に、メチルアミンおよびメチルメルカプタンを含むガス接触部分や、一酸化炭素を含むガス接触部分にニッケルを使用することも避けるべきです。
 
酸素で使用するバルブの注意点:
潤滑材はISO10297に認定されていなければなりません。
材料の選定では、ステンレス鋼を使用する場合には特に注意が必要です。設計において、圧力、流量、清潔度、および可能な粒子生成を考慮する必要があり、一般に、圧力と流量が高いほど、ステンレス鋼が点火原因になる可能性が高くなります​​。
(TIPS) 医療用バルブの注意点:
医療用酸素バルブを設計、製造、組み立てる際には、資格のある技術者がASTM規格に含まれる情報を考慮してください。



5.【全種網羅】種類別バルブ解説:機能と使用方法

ここから先は

6,947字

¥ 1,000

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?