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メインユーザーではない自分中心のZOZOSUIT体験

私は普段の業務では利用者としての主観を述べることはなく、ユーザビリティの知見や調査で得た事実、またはその事実から想定される仮説をもとに利用ユーザの目線で発言しています。メインユーザの思考やニーズと自分が異なることはよくあり、言葉にするのにストレスを感じることもあります。HCDやUXデザインに関わる身としてはそれが仕事なので仕方ありませんが、今回は仕事を忘れ1ユーザとして主観も交えて自由に書いてみることにします。(ここの記載が正しいとは限りませんので、ご留意を。)

気になっていたZOZOSUIT

私の体型は、成人男性としては標準から大きく外れかなり小柄です。ジャストサイズの服を見つけるのは困難で、これまでに何度も失敗しています。
ZOZOSUITに興味はあったものの、サイズを正確に測ったところで、どうせ自分に合う既製品は見つからないだろうし、オーダーメイドのラインナップも多くないし、と二の足を踏んでいたのですが、ジーンズを買うだけでも価値があるかもと思い、遅ればせながらZOZOSUITを試すことにしました。

1着しか購入できないのにいかにも複数選べそうなUIだったり、身長を入力したのに注文内容確認ではスーツサイズでの表示しかない、家族で複数買うときはどうするの?、ここはこうすればいいのに、など思いながら(職業病ですね)とりあえす注文しました。注文から1ヵ月以上過ぎたころにようやく発送手続きのメールが届いたものの、ZOZOSUITが届いたのは4日後。不手際があったのではないかと連絡する直前でした。もう少しスマートにやってほしいものですね。

計測は面倒。でも、そのことを忘れるくらい計測結果は興味深い

ひととおり説明を読みスーツを着てみましたが、かなりシュールです。こんな姿他人には見せられないなと思いながらも、これから始まる測定になぜかワクワクしてしまいます。アプリを立ち上げいざ計測!と思いきや延々と続く説明。さらにはスーツ着用の説明まで始まり、”えー、もう着ちゃってるけど?”とだんだん面倒くさくなってきて、途中、逆光のためかうまく自分の姿が認識されずに先に進めないときにはストレスはMAXでした。同じ状況ならここで諦める人もいるでしょうが、なんとかがんばりました。
ジャストサイズの商品を手に入れるというモチベーションだけで前に進んだ感じです。他のサービスで同じ状況だったらすぐに諦めていたと思います。スーツが届いても使っていない人が46%いるという記事を見たことがありますが、この姿を見られるのは家族とは言え恥ずかしいと思う人もいるでしょうし、計測が面倒なことは実施しなくてもイメージできますので、この結果も頷けます。その状況で実際に面倒だったら、すぐに諦める人もいそうです。きっと普段の服探しにそれほど困っていなければ私も同じだったかもしれませんが、標準から外れている私にとっては他の人とはモチベーションが異なったんだと思います。

計測結果が表示されると、なんかすごく達成感があります。この数値がどれほど正しいのかも正直わかりませんが、なぜか測定結果に引き込まれます。特に同じ身長と体重の人たちとの平均との比較はおもしろいですね。これまでは標準より小さい、くらいしか考えることはなかったんですが、平均と比較することで自分の身体的特徴がよりわかって意外な発見もありました。標準から外れているグループの中で比較したところで商品探しの状況は変わらないんですが、このときは服を買うという目的は忘れていました。
本来の目的を外れ、想像もしていなかったZOZOSUITそのものに大きなUXが生まれています。目的達成の前で受ける結果としてはこれまでにない不思議な感覚ですね。

計測結果はあるが、サイズを判断するのは自分

ひととおりデータを見たところで、今回はジーンズを購入してみました。ネットで調べてみるとピッタリだったという人もいれば思い通りにいかなかった人もいるようです。このジーンズは「パターンオーダー」という方式で、あらかじめ大量のサイズパターンが用意されているようです。もしかして推奨されるサイズは用意されているところに丸め込まれていたりするのでしょうか。そうであれば、人によって差がでることは理解できます。

実際には、計測結果の正確さもあるでしょうし、そもそもぴったりやゆったりなどのサイズ感については好みもあるでしょうから、どのみち評価は分かれると思います。身体を計測したのであって、好みの服のサイズを調べたわけではありませんから、さすがに自分の好みにあわせるにはもっと情報が必要なことは容易に想像はできます。このようなケースにそなえ、商品購入時も推奨サイズを任意に変更できるようになっています。カートに入れる前にそのことがわかるUIになっていないのは残念なところですが、もっと残念なのは指定できる箇所が一部であり、完全オーダーメイドというわけではないということです。商品に問題なければ方式にはこだわらないのでそこまで問題だとは思いませんが、計測結果からくる期待値とのギャップはありますし、そもそもあんなに何箇所も計測していたデータは使われているのだろうかと疑問に思えてきます。

好みのサイズになるかは運次第

今回は、他の方の記事を参考にウエストとヒップを調整して購入してみましたが、届いたジーンズは読みが外れウエストがきつかったのでそこだけ調整して交換の手続きをしました。試着できるわけでもないですし、他の方の記事を見てもわかるように、結果は運次第だと思います。
この記事を書いている今現在はまだ届いていませんが、一度着てからの調整なので、今度は問題ないと思います。普段から試着後に選べば何かしら見つかる”標準の人”であればここまでしてサービスを利用したいとは思わない人もいるでしょうが、標準から外れている私にとっては普段入手できないサイズなのでこれでも満足です。面倒な思いをして実施した計測に意味があったのか微妙な感じもしますが、サービス全体で考えると”一応”計測結果をベースに任意の寸法を指定できると思えばこれもありかもしれません。

ZOZOSUITに触発された業界内外の新たなアイデアに期待したい

今回、計測からジーンズの購入までやってみて、服を買うことよりもその準備段階でワクワクしたり計測結果を眺めたりと、普段の購入時とは全く異なる経験ができました。ここまでUXをデザインしていたのかは不明ですが、ZOZOSUIT自体が大きなUXを生んでいます。個人的に、ですが。

しかし、この計測データはアパレル業界ではのどから手が出るほど欲しいデータなんでしょうね。形を変えれば下着やシューズなんかにも適用できますし、別のセンサーを仕込んだり他のデバイスを組み合わせれば他業界でももっと広範囲に活用できそうで、期待が膨らみます。すでに個人ではダイエットに活用している人もいるようですし、医療やヘルスケアなど、業界問わず新しいビジネスのトリガーになるかもしれませんね。

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