見出し画像

0213:不健全なインフレ

 実家の片付けをしていると、いろいろなものが出てくる。今日は、開かずの扉の上の方にあった引出物らしきタオルの箱の中に祝儀袋が入っていて、中身は五百円札だった。親も中身を見ずに箱ごと仕舞い込んでいたのかもしれない。

 昭和の少年期に切手ブームがあり私もハマッたが、隣接分野である古銭蒐集には手が出なかった。たまにイベントなどで古い小判のレプリカを額装したものを展示していて、いいなあ、と思いはしたけれど、小中学生に買えるものではなかった。昭和57年、高二の時に五百円が札から硬貨に変わったのはインパクトが大きかった。その二年後には千円札が伊藤博文から夏目漱石に変わった。それまで使っていたお金が過去のものになるのを目の当たりにする経験だった。

 私の生きた昭和後期には、次第に物価が上がっていた。子供心に(値上がりは嫌だなあ)と感じていたけれど、今から考えればそれはいわゆる健全なインフレで、物価が上がるスピードと並走して賃金も上昇し、一億総中流と呼ばれる時代だった。その中で、五百円という金額の価値が札から硬貨に移行した、ということなのだろう。確かに現在の感覚だと、500円は「一番上の硬貨」でちょうど収まりがいい。

 バブル崩壊以降、デフレが続いているという。長期的にはそうなのだろう。しかし短期で見ると、価格は変わらないのにワンパッケージの内容量が少なくなっていて、本質的には値上がりしていることが分かる。なぜ内容量を変えず価格を上げる、という素直なインフレにならないのか。それは賃金の上昇が伴っていないからだ。

 株価はコロナ下にあって史上最高値をつけ、景気はいいと言われている一方、国民の所得中央値は大きく下がり、持てる者と持たざる者との格差が昭和末に比べて非常に大きくなっている。消費税の導入、3%から10%への段階的な引き上げ、法人税や高所得者の税率の引き下げ、そして今がある。そのような状況の中で実質的な物価が上がっているというのは、不健全なインフレであり、気付かぬうちに社会の安定を損なっていることを意味する。

 今後十年スパンで、日本はどのような社会になっていくのだろう。

■本日摂取したオタク成分
『ケンコー全裸系水泳部 ウミショー』第7話、BGV。『黒ギャルになったから親友とヤってみた。』第1~3話、えーと、これ、BLジャンルになる、のかな? 放送版はいろいろカットしてあるようだ。まあ切るか。『イジらないで、長瀞さん』第2話、まあ1話と印象変わらんね。『逆転人生 話題の毛筆フォント 親子3代が執念の開発』ははあ、最後まで観入ったよ。確かにこの字は凄い。「絵と思って書いている」というのが、なるほどなあ。『ETV特集 パンデミック 揺れる民主主義 ジェニファーは議事堂へ向かった』アメリカの陰謀論・反知性主義の有り様についての硬派なルポルタージュ。これはアメリカを題材にしたからこそできた番組なのだろう、日本のあれこれそれを題材にしたら番組自体が陰謀論者の攻撃対象になってしまう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?