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0445:表現の深度

 いわゆるメディアミックスの走りは、一般的に角川書店の「角川商法」だとされる。赤川次郎『セーラー服と機関銃』の出版が1978年、映画が1981年。私の中学から高校にかけての時代だ。私もまた、当時原作を読み赤川次郎にはまり、映画を観て薬師丸ひろ子にハマった。薬師丸ひろ子は今も素敵な女優だ。

 メディアミックスの元祖については、角川ではなく徳間書店だとも、小松左京『日本沈没』だともいわれている。日本沈没は小学生だったので、さすがにメディアミックスなのかどうか記憶にはない。当時は映画を観た。原作を読んだのは十代後半になっていたと思う。

 なんでこんなことを思い出したかといえば、今日『魔王様リトライ!』と『王様ランキング』のふたつのアニメを見て、原作付きアニメの「表現」について思う所があったからだ。前者のファンには申し訳ない、前者にネガティブな思いを抱いた、という話になる。

 アニメ版『魔王様リトライ!』は、原作ラノベは読んでいない。アニメ版『王様ランキング』は、原作コミックを最新刊まで読んでいる。特に後者は今日の午前中に、ここまでの本筋に決着のついた12巻を読んだばかりで、ボッス先王とミランジョの結末を知った上でアニメ版第9話を見たものだから、感動の桁が違うということはある(アニメは2クールかけてここまで辿り着くのだろう、ここで終わっても素晴らしい完成度だと思う)。ただ、それ以上に、「原作付きアニメ」の表現の志に、どうしても違いがあるように感じられるのだ。

 アニメ版『魔王様リトライ!』は、率直にいって、平板だ。絵や動画のリソースが少ないのは予算配分の力関係があろうから目をつぶろう。問題はシナリオだ。台詞回しは原作に忠実なのだろうか、どうも浮いているところがある(実は無職転生(原作未読)ですら部分的に主人公の台詞が作品世界に猥雑なものを持ち込んでいる気配が気になっている)。それは声優への演技指導でも同じように感じる。このような声の表現では作品世界から一歩も二歩も引いてしまうのだ。ストーリーの展開に心を引っ張られる起伏を感じない。

 一方、アニメ版『王様ランキング』は、素晴らしい出来だ。もちろん原作の力がある。それはキャラクター各自の設定と、キャラクター間の関係と、大きなストーリーの流れだ。絵にまつわる描写は、原作は稚拙だ。その稚拙さを遥かに凌駕する物語の魅力があるからこそ、十分な予算をかけてアニメ化に至ったのだろう。原作コミックの「余白」は、アニメーションという別の表現手法でこの物語を描くことになったスタッフにとって、自由なキャンパスだ。漫画とは違うアニメーションとしての表現・演出を、そこに施すことができる。アニメ版の本作は演出原画動画音声のあらゆら点で見事に磨き上げてきた、と感嘆している。

 漫画は空間芸術だ。アニメは時間芸術だ。小説はなんと呼べばいいのだろう、言葉・文章によって人の想像力をコントロールする芸術だ。

 メディアミックスは、同じ「物語」を、違う形式で語り直す試みだ。それによって、「物語」はひとつの形式だけで表現されるより遥かに多くの人に届くことになる。さらに、アニメを見た人が原作を買うなどの相乗効果も働く。だからこそ民間企業がメディアミックスを使うわけだ。

 小説には小説の、漫画には漫画の、アニメにはアニメの、異なる作り手がいる。異なる表現手法がある。制作体制という大人の事情はあるだろうが、それはひとまず、度外視だ。物語の受け手は、より心を掻き立ててくれる表現を求めている。

 ──なーんてことを考えた背景には、昨日から自分がラノベ文体で小説を書き出したから、ということがある。

 単文改行、私には無理。ただ、ライトな文章でできるだけ1段落あたりの文章を短くすること、細密な描写ではなく大きな流れを簡潔にドライブすることを、心がけることはできる。

 ひとまず思いつきで書き出した某小説、1話は終わった。3話くらいまで書きためたら某小説サイトで公開しようかな。後の展開は思いつきで行こう(そういうコンセプトなのでー)。なもんで「やくみん!」の続きのアップは少し先になるですはい。

--------(以下noteの平常日記要素)

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積168h25m/合格目安3,000時間まであと2,832時間】
実績133分、昨日と分単位で同じとは。不動産登記法3回目、ドリルは各論学習後が多くそこは飛ばした。「電子申請」と「特例方式」で電子署名を要する者の設定で間違えた、これはなるほどのミス、これで覚えた(ならいいんだか)

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『魔王様リトライ!』第5~7話、『王様ランキング』第9話、上記のとおり。『最果てのパラディン』第4話、話半分。『鬼滅の刃 遊郭編』第2話、この辺のおちゃらけた感じは実は原作でちょっと引いた部分ではある。作品世界にギャグは元から含まれているわけだけど、私としては許容範囲ギリだな(ゴールデンカムイも独特のアレがあるよね)。作家性なのか編集部の意向なのかは知らんけど。

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