「ジェンダー・アイデンティティ」の生物学的エビデンスは存在しないと科学者・研究者グループが発表
クリスティーナ・バトンズ
2023年1月6日 Daily Wire.com
「ジェンダー・アイデンティティ〔日本では不正確に「性自認」と訳されている〕」という言葉は、トランスジェンダーの人々が自分の身体との「ズレ」を感じることを表現する方法として爆発的に普及しているが、科学者グループは、生物学的にその存在を証明するエビデンスはないと述べている。
100人以上の臨床医や研究者からなる国際研究グループによると、現在のところ「ジェンダー・アイデンティティ」の生物学的エビデンスはいっさいなく、トランス自認者とそうでない人とを区別できる実験室的な基準も存在しない。にもかかわらず、「ジェンダー・アイデンティティ」に対する信念は、何千人もの子どもや青少年を医学的に性別移行させるための根拠として使われている。
「『ジェンダー・アイデンティティ』と『性別違和』を支える中核的な生物学的基盤が存在するという仮説は、依然として証明されていない理論だ。生物学が性別不合に一定関係している可能性はあるものの、現在のところ、性的指向などの交絡因子〔統計モデルの中の従属変数と独立変数の両方に影響する外部因子のこと。「交絡変数」とも言う〕を調整した後には、トランス自認者とそうでない人とを区別する脳、血液、その他の客観的基準は存在しない」(強調原文)。SEGM(エビデンスにもとづくジェンダー医学協会)は、子どもの医学的性別移行に用いられている誤った証明されていない仮説を退けた論文の中でそう述べている。
この論文は、SEGM所属の研究者J・コーンが最近発表したもので、著名なジェンダー専門医による影響力ある「ジェンダー肯定」論文の前提たる5つの神話を取り上げて、それを批判的に検討し、退けている。コーンは、こうした神話や不正確な情報が永続すると、それが「事実」であると誤解され、臨床医と患者の双方を誤った方向に導くことになると警告している。
論文によると、神話の1つは、性別違和の元となる「ジェンダー・アイデンティティ」は生物学的な特徴であるというものだ。しかし、トランスジェンダーであると自認しながら社会的・医学的に移行しなかった子どもたちのおよそ60~90%が、成人期にはトランスジェンダーであると自認しなくなり、多くは同性愛者の大人に成長するというエビデンスが存在する。
「生物学的に『深く根付いた』ジェンダー・アイデンティティというのは、さまざまな年齢層で、性別違和が自然に、あるいは心理療法の助けを借りて解消されたという観察結果と真っ向から対立するように見える」とコーンは主張する。
「ジェンダー・アイデンティティ」の生物学的根拠を探ろうとする「研究」には誤りが多く、エビデンスに裏打ちされない大げさな主張がなされている、とコーンは主張する。このような研究は通常2つのパターンから構成されている。一つは、性別違和とは無関係の発達特性である性分化疾患(DSD)が、何らかの形で性別の二元性を混乱させるという研究。もう一つは、メディアでは賞賛されているが実証的な精査には耐えられないトランスジェンダー個人の脳についての研究である。
「トランス自認者の脳における客観的な差異を見分けると称する脳研究には、大きな欠陥がある。性的指向(あるいは外因性ホルモンへの曝露)などの交絡因子が調整されると、その差異は消えてしまう」とSEGMは述べている。
「他の研究では、サンプル数が極めて少なく、決定的な結果が得られなかったり、差異を示すものが検出されなかったりする」。
「トランスジェンダーの脳」を探しているうちに、研究者たちは、同性に惹かれる脳についてすでに発見されていたことをすっかり忘れてしまったようだ。1990年代初頭、神経科学者のサイモン・ルベイは、同性愛者と異性愛者の脳には構造的な違いがあり、同性愛者の脳は異性における異性愛者に構造的に似ている、という画期的な発見をした。
近年、トランスジェンダー個人の脳を研究している研究者の中には、トランスジェンダーの脳の構造は、生得的な性別ではなく、自分が選んだ「ジェンダー・アイデンティティ」に近いと結論づける人もいる。コーンのSEGM論文によれば、これらの研究は、セクシュアリティなどの重要な交絡変数を考慮に入れていなかったという。
英国を拠点とする神経免疫学の博士課程に在籍するサミュエル・スタッグは、トランス自認者の多くは同性愛者であるため、この「トランスジェンダーの脳」に関する新しい研究は、同性に惹かれる脳に関する知見を再発見し、その結果を自分たちの結論に合わせて解釈し直しただけだと説明している。
「同性愛者のサブグループは、男女の標準から少しずれた脳の傾向を示しますが、しかし、これは彼らが同性愛者であることが主な原因です」と、スタッグは『デイリーワイヤー』紙に語る。「〔トランスを自認する〕異性愛者の脳をスキャンしてみると、彼らはその生得的性別の方の典型により一致していることがわかります」。「これは、性的指向が、性別に非典型的な脳と相関しているからです(これは、動物のデータを考えれば納得できるものです)」とスタッグは言う。
性別違和は、近年まで精神疾患とみなされていた。活動家たちは、「スティグマを減らす」ために、精神疾患として分類することをやめ、より「インクルーシブな」定義を推し進めた。彼らはまた、医学的な移行治療の「入口管理」〔性別移行の対象者を医学的に吟味し選別すること〕をできるだけなくすよう推し進め、未成年者が自ら選んだ「ジェンダー・アイデンティティ」を肯定しないセラピーを禁止するようロビー活動をし、20の州でそれを実現した。
「ジェンダー・アイデンティティ」という言葉は、失敗に終わったライマー家の双子の「性転換」実験〔『ブレンダと呼ばれた少年』で有名〕で有名な心理学者ジョン・マネーによって造語された。マネーは、人間性の「白紙状態」モデルの提唱者で、生物学(生まれ)の重要性を軽視し、社会的影響(育ち)を優先させた。今では彼の研究はほとんど信用されていない。しかし、「ジェンダー・アイデンティティ」という用語は、大学の人文学部で人気を博し、その後、主流文化に浸透していった。
今日、この概念は学校の授業で、誰もが「ジェンダー・アイデンティティ」を持っておいると子供たちに教えるために用いられるが、それは嗜好や行動の性差に関するステレオタイプに基づいて決定されている。欧米の子どもたちは今や、「ジェンダー・アイデンティティ」が身体に「間違って割り当てられる」ことがあり、この「不一致」を「修正」するために、思春期ブロッカー、異性化ホルモン、ジェンダー関連手術によって身体を変えることができると教えられている。
小児内分泌学者のクエンティン・ヴァン・メーター博士は、「ジェンダー・フルイディティ(流動性)」や「ジェンダー・アイデンティティ」という概念に科学的根拠があるエビデンスは「0.00」であると述べている。
マンハッタン研究所フェローのレオール・サピア(Leor Sapir)は、「ジェンダー・アイデンティティ」が「生得的で不変の特質」であることを証明しようとする動機は、政治的・法的な理由によるものだと述べている。
同性婚が全国で合法化された2015年以降、本来なら店じまいしなければならなかった人権団体や同性愛者の権利団体は、「トランスの権利」を擁護することに軸足を移したと、サピアは指摘する。サピアは、「トランス権利運動」の急速な広がりと、生物学的な性別を「ジェンダー・アイデンティティ」、あるいは「神経学的な性別」や「脳の性別」と呼ばれるもので再定義しようとする取り組みについて博士論文を書いた。
「人々が好きなものを自認する権利を与えるために、なぜ『脳の性別』についての議論が必要なのかは明らかではない」とサピアは続ける。「しかし、アメリカの公民権の伝統では、トランスジェンダーであることは黒人であることと同じだと裁判官を説得することができれば、この司法の判例と公民権法の全体を利用することができ、それがただちに適用されて、望む通りのあらゆる政策が得られるのだ」。
原文:
訳文担当:TB