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【事実発掘!FACT JAPAN 47 NO.23 】鳥取県

「キャラクター特性による広告戦略」これは大学の卒業研究テーマ。
実は大のキャラクター好きで、今もたくさんのマスコットたちと暮らしております。こんにちは、三寺です。
今回は地域活性の担い手「ゆるキャラ」の話題から隠れた事実に迫っていきたいと思います。

2020年10月。地域を、日本を元気づけてきたご当地キャラクターの祭典「ゆるキャラグランプリ」がその幕を閉じた。2011年の第1回大会では、熊本のくまモンがグランプリを受賞し全国的な知名度を獲得。関連商品の売上は2019年には1579億円を記録し、累計では8100億円を超える大ヒットキャラクターとなった。くまモンの成功により「ゆるキャラグランプリ」はご当地キャラを地域振興の起爆剤に押し上げる登竜門としての地位を確立。しかしながら、近年はエントリー数の減少や、不正投票疑惑が取り沙汰され、そこに未曾有のコロナが襲来し、トドメを刺した形となった。ゆるキャラやそこから派生した文化が定着し、目新しいご当地キャラクターが人気を競う時代から、各自治体が既存のキャラクターをどう活用していくかの時代に移り変わる節目を迎えたことで「ゆるキャラグランプリ」はその役割をまっとうした、と関係者は語る。

鳥取1

*最後のゆるキャラグランプリは、東北の復興を願い岩手県で開催された。心なしか寂しい・・・

そんな中、長い間地域に根付き、いつの時代も進化し続けているゆるキャラがいる。鳥取県の「トリピー」である。
実はこの「トリピー」はコギャルが出現し始めた1995年生まれ。ゆるキャラという名前やブームが定着する15年も前から存在し、ゆるキャラという名を生み出したみうらじゅん氏から「元祖ゆるキャラ」「ゆるキャラクラシック」の称号を与えられている。
1995年、鳥取県で行われた山陰・夢みなと博覧会のマスコットキャラクターとして誕生し、博覧会後も県民から惜しまれ1998年に県のPRキャラクターとして昇格。
2002年からは、ゆるキャラとしてみうらじゅん氏の番組や著書などで露出を始めた。そしてここからの「トリピー」は時代とともに様々な変貌を遂げていく。
2008年5月、深刻な地球温暖化防止についてPRするための「エコトリピー」登場。10月は読書活動を推進する「読書トリピー」その翌月には健康づくりを県民にPRするため「げんきトリピー」へ。
2009年は「お祭りトリピー」2010年は「防災トリピー」2011年は「花トリピー」がお披露目され、2012年には鳥取県を本拠地とするサッカークラブ、ガイナーレ鳥取(現在J3リーグ)を応援するマスコットキャラクター「ガイナーレトリピー」として活躍の場を広げた。

その後も「アートリピー」や「にわトリピー」など、2019年に至るまで幾度となくその風貌や役割を変えて時流に乗って活躍しまくってきたのだ。
実はこの「トリピー」2011年の第1回「ゆるキャラグランプリ」から3年連続エントリーしているが、159位、417位、287位と世の中的に目立つことはなかった。現に「トリピー」を知らなかった人も多いのではないだろうか。しかしながら、鳥取県民で知らない人はいないという。現在もほぼ毎日twitter(@tottoripref)で鳥取県の魅力を発信し続けている。調べたところ、2010年8月からほとんど途切れることなく発信し続けている。まさに地域に根ざし、地域の顔として県民と共に生きているキャラクターなのである。ちなみにトリピーは、名産の梨でできている。

鳥取2トリピー

*これは必読!「教科書にのらないトリピーの歴史」https://www.pref.tottori.lg.jp/268032.htm

そして、鳥取県のもうひとりの強烈なキャラクターといえば、平井伸治知事である。鳥取県最強のトップセールスマンであり、型にハマらない奇想天外の施策の数々を繰り出してきた。「スタバはないけど、日本一のスナバがある」この平井知事の名言を覚えている人も少なくないはず。2014年4月、全国の都道府県で唯一「スターバックス」の店舗がないことを逆手にとり、砂丘で知られる鳥取県に「すなば珈琲」がオープン。
このユニークなニュースは全国的に広がり「すなば珈琲」は連日賑わいをみせ、鳥取県は大きな注目を浴びた。そして同年9月、ついに「スターバックス」が動き、最高経営責任者(CEO)が県庁を訪れ出店計画を明らかにした。そして翌年、鳥取県に念願の「スターバックスコーヒー」がオープンした後は「スタバVSスナバ」の対立構造を用いたプロモーションを行い、新たなビジネス・集客力をつくりだした。2016年にはコーヒー購入額が全国一位となっている。
2017年には社会現象となったスマホゲーム「ポケモンGO」のブームにいち早く乗り「鳥取砂丘スナホ・ゲーム解放区」を宣言した。当時、目新しいモンスターを目当てにユーザーが道路などに溢れ大きな問題になっていたが、砂丘なら無問題。11月24~26日の3日間で、鳥取砂丘に延べ8万7000人程が来場し、経済効果は10億円を超えたという。
また、県をあげての大規模な観光誘致事業においても、時代に合わせて変化・進化をし続けている。カニの水揚げ量日本一を誇る鳥取県は、県内に宿泊する旅行者を対象に、松葉ガニなどを贈る「ウェルカニキャンペーン」を実施。期間中「蟹取県」と改名し話題になった。
ちなみに「トリピー」も「蟹トリピー」となってPRしている。
「日本一美しい星空を観察できる」という県の魅力を発信する際には「星取県」へと改名しアピール。最近では温泉地などをアピールするべく「鳥取県はほっこり県」という知事の名言も飛び出したとか・・・
これらは秀逸なダジャレも相まって場当たり的な施策に思えるが、実はしっかりと地に足がついている。蟹や星や温泉など、地域ならではの実績や売り出すポイントが軸にあり、それを楽しむイベントやアクティビティを充実させている。さらには宿泊施設とも連携し、観光客の滞在を促している。現にコロナ前2019年の観光客数は前年から48万人増加、2013年以降で最高となっている。
鳥取県は日本一人口が少ない県である。市も4つだけ、政令指定都市もない。それゆえに、県トップの強烈なリーダーシップのもと、首長や職員、観光業従事者たちが一丸となり、変わりゆく時代の波にいち早く乗れているのかもしれない。

鳥取3


*平井知事のトップセールスから生まれた奇想天外な事象たち

現在、鳥取県はコロナ対策ベスト1位に輝いている。平井知事が先頭に立ち「鳥取方式」という対策を打ち出し、新型コロナの感染者を徹底的に検査、追跡して封じ込め、変異ウイルスに関しては、陽性者の100%を変異ウイルスの検査に回している。政府の目標が陽性者の40%を抽出検査に回すことで、東京都や大阪府などの大都市では20%前後しか達成していない現状をみると、画期的な試みである。さらには、県民にコロナ対策をお願いするために、新型コロナウイルスに関する知識を県庁の担当部局だけでなく、全職員に持ってもらうために「全員研修」を行うことを始めているという。
こういった時代の変化に即対応する実績もあり、東京都から鳥取県への人口移動増加率が23.3パーセント(2019と2021年の比較)と全国で1位となった。
来年度からは、民間企業の兼業や副業を活用した移住支援制度の創設などに取り組んでいくそうで、今後も都心部からの移住が増加していくと思われる。
時代の流れを読み、すぐに行動に移す。常に先手を打ち続ける鳥取県が、先の読めない日本をリードする日も遠くない。その時「鳥取県のトリピー」は「ニッポンのトリピー」として大きく羽ばたくことだろう。

いやー、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの鳥取県、今後も目が離せません。
次回は、FACTの進化を止めないビジネスディレクター「トラピー」からお送りします!では。

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