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誰の為のライブか。

「俺は自分たちのためにライブやってんだよ。」

びっくりした。目が点になった。そういう視点もあるのかと目から鱗が出た。悪い意味で。

前回(https://note.mu/f_ran_nanyade/n/n086e1a207127)のマイルドヤンキーの一人とバンドを組むとなったときに居酒屋で飛び出した発言だ。彼から「10月にライブをやりたい」と打診を受けたが、正直人前で演奏できるレベルではないからやるべきではない。それは来てくれた人に失礼だとと説明したときに出た発言だ。

彼には彼の言い分あり、曰く

・チケットは自分たちですべて買い取って配ってる。

⇒つまり、客はただで見に来てるんだから、文句を言われる筋合いはない。

といった内容だった。なるほど。10年バンドしてて、一度も思ったことがない発想だ。お前は10年もバンドやっててそれで集客してるからそう思うんだよ。もっと柔軟な発想で楽しくやろうぜ。と諭された。

なんでだよ。

・本当にただなのか?

仮に、このライブがライブハウスでやるものだとしよう。

このnoteを見てる人の大半は、ライブハウスに行ったことがある人だろうが、一応説明しておくと、ライブハウスに入る為にはこのチケット代のほかにドリンク代がかかる。つまり、チケ+1d分の料金は絶対に支払わなくてはいけないのだ。この1dはライブハウスの収益となり、そこでバンドが演奏し続ける場を存続させるためには絶対に必要な料金なのだ。この時点で「はい、論破」状態なのだが、もう一点ある。

これは僕が常に考えてるが、ライブをするということは、見に来てくれた人の時間を使ってるのだ。チケットを渡され、ライブ当日にわざわざ予定をいれ、移動手段分の金をわざわざ使って貰って会場に足を運び、ライブを見に来てくれる人がいて、初めてライブが成立するのだ。

その人が、もしライブに行かずに別のことしてたら、本が一冊読み終わったかもしれないし、運命の人に出会えたかもしれない。パチンコで笑いが止まらなくなってたかもしれない。可能性の話でしかないが、その人たちの時間を使ってまでやってるのに、「俺たちの為のライブ」とはあまりに傲慢ではないか?そんなもんスタジオで完結させてくれ。ギリギリネット配信ですませてくれ。ほら、「ポルカなんちゃら」ってエイの名前使ったバンドもやってるし。これだったら、誰も傷つけない。しかも、さらに彼の話をねほりんはほりんすると、過去にやったライブは、

一回目は夜中まで水鉄砲で遊んだせいで声が出ず、

二回目は前日遅くまで飲んでて酒やけしたままライブやったそうだ。

……もう、ボーカル辞めちまえ。そのとき言われた「良かった」なんてのはお世辞以下だ。

10年バンドやってきて正直に告白すると、自分だって完璧にやれてきたわけではない。難しいバンドのコピーとかは誤魔化して弾いたこともあるし、バンドメンバーにも散々迷惑をかけてきた。しかし、ライブハウスに立った時は、見に来てくれた人が満足してくれるように精一杯やった。

あえて、自分から体調不良に追い込むようなことはしなかったし、自分のためにライブをするとか考えたこともなかった。地動説と天動説くらいの違いにびっくりした。ガリレオもインド人もびっくりだ。

・ライブハウスに見る客を置いてけぼりするMC

まあ、それは置いといて、僕はライブも出演時間すべてがライブだと思ってる。登場から退場まで徹頭徹尾すべてがライブだ。金を払って見に来ているお客さんを相手にしてるので当然のことだ。そして、ひたすら最初から最後まで演奏するバンドは置いておいて、どのバンドもMCをする。

これがひどいバンドも数多く見てきた。何も考えてきてないのだ。高校生の頃から一番嫌いだったMCが

「んー、何も話すことないなぁ…そうだ!今から、ギターが一発芸しまーす」

「ちょwwwなにも考えてねぇよ」

の流れ。たいていは何も用意しておらず、変な物まねとかする。ライブハウスにK2よりも寒い空気が流れる。

「ドラゴンフォースのハーマン・リの物まねします!!!」

とか言ったら、どんなに下手でも一瞬でファンになるのにな。なんで彼らはそういう部分は雑でもいいと考えるのか。少なくとも、自分たちを見に来てくれた人たちはそれを見てくれるかもしれないが、それ以外の人は赤の他人だ。たいていは聞いておらず、お目当てのバンド以外は、スマホいじるか後ろでだべるかだ。その人たちが耳を傾けさせる為にやれることは一つでもやるべきだ。MC一つにしても気の利いたことを言えば、振り向いてくれるかもしれない。そのチャンスを自らつぶすのはもったいないと思っている。

・細美武士病

個人的にそう呼んでいるMCだ。別に細美氏が嫌いなわけではない。二度、フェスで細美武士を見たが、あれは別格だった。何を言っても様になる。

「俺らについて来い」とか

「つまらねえ世の中だけど、そんなこと言わせねぇためにやってんだ」

みたいな、普通に言っても鳥肌が立つようなことを平気で言う。そして、それが受け入れられる。そんなに興味がない僕ですら、引き込まれるような圧倒的なMCだった。

ただ、それは細見武士だから出来ることであって、そのカリスマ性がない奴がやっても駄目だ。一度、イベントのメインのバンドの帯同でツアーに来てたバンドがまばらな客と、初めて聴く曲にノリきれずにただ突っ立て見てるだけのライブで

「この世の中、キモいことばかりでどうしようもないけど、俺らについてきてくれたら間違いないから!」(原文ママ)

4年くらい前に聞いたMCなのにはっきりと覚えてる。曲は一ミリも覚えてないのに。客の大半がメインのバンド目当てな上に、彼らのホームでない場所でよく言えたものだと感心した。ちなみに、久々に記憶を辿ってバンドのHPを見つけたらボーカル以外脱退してた。そりゃそうか。

あれほど「自己陶酔」の世界はないのではないだろうか。前述した「俺は自分たちの為にライブやってるんだ」の完成系がこれだと思う。前田敦子のインタビューでファンに対して「応援してください」だったのが、「皆さんついてきてください」に変ったように。それ相当の実力とカリスマ性があればそれは可能だろうし、「信者」はついていく。それに見合わない「自分をカリスマだと思い込んでる一般人」には冷たい目線が突く。そういうもんだと思う。少なくとも、自分のバンドでMCがそんなこと言ったら、後ろから殴ると思う。

・要はカリスマ性

細美武士病で分かった思うが、カリスマ性さえあれば、ステージ上で何を言ってもかっこいい。

元ナンバーガールの向井秀徳のMCに

「何故そこまでして腹を切らなきゃいけんのか。なんでそこまでして自分のプライドを見せつけなきゃいけないのか。俺にはよう分からんが、凄い…それは、素晴らしい事か(ここら辺で噛む)しれませんね。SAMURAI。」

という導入の独り言から急に語りかける口調に変化する伝説的なMCがある。

ライブ音源としてこのMCから入っているのだが、もうすごい。ナンバーガールここに極まってた時期のMCからの曲の入りで、空気が焦燥的すぎて、だれもこのMCに突込みがいかないのだ。これ以外にも向井秀徳は独特なMCをするが、すべて受け入れられる。とにかく一回聴いてみて欲しい。それが当たり前のような空気がある。

今大人気のSuchmosの初回得点に付いてきたライブDVDのMCも、家でだらだら見る分には酷いものだった。

「俺たちは今船旅に出たばかりの船だから…階段を一歩ずつ上がるよ」(要約)

のようなMCをしてて、船旅か階段かどちらかに統一しろよと思ったが、多分ライブで見てたらボーカルのYONCEのカリスマ性に「かっこいい!」で片付いていたと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=BkTuy3biGio

ミッシェルもすごい。「俺たちが日本のミッシェル・ガン・エレファントだ」だけでこんなに盛り上がるバンドがあるだろうか。チバユウスケのカリスマ性は本当にすごい。

https://www.youtube.com/watch?v=YFYZ-OZKyEg

解散したが、ハヌマーン。8分6秒からMCが始まるが、語るタイプのMCでこれまでかっこいいMCを知らない。オチまで用意したうえで、見ている人たちに「信じてます」と伝える。最初の導入から最後に繋がるとはとても思えないMCを繋げた山田は本当にすごいと思う。

技術がないなら盗めばいいし、勉強もすべきだ。お笑いのDVDや芸人の番組は見てていると、話の間の取り方や、どこで音量を上げればいいか、どう伝えるか、表現するかということの宝庫だと思う。

こんだけ、言うならお前はどんなMCをしてるんだと聞かれそうだが、

僕は「ベース、ドラム、ギター三人合わせてPerfumeです」

とよくライブMCで言う。人のMCを笑うな。

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