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0447:赤木俊夫さん事件に見る国の法廷戦略

 このnote記事の特徴のひとつは、27年間の公務員経験を背景とした、公務員関係の話題への言及だ。昨日本日はいくつも公務員ネタが報道されていた。

 例えば兵庫県職員が庁舎の排水弁を閉め忘れて多額の水道代を支出することになった件では、損害額の半分の300万円を個人で負担した。会社等の法人が従業員たる個人に損害賠償請求することは民法上あり得るが、↓の記事によれば民間企業ではあまり行われず、役所の場合は住民監査請求など住民からの強い圧によって職員個人の賠償を求めるケースが増えているとのことだ。記事中でも触れられているが、それは職員を萎縮させ隠蔽を誘導することになってしまいそうだと思った。

 また、国交省が基幹統計の書き換えを行っていた件も、大きい。問題点は記事に指摘されているが、私の関心は、こうした重要な統計調査であっても、明らかにおかしな数字の二重計上であるにも関わらず、慣例として代々担当者に伝えられ、全都道府県に指示されて継続的に運用されてきたことにある。なぜ、会計検査院が指摘するまで、改善できなかったのか。今日は本当はこれをnote記事として取り上げるつもりだった。

 しかし、こうしたものよりも遥かに驚くニュースが飛び込んできた。森友問題の財務局文書改竄を巡って自死した赤木俊夫さんの奥様による、国に対する損害賠償請求裁判が、突然国が認諾をし1億700万円を払うことで終結したというのだ。

 もともと遺族側は裁判を通じて事件の経緯を明らかにしたい意向で、高額な賠償請求額も国に認諾させないための設定だったという。しかし国は認諾をし、裁判で事件の真相が明らかになることは、おそらく事実上なくなってしまった。

 小説「やくみん! お役所民族誌」では、サブストーリーとして役所の不正隠蔽との戦いが関わってくる。その関係もあって、赤木さんの事件には注目をしてnoteでも幾度か取り上げてきた

 判決を待たずに1億円の賠償を認める、などということは、国などの公的機関では普通はあり得ない。何故なら賠償金は税財源から支出されるものであり、正当な額の算定をする上で司法の判断を仰ぐのが基本だからだ(減額調整を含む和解協議ならあり得るだろう)。司法の判断を待たず「言い値」を払うのは、「裁判で経緯が明らかになる不利益」を避ける法廷戦略(戦術級ではない大技)だったと観るのが自然な理解だ。

 法廷闘争は攻撃と防御だ。裁判ルールの枠の中で、原告も被告も自分の利益・目的を最大限実現する動きをする。今回の国の判断もまた、そのようなものなのだろう。形の上では、国が赤木さんの死の責任を全面的に認め、岸田首相をはじめ関係者誰もがその点については丁寧な謝罪をしている。その面では非難の余地がない。

 一方で「真相」の究明については、国民の中でもそれを求める人と関心のない人、逆に批判的な人がいる。今後、どのような立場の人からどのような意見が出てくるのかを注視したい。特に「真相究明」と「国の1億支出」への評価のバランスに注目だ。

A「真相究明に肯定的」かつ「国の1億支出に肯定的」
B「真相究明に肯定的」かつ「国の1億支出に批判的」
C「真相究明に批判的」かつ「国の1億支出に肯定的」
D「真相究明に批判的」かつ「国の1億支出に批判的」

 私はBかな。「真相究明を妨害してズルイ」という意味ではない。制度上認められた行為なので、当事者である原告は不満を抱いて当然でも、第三者の私としては仕方ないと思ってる。問題は、1億という額の適正を確認しなかったことだ。会計検査院のチェック対象になるんじゃないかな、これ。

--------(以下noteの平常日記要素)

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積170h47m/合格目安3,000時間まであと2,830時間】
今日は週ナカ家業デー&午後から夜にかけてボランティア団体の会合のためノー勉強デー。

■本日摂取したオタク成分(オタキングログ)
『魔王様リトライ!』第10話、まあ普通に観てる。

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