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0903:覚悟の内部告発

公務員小説「やくみん! お役所民族誌」は、澄舞県消費生活センターと反社勢力・深網社との戦いを中心軸として、そこに香守家の家族問題が絡んでいく。この主流と並行して、澄舞県庁OBの行政書士が庁内の闇と戦う様子が副流として作品を引き締める構想だ。

https://note.com/f_san/n/n91676c052e83?magazine_key=mcbf57a958db7

その関係で、公務員の不正や内部告発の報道には敏感だ。例えば、いわゆる「赤木ファイル」赤木俊夫さんの事件に注目していることは、これまでにも幾度か記した。

https://note.com/f_san/n/nd80dbbc3e00f

https://note.com/f_san/n/n4804175d75d3

https://note.com/f_san/n/n77f4d005e9ab

本日、公務員の内部告発として瞠目すべき情報が飛び込んできた。現役の広島県職員が実名で広島県庁の不正を「公益通報」するサイトを立ち上げたという。内容は今後充実していくようだが、まずは「広島県が多数の児童が猛毒アスベストに被曝した事故を隠蔽!」と題する事案が掲載されている(下記トップページから「プレスリリース」に進んだ先)。

庁内関係者の名前を実名で挙げて批判し、行政文書である起案用紙の写しを貼り付け(民間関係者は伏せている)、住民被害に直結する情報を県庁が組織的に隠蔽したと主張するものだ。これは公務員の守秘義務に抵触する恐れが多分にあり、広島県庁も事前にその旨を警告していたという。本人は自身の行為を守秘義務違反には当たらないと考えているようだが、いろいろな意味で覚悟をした上での告発なのだろう。

「はぐれ県職員の公益通報 はじめに」https://sites.google.com/view/haguremono/%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AB?authuser=0

サイト製作者の主張の当否については論じない。あくまで彼の目から見た事態の記述であること、関係者への皮肉溢れる情緒的批判も混じることから、今は一歩引いて見る方が良いと考えている。今後、広島県庁の動きを含め事態の推移を見守りたい。

ただ、ひとつだけ。このような内部告発が行われたこと自体、広島県庁組織のリスクマネジメントの失敗といえる。

「やくみん」で澄舞県庁を告発する元職員・行政書士の名を大森雄大という。下記イラストの中段右の人物だ。第一話ドラフトには登場しないが、重要人物だけに第一話のうちに少しだけ登場させたいと考えている。

作品では大森の一方的な視点だけではなく組織(澄舞県庁)側の視点も当然描くことになる。主観に閉じ込められた現実とは異なり、俯瞰的視点から事態を多面的に構成できるのが、小説の強みだ。大森の現役時代の振る舞いには組織統制の点から問題があり、不正を隠蔽しようとする上司たちは大森を権力で抑え込んだ。それが後年澄舞県庁を危機に追い込むことになる。隠そうとしたためにかえって大事になった事態をさして、野田彌は「当時の管理職の危機管理の失敗だ。不正の負い目があるからまともに議論したくなかったのだろうが、納得いかない思いを抱えた彼が告発行動をする可能性は当然想定された。上司部下の権力関係で一方的に押さえつけるのでなく、判断理由の説明を尽くし理解を求めていれば、見解の一致には至らなくとも感情的な納得が生まれ、このような破滅的行動に走らせることはなかった筈だ」という評価をする。(このシーンは第六話で描くので、形になるのは随分先だ)

今回の告発サイトを見ると、相手方(上司や関係部局)の応答の一部を克明に記述していることが目立つ。住民の健康被害可能性という重大事案を前にして、根拠を元に議論しようとしているのにコミュニケーションをシャットアウトされる様子だ。議論が回避され組織の意思決定が正当に行われないことへの苛立ち、これこそがこのサイトのモチベーションであろう。何年もかけて庁内で事態改善のために行動したにもかかわらず、上司や関係部署からまともに扱って貰えず、不満の圧力が高まりついに爆発したことがサイトの端々から読み取れる。もちろん、やっている事には守秘義務違反の違法性の恐れが強い。「やくみん」の大森は守秘義務違反回避のためにもっと慎重・狡猾に立ち回るが、心の動力はまったく同じだ。

彼の主張の当否は別問題(サイトの記述以外の要素は私たちには分からない)としても、彼をここまで追い詰めたという「結果」は、広島県庁のマネジメントの失敗だ。ここに至るまでに庁内で彼にどのようなアプローチを行ったのか。彼の不満を少しでも低減させることはできなかったのか。その検証が必要なのだと思う。

この告発、いや「公益通報」が今後どのような展開に至るのか。深い関心を持って注視したい。

--------以下noteの平常日記要素

■本日のやくみん進捗
カクヨムで第一話第四章(34)を公開。ドラフトではなんとなく書き進めた箇所を親子関係に視線を集める場面として意識し肉付け。大きなものとして、ひとつは影の薄かった歩を絡めた。末っ子は大きくなってもかわええよ。もうひとつ、ドラフトで家族みんなから(=つまり読者からも)父しゃんがダメ人間視されるような表現だったけど、それを改めた。以前みなもについても同じような修正をした。ダメなところはあっていい、でも、共感を得るためにはダメな自分を理解する自分との葛藤が必要なんだ。葛藤があれば台詞が変わる。ちょっとしたことだけど、大事なこと。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積327h35m/合格目安3,000時間まであと2,673時間】
ノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分
『スパイ教室』第10話、終盤緊迫。『賭ケグルイxx』第11~最終話、いーねえ、1対5(だっけ)の戦いで潰える。『賭ケグルイ双』第1~4話、第一期の1年前の物語か。第一話冒頭はなんかこれまでとテイストが違って少し引いたけど、後は大丈夫。でも『競争の番人』第9話、んー、展開が粗いなあ。そこに目をつむれば大筋は面白い。

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