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0560:プロパガンダと行政官

 これまでに戦争と行政の関係から思うことを2回記事にした。今回のウクライナ侵攻に関連して書いたのが↓の2回目、この記事中に1回目のリンクは貼っているので今回は省略。

 で。これまで2回は地道な行政活動に思いを馳せていたのだけれど、別の視点もずっと気になっていた。それは、対外的に──誰も信じないような話を──発信する役割を担う行政官たちの活動だ。

 今回の情報戦では、ロシアは国内向けに正義の特別軍事作戦としてのプロパガンダを発信し、外の情報を遮断したり反戦活動を弾圧したりしている。その上で、国際社会に向けても民間施設の執拗な爆撃や民間人虐殺を「知らぬ存ぜぬネオナチの自作自演」と、誰も信じないような話を繰り返している。

 情報統制下にあるロシアの一般国民と異なり、国際的な発信力を与えられたロシア高官や各国大使館(日本のそれを含む)は、様々な情報を知った上で、ロシアの虚偽情報を発信することを任務として担っている。もちろん、上層部の意思決定を受けてのことだろう。戦争を短期で終わらせることができず、少しでも早く終わらせるために残虐なことをして、それでも押し切れずに次第に戦争犯罪が明らかになる。それを認めてしまったら、ロシアは国際社会の中で敗者になる。それを避けるために、見え透いた嘘であったとしても、プロパガンダを叫ぶしかない行政官。どういう気持ちでいるんだろう。

 思い出した経験がある。新採間もない平成一桁の頃、我が地元では大勢の人から批判・反対されている国政方針が昭和の時代から維持されてきた。時代が変わり、実質的にその方針はもう無理だろうと、誰もが分かっていた。しかし、過去に一度定められた国の方針は変わらない。それを受けた県の方針も変わらない。ある時、課長補佐が課内訓示でこういった。「県の方針がこうである以上、職員のみんなの内心はともかく、県職員ならばプライベートでも『これが正しい』と言い続けなければならない」口を閉じよ、ではなく、積極的に支持を表明せよ。さすがにここまでの発言を聞いたのは27年の公務員経験でもこれっきりだ。ただ、組織人として組織の意思決定に従うという規範は、間違いなくあらゆる組織運営の基礎にある。

 行政官の使命は行政組織を運用すること、行政組織の使命は国家・自治体を護ること、国家・自治体の使命は国民住民を護ること。ならば戦争という国家存亡の瀬戸際で虚偽であろうとプロパガンダを叫ぶことは、彼らロシア行政官たちにとって強い使命感を伴う行動なのだろう。彼らの内心の罪悪感は、おそらく、人による。ロシア国営放送の生放送中に反戦カードを持って突入したアナウンサーもひとつの人間の姿だし、アイヒマン裁判が浮き彫りにしたように非人道的な行為を淡々とこなす「凡庸な悪」もまた人間の姿だ。

--------(以下noteの平常日記要素)

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積222h00m/合格目安3,000時間まであと2,778時間】
 覚悟のノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『一騎当千』第8~10話、キャラクターが増えてきて物語に互いの絡みが生まれ、群像劇的な面白さが見えてきた。それにしても、温泉会の次がプール回て。

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