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セットについて

Romeo & Giulietta ama e cambia il mondoの基本的なセットの作りについてざっくりまとめました。ここで書くことは公式で出している情報ではなく、私個人がDVDや公演写真から想像した位置や大きさ関係ですので、その点ご了承ください。また、一部のシーンで出てくる別出しのものは入れていません。常設の基本セットのみです。
このnoteに舞台写真を貼るわけにいかないのでイメージしていただきやすいように軽くまとめた程度のものですので悪しからず…。

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DVDを凝視して平面図を起こしてみました…。仮設劇場のサイズすら分からずにアレーナの平面図に感覚で入れ込んだので…。もう多大に間違ってると思います。
特に奥行き関係、幕類の位置など…。

あとDVDからでは全く分からないので袖中の情報は割愛しました。床のマスを150cm四方にしたのは、稽古場や舞台でのアップ時の写真などから床のリノリウム幅がだいたいこのくらいの幅に見えるのと、イタリアのリノリウムを探すと1m、1.5m、2mという幅で売っていたので150かなと思い、写真と見比べて奥行きが目印になるように150に設定してみた…という完全に私が整理する都合だけに合わせたものです。

と言っても平面図と正面図では分かり難いと思いますので3Dにしてみました。

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まず大きな円形闘技場、Arena di Veronaがあります。アレーナはもともと劇場ではないのでステージは中に作ることになります。
オペラの公演などでは壁を立てずにアレーナの遺跡をそのまま生かして露天の大型セットを組んだりしていて大変にかっこいいのですが、今回はアレーナの中に小屋(劇場)のステージ部分を仮設で建てた中にセットを組む方式をとっています。
ノートルダム・ド・パリのミュージカルなんかもこの場所でやっていますが同じ方式のようですね。
そもそも開幕の2日間以外はイタリア国内の劇場をまわるツアー公演がメインなので、通常の劇場に組むことを前提としたセットなのかと思われます。

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正面から見ると(多分)こんな感じ。1度で良いから生で観てみたい…。
ハマるタイミングが絶妙に遅くて行き逃しました…。

セット全体をざっくり見ていきたいと思います。
画像は先ほどの平面図を少々拡大したものです。

平面アップ

総合2

まず舞台の両側に3階建ての大きな構造物がありますね。2階までは白っぽいコンクリートのような化粧の柱、3階は鉄骨のデザインになっています。大きな開口部は人が出入りする箇所で、それぞれにロールアップするカーテンがついています。

1階の舞台中側を向いた開口部からは2階の床を延長できる台下のワゴンが出てきます。ちょくちょく使ってる印象。一番目立つのは舞踏会のシーンでしょうか。カプレッティ卿とテバルドが立って話している場所です。あとバルコニーシーンでもジュリエッタを乗せて使っていますね。

この両側の建物と一緒によく使われているのが、舞台前方の両サイドにある階段ワゴンです。この位置だけでなく舞台の中へ入ってくることもあります。
手すりは手前側のみ。
そしてその前に3層レールで舞台両端からスライド開閉する紗幕張りのパネル。
マブの女王などの、いわゆる「幕前芝居」はこのシャッター前で行います。
その更に前には順番はわかりませんがプロローグ後に振り落とされる「振り落とし幕」これもおそらく紗幕かと思います。それと一番最後に閉められる両側に開閉するカーテン式の引き割り幕。開閉時に人の脚が見えているので手動かも?

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そして、舞台奥でクルクル回る3枚の大きな壁のようなパネル。1枚ずつがクルクルと回転する他、舞台前に向かって長いレールを伝い、前後にも動きます。

これはシーンごとの絵作りを大きく印象付けていて、♪Quando(日本版いつか)や♪Avere te (日本版娘よ)では恋人たちを、親子を隔てる高く厚い壁となります。シーン中でも曲に合わせてダンスのようにどんどん動き、セットが踊っているよう。流石振付家ジュリアーノの演出だなあと思います。

そのパネルと、更に後ろのスクリーンにも同時に映像が打たれるので(パネル回転やシャッタースライド中もピッタリ映像が合っていてめちゃくちゃ凄い…!)多層的で複雑に見える空間を演出しています。♪Verona(ヴェローナ)や♪S'innamora già(日本版あの子はあなたを愛している)など、とても美しい映像とセットの合わせ方になっています。

そして大物セットの最後は「床」です。縦4列、横4列の計16台のセリが1つ1つ独立してアップダウンする他、複数個の同時昇降もピッタリ揃ってシーンを作り出します。
♪Io tremo(僕は怖い)のシーンのようにランダムにボコボコとベンチのようになる時もあれば♪Non so più(何故)でコの字型に立ち上がって神父を囲んだり、♪I re di mondo(世界の王)のように階段を作るなど規則性を持った形を作ることもあります。

ただ、イタリア国内の劇場をツアーでまわっていた時には16台仕込むことが難しい場所もあるようで台数が減っている写真も見かけます。舞台両側のセットも奥行きが減って側面の開口部が3つから2つになっているバージョンを見かけたりもします。もともとツアーを念頭に置いて変更が効くデザインになっているのかもしれません。

それでは
いくつかのシーンを作ってみたので、これで道具ごとの動きを見てみたいと思います。

La domanda di matrimonio(結婚のすすめ)

結婚の勧め

結婚の勧め2

舞台両側のデッキ前まで紗幕のスライダーが各1枚ずつ閉まっています。上手(客席から見て右側)の2階にいる乳母を紗幕張りのスライダーに投影した映像越しに見せているのが絵画のようで大変に美しいです。

奥の3枚のパネルは角度を変えながら曲中で前後に動いて空間の見せ方を変えていっています。
乳母のいる階の上ではスライダーのラインよりも舞台中側に3階のバルコニーが突き出してテバルドが立っています。このバルコニーは常に出ているわけではないようなので、使う時だけスライドして出ているのだと思います。

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Quando(いつか)

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スライダーをセンターに2枚出しているところからスタート。センターの回転パネルは90°回って舞台前まで出ていて、ロメオとジュリエッタの世界を隔てる大きな壁となっています。スライダー裏では両側に1台ずつセリが45cmほどの高さまで上がって2人それぞれが腰かけたりしています。両サイドの回転パネルも、そのセリに当たるところまで出てきています。奥の両側は回転しない左右のスライドのみのパネルを入れています。階段ワゴンも出ていて、曲の後半では下手(客席から見て左側)の台下のワゴンもロメオが乗るために少し出ています。

Il ballo(舞踏会)

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台下のワゴンが6台全て出ているシーンです。舞台奥には窓のワゴンが出ていて、シーン途中、ロメオとジュリエッタが初めて言葉を交わすところで前に出てきます。奥のパネルはシーン冒頭では全て正面を向いていますが色とりどりの花が散る映像の後は上の画像のように両サイドの2枚が90度回転します。

Oggi o mai(今日こそその日)

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16台のセリが3段階にせり上がっています。テバルドの玉座(猫の王様を思わせるデザインが微笑ましいです)のあるエリアは4台を使い一番高く。そして前のエリアはセンターが低く両サイドが中くらいの高さになっています。この後ろがもしかしたら階段のようになっているかもしれませんが確認できなかったので分かる部分のみ書きました。
舞台前には曲前に猫ちゃんが客席から舞台に登ってきてソロダンスを披露するための台がついています。これはおそらくずっとあります。
奥のパネルは3枚とも縦位置で、その隙間に大きな額縁のようなパネルにスリットの入った赤い布が張られたセットが出されています。回転しないパネルなどにも額縁の絵が投影されているので額縁はこのシーンのモチーフのようですね。カプレッティの館の一室なのか娼館のような場所なのかは定かでありませんが。
そしてこのスリットのいたるところからニョキニョキと出てくる女性ダンサーたちの脚、身体。パネルに隠れて正確な形はわかりませんが、奥にデッキが組まれていて、そこに乗ったダンサーたちが身を乗り出したり捕まったりできる手すり兼支えのバーがあるようです。

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Duo della disperazione(神はまだお見捨てにならない)

神はまだ

神はまだ2

このシーンは階段ワゴンが舞台前ではなく奥に移動し、2台が連結して山のようになっています。セリは横のラインで3列使っていて、シーン冒頭では階段の前の1列を神父の机、その前の列にロメオが乗っていて、曲の途中でそのさらに前のセリがそっと上がってきて神父の机になり、それに隠れて後ろの2列は下がっていきます。ロメオはおそらくセリに乗ったまま床下にハケていると思われます。いつの間に消えた!?と思っていたのですが、神父の机が途中で違うものになっていたとは。面白い使い方です。
また、このシーンでは天井から2台のゴンドラが降りてきていて、テバルドとメルクーツィオの遺体を乗せて上がっていきます。この2人の回収位置が気になるところですが、舞台両サイドの3Fくらいの高さまでいったところで暗転になっているので3Fで回収されたのか、もっと上までいってから降りているのかは定かでないです。
このシーンなどは舞台両側のロールカーテンが閉まっていると思うのですがうっかり3Dに入れ忘れたので、そのうち直して画像差し替えます。すみません。

■ざっくりまとめ■

大変シンプルなセットですが、
・映像を効果的に使うこと
・アレーナのような大きな劇場で効果的に見せること
・自在に動き演出家の特色でもあるダンスシーンをスマートに見せること
・イタリア各地の大小様々な劇場に対応して変更できること

といった条件を満たしつつ「壁」という大きな作品モチーフを効果的に使ったセットだと思います。

転換が、スライドで閉まっては後ろを飾って開いてを繰り返していてバリエーションが少なく「またこの転換か」と思ってしまうのは否めないのですが、映像との融合、壁のモチーフというところが上手くハマっているのでセットだけが斗出して素晴らしいというよりも全体のデザインを見せるための1つのパートとして目立ちすぎず、使い難くもなくメッセージ性もダイレクトに表現されている良いセットだと思います。








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