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ノーマル振り飛車における相穴熊

知識整理及びまとめ。ココセは可能な限り排除。居飛車視点のため、実戦例は居飛車が指せる変化を主に抜粋し全ては掲載していない。振り直しがあるため、実戦例及び実戦譜は大まかに分類。

実戦例に関しては実戦例の説明(上)→実戦例の棋譜(下)の順番で掲載。分枝は符号多め。

先手居飛車穴熊vs後手四間飛車穴熊

■ 5筋不突き穴熊

5筋不突き穴熊は居飛車側の最も理想的な形の1つ。振り飛車側も美濃+△3二銀型などで理想形を阻止する。

■ 右四間飛車(△6二飛)振り直しに▲6六歩型

テーマ図a1から△5二金及び△5一金以下の変化の解説。

図a1

・△5二金型

図a1から△5二金▲7八金寄と進んでテーマ図a2 △5二金型。

図a2 △5二金型

図a2以下 1.△6五歩 2.△4五歩 3.△1四歩 4.△1二香 5.△6一飛 を見る。

1.△6五歩は▲6八飛
 a.△6六歩▲同銀
  イ.△4五歩▲6五歩△6一飛▲3六歩
   ⅰ.△6三銀▲3七桂△4一飛▲5七銀△7七角成▲同金
   ⅱ.△1五角▲5五歩△6三銀▲5八飛
  ロ.△6四歩▲3六歩△6五銀▲同銀△同歩▲6四歩△同飛▲8六角
   ⅰ.△5四飛▲5五銀△8四飛▲6五飛
   ⅱ.△6一飛▲6四銀△4二角▲6五飛
 b.△4五歩▲6五歩△同銀(代えて△7七角成は▲同桂)▲3三角成△同桂▲4一角
  イ.△5一金▲2三角成△4二金▲3四馬△4六歩▲同銀△6六歩▲4四馬△5九角▲5八飛△9五角成▲5五銀△9四歩▲6四歩
  ロ.△6六歩▲同銀△7六銀▲6四歩
などが一例だが、6筋を抑え込めば自然と居飛車が良くなる。
[広瀬章人、振り飛車穴熊の最終進化、日本将棋連盟、2015、pp.92-94]参考。

なお▲5八金を決めている場合、▲6八飛がないために図a3のように▲6八金寄のタイミングで△6五歩と突いてくる手がある。

図a3

図a3から△6五歩には▲5五歩△同銀▲6五歩が定番の対応で
1.△4五歩▲7九金
 a.△7一金▲7八金寄
  イ.△6五飛▲2四歩△同歩(代えて△同角には▲同飛~▲4三角の筋)▲2二歩△6六歩▲6八金上△2二角▲2四飛△3二金▲5六歩△4四銀▲6六銀△6一飛▲2八飛△2三歩▲3六歩~▲3七桂~▲2六飛
  ロ.△6六歩▲5六歩△6五飛▲6八飛△6七歩成▲同飛△同飛成▲同金△6六歩▲6八金△5六銀▲同銀△5九飛▲4三飛
 b.△6五飛▲2四歩△同歩▲2二歩△6七歩▲7八金△6六銀▲同銀△同角▲同角△同飛▲7七銀打△6二飛▲2一歩成
2.△同飛▲2四歩△同歩▲2二歩
などが一例で居飛車は潰れない。

以下には図a2より前に△6五歩と仕掛けた実戦例も示す。

35手目は代えて▲5五歩△6三銀▲3六歩△7一金▲3八飛~▲3五歩が勝る。千日手のため、居飛車側が後手番では本譜の手順も有効。

2.図a2に戻って、△4五歩は▲6八銀で、後述する△6一飛▲3六歩△4五歩▲6八銀と比較して損をする。
[広瀬章人、振り飛車穴熊の最終進化、日本将棋連盟、2015、pp.95-96]参考。

3.△1四歩には▲3六歩も有力であるが、▲5五歩が決定版の仕掛けとなっている。この変化は先手の居飛車側が7戦全勝を収めている。
[広瀬章人、振り飛車穴熊の最終進化、日本将棋連盟、2015、pp.97-99]参考。

4.△1二香は▲3六歩△4五歩▲2四歩でどうか。以下
 a.△同角には▲6八銀
  イ.△3三桂▲9六歩△9四歩▲3五歩△同歩▲2六飛
→(cf.20060803_畠山_杉本)
  ロ.△6五歩▲同歩△同銀▲1一角成△6六歩▲6七歩
(20160315_gpsfish_normal_1c nanoTwig_FX9590_4.7GHz@floodgateの改良案)
 b.△同歩には▲5五歩で
  イ.△4三銀▲5六銀△4四銀▲5四歩~▲3七桂
  ロ.△6三銀▲5六銀△5四歩▲3五歩~▲6八角
  ハ.△同銀▲3七桂△4四銀▲4六歩~一歩交換~▲3五歩
  二.△同角▲2四飛△2二歩▲5六銀△3三角▲3四飛
などが一例。

5.△6一飛▲3六歩と進んで図a4。

図a4

図a4以下 1.△1二香 2.△6五歩 3.△4五歩を見る。

1.△1二香は▲3五歩△同歩▲3八飛△4五歩▲3五飛△4三銀▲6八銀△9四歩▲9六歩△4六歩▲同歩△3四歩▲3八飛で▲2四歩~▲3五歩~▲6五歩~▲2八飛とすれば、角交換~▲2四飛や▲2二歩の狙いが残る。

実戦例は以下。

△1二香型、▲6六歩▲6八銀型で▲2四歩~▲3五歩~▲6五歩の仕掛け。

△1二香型で後手から△6五歩の仕掛け。

2.△6五歩は▲5五歩
 a.△6六歩▲同銀
  イ.△6五銀▲同銀△同飛▲6八飛△同飛成▲同金寄
  ロ.△4五銀は▲5七銀△3六銀でやはり▲6八飛のぶつけ
  ハ.△4三銀は▲9六歩△9四歩▲1六歩~▲6五歩で▲6八角~▲2四歩や▲3五歩~▲3八飛が残る。
 b.△同銀▲6五歩△同飛▲6八飛△6七歩▲同飛△同飛成▲同金△6六歩▲同銀△同銀▲同角△2八飛▲3一飛の打ち合いは先手有利。

3.△4五歩▲6八銀△6五歩▲同歩と進んで図a5。

図a5

図a5は△7七角成と△6五銀の二択。先ずは△7七角成▲同銀(図a6)から見る。

図a6

実戦例は以下。

図a6から
1.単に△6五銀は▲2二角
 a.△3三角▲同角成△同桂▲5五角
  イ.△4二金▲2四歩
  ロ.△3九角▲3八飛△5七角成▲3三角成△6六歩▲6八飛△5六銀▲6六飛△同飛▲同馬△同馬▲同銀
 b.△5六銀▲1一角成△6七銀成▲6八香
  イ.△6六歩▲同銀△3九角▲6七香△2八角成▲4四馬△1九馬▲3四馬
   ⅰ.△4三香▲同馬△同金▲5二銀△3一飛▲4三銀成△5九飛▲6二歩
    ①.△6八歩▲同金△2九飛成▲7七銀△8五桂▲7八金打△7七桂成▲同金
    ②.△同金▲7七銀△6四歩▲6八香
   ⅱ.△6二金▲6三歩△同金▲6一馬△同金▲3一飛
  ロ.△7八成銀▲同金△6五歩▲4四馬
といった変化が一例。後述の△4六歩~△5七角の変化よりも劣る。

図a6から
2.△4六歩▲同歩△5七角▲2二角△4六角成に
 a.▲2六飛の変化は
[青嶋未来、負けない振り飛車! 四間飛車穴熊のすべて、マイナビ将棋BOOKS、2021、pp.25-30]参考。

 b.▲2七飛(図a7)の変化も有力なので具体的に見る。

図a7

図a7から
1.△1九馬▲1一角成
 a.△6五銀▲6八香△6六歩▲同香△同銀▲同馬
  イ.△6五香▲4四馬△6四飛▲5五銀△4四飛▲同銀△3八角▲2二飛△5一香▲4三歩△4一歩(代えて△2七角成は▲4二歩成)▲2一飛成△2七角成▲4一龍△4九飛▲4二歩成△4四飛成▲5二と△4一龍▲同と△3六馬▲5一と
  ロ.△6三香▲4四馬
   ⅰ.△6六歩▲6八歩△4六馬▲3四馬
   ⅱ.△4三歩▲3四馬△3一飛▲4五馬
 b.△4六馬▲6八香(代えて▲4四馬以下の変化も有力だがここでは略)
  イ.△4七歩▲4九歩
   ⅰ.△3六馬▲3七飛△4五馬▲6六馬△6二香▲5七馬△4一飛▲6四歩
   ⅱ.△5七香▲2四歩
    ①.△5八香成▲2三歩成△3六馬▲2四飛△3五馬▲2八飛△4八歩成▲同歩△6五銀▲3二と△6八成香▲同銀
    ②.△同歩▲3五歩△同馬▲2八飛△4六馬(△5九香なりは▲6四歩)▲3八飛
  ロ.△6二香▲2四歩
   ⅰ.△4七歩▲4九歩△2四歩▲4四馬△4三金▲2六馬△6五銀(代えて△5六馬は▲3七馬)▲同香△同香▲5二銀△6四飛▲4三銀成
    ①.△6八歩▲6六歩△同香▲5三馬△6二香▲6六銀△同飛▲6七歩△5六飛▲5二成銀
    ②.△6九香成▲5三馬△7九成香▲同金△6九金▲7八金△6七歩▲6四馬△同馬▲5七金
   ⅱ.△6六歩▲同銀△3六馬▲7七飛△4七歩▲4九歩△2四歩▲7五歩
2.△4七歩▲4九歩△1九馬▲1一角成△4一飛(△4六馬は合流)▲2四歩△4八歩成▲2三歩成△5八と▲4八香
といった変化が一例。やや居飛車が指しやすい形勢。

図a5に戻り△6五銀も有力。
[青嶋未来、負けない振り飛車! 四間飛車穴熊のすべて、マイナビ将棋BOOKS、2021、pp.35-51]参考。

図a8 図a5から単に△6五銀の変化

図a8以下の変化を嫌う場合、居飛車側は図a4以下
△4五歩▲6八銀△6五歩に▲2四歩(最善手)△同歩▲6五歩△6六歩(代えて△6五銀は▲3三角成△同桂▲2四飛で居飛車有利)の変化を選ぶこととなる。

図a9 2筋の交換が入った変化

図a9以下
1.▲2二歩は
[青嶋未来、負けない振り飛車! 四間飛車穴熊のすべて、マイナビ将棋BOOKS、2021、pp.52-57]参考。

2.ここは代えて▲6四歩が最善であり、手が広いため図a10~図a13に変化の一例を示す。定跡を抜けた局面で居飛車側が+450以上かつ方針立て出来ていれば、指しやすいと思う。

図a10
図a11
図a12
図a13

・△5一金型

△5四銀が遅い場合、▲8六角+▲6六銀型から▲7五銀~▲6四銀が成立。△7三歩型には▲7五銀のぶつけで先手良しが定説。

後手石田流組み換えに対し▲4六銀型で対抗。

後手の3枚穴熊に▲3五歩△同歩▲5五歩~▲3八飛の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲8六角型で▲3七桂△3五歩▲2六飛△3二飛の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲2四歩~▲3五歩~▲6五歩の仕掛け。
51手目は代えて▲4四角が勝る。

変則的な駒組みに▲3五歩△同歩▲3八飛の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲8六角型で▲6五歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲2四歩~▲3五歩~▲6五歩の仕掛け。本譜の仕掛けは成立している。75手目は代えて▲3一龍~▲5五金が分かりやすいか。

後手の3枚穴熊に▲2六角~▲3五歩の仕掛け。60手目は代えて△2四歩▲5九角△3三角~△3二飛とされると居飛車側の指し手が難しい。

後手石田流組み換え+△8四角。

後手の3枚穴熊に▲2六飛~▲3六飛の揺さぶりから▲6八銀。41手目 ▲2六飛では▲3六歩の前例も多いが▲2六飛が最善。羽生ゾーンで有名な一局。

先手銀冠穴熊vs後手四枚穴熊。玉頭位取りの先手に対し、後手が石田流+△3三角型。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲2四歩~▲3五歩~▲6五歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲8六角型、▲3七桂~▲2四歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲2四歩~▲3五歩~▲6五歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲3七桂△3五歩▲2四歩△同歩▲2六飛△6五歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲3七桂△3五歩▲2四歩△同歩▲2六飛△6五歩の仕掛け。51手目は代えて▲3四歩△7七角成▲同銀△4九飛成▲2四飛が最善。

後手の3枚穴熊に▲3七桂型で▲2四歩~▲6五歩の仕掛け。59手目は先に▲5五歩が最善、△同銀▲2七歩△4四角▲4五歩△同桂▲同飛△3一飛▲5六歩でどうか。

後手の3枚穴熊に▲3七桂型で▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲2六飛。

後手の3枚穴熊に▲2六飛~▲3六飛の揺さぶりから▲6八銀。37手目 ▲2六飛では▲3六歩の前例も多いが▲2六飛が最善(本譜の仕掛けは決定版)

後手の3枚穴熊に▲2六角~▲3五歩の仕掛け。なお37手目は前述した▲2六飛が最善。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型、△4五銀の揺さぶりに▲8六角。

後手の3枚穴熊に▲7八金▲6七金型で▲2四歩~▲6五歩の仕掛け。

▲8六角型、▲2四歩を手抜く。

▲8六角型、▲2四歩を手抜く。

後手の3枚穴熊に▲7八金▲6七金型で△6五歩の仕掛け。

向かい飛車振り直しで△2四歩から飛車交換。

後手の3枚穴熊に▲3七桂型で▲2四歩△同歩▲4六歩~▲4五桂の仕掛け。

▲8六角型、▲2四歩を手抜く。

▲3五歩△3二飛▲3八飛の仕掛け。

向かい飛車振り直し、▲9七銀~▲8六銀!!!とし▲7五歩から打開。(新しい打開方法)

後手の3枚穴熊で△2四歩▲2六飛△6五歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲1七角~▲3五歩~▲3七桂で打開。40手目 代えて△1四歩ならば▲2四歩△同歩▲1五歩△同歩▲3五歩△同歩▲1五香△同香▲3四歩△4四角▲2四飛の仕掛けが成立する。但し△5二金型で金がくっついていないために成立する仕掛けで、△6二金寄の一手が入っていると成立しない。三間飛車から四間飛車振り直しであり、手損が祟る展開。(後手徹底待機策に有力な打開方法)

向かい飛車振り直しに▲6五歩の仕掛け。

向かい飛車振り直しで△2四歩から飛車交換。37手目 ▲2六飛では▲3六歩の前例も多いが▲2六飛が最善(本譜は決定版)

▲3五歩△同歩▲3八飛の仕掛け。△4三金と上がる形は振り飛車側がまとめるのに力が要る。△1四歩型のため先後が逆で本譜の進行は十分想定される。

後手の4枚穴熊、▲3八飛△4四角~▲6八飛△3五歩の仕掛け。先述のように41手目に▲2四歩△同歩▲1五歩△同歩▲3五歩△同歩▲1五香△同香▲3四歩△4四角▲2四飛の仕掛けが成立しない

後手向かい飛車振り直しに▲3八飛△4四角~▲6五歩の仕掛け。

後手向かい飛車振り直しに▲6七金▲8六角型で▲7五歩△同歩▲同角の変化。玉頭戦になれば△5四銀の分、先手が厚みを築ける。

先手銀冠穴熊で玉頭位取り、▲6五歩の仕掛け。本譜は激戦の変化。

後手の3枚穴熊に▲7八金▲6七金型で△6五歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲2四歩~▲3五歩~▲3八飛~▲6五歩の仕掛け。先手が▲9五歩型のため成立しているが、端歩を突き合った形の場合▲6五歩に△7七角成▲同金△3六角▲3七飛△2五歩で先手自信なし。

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲2四歩△同歩▲6五歩の仕掛け。三間飛車から四間飛車振り直しであり、手損が祟る展開。(本譜は決定版)

後手の3枚穴熊に▲6六歩▲6八銀型で▲2四歩△同歩▲6五歩の仕掛け。三間飛車から四間飛車振り直しであり、手損が祟る展開。(本譜は決定版)

後手の3枚穴熊に▲3五歩~▲3八飛の仕掛け。

先手銀冠穴熊vs後手4枚穴熊、▲5五歩△同角▲5六銀△4四角▲2四歩の仕掛け。

後手の3枚穴熊に▲2六飛~▲3六飛の揺さぶりから▲6八銀。37手目 ▲2六飛では▲3六歩の前例も多いが▲2六飛が最善。以下
1.△4四角▲3六飛△4三銀▲6八銀
 a.△2四歩▲5五歩△2五歩▲6五歩△3五歩▲5六飛△2二飛▲6六角
  イ.△2四飛▲7五歩△同歩▲4六歩△2六歩▲4五歩
  ロ.△2六歩▲5四歩△同歩▲4四角△同銀▲5四飛△3三角▲2三歩△同飛▲3四角
 b.△7二金寄▲8六角
  イ.△6二金寄▲6五歩△1四歩▲7五歩△同歩▲同角
  ロ.△1二香などでは▲5五歩~▲5六飛~▲4五歩
2.△6四歩▲6八銀△7二金寄▲1六歩△1四歩▲3六飛△4三銀▲8六角△6三金▲7七角
 a.△7三金▲6五歩△同歩▲3三角成△同桂▲7七角△6六角▲同角△同歩▲5五角
 b.△6二金引▲8六歩~銀冠穴熊
などが一例。

後手向かい飛車振り直し、▲6六歩▲6八銀型で▲6五歩の仕掛け。

■ 袖飛車振り直し

△6四歩△6三金型で△7二飛と転回する形。

実戦例は以下。

先手四間飛車穴熊vs後手居飛車穴熊

■ 右四間飛車(▲4八飛)振り直しに△4四歩型

テーマ図b1から▲4五歩以下の変化は
[広瀬章人、四間飛車穴熊の急所2【相穴熊編】、浅川書房、2012、pp.206-210]参考。早めの▲4五歩は△4二飛で受けるのが定跡。

図b1 ▲4五歩には△4二飛

実戦例は以下。

△5二金型のため▲4五歩△4二飛が利かない場合の対応。

図b1から▲2八銀△2二銀▲1六歩△1四歩▲3九金△5二金右▲4八飛△4二金寄と進んで図b2。

図b2 ここでの▲4五歩は△4二飛が利かない

図b2から▲4五歩をここでは見る。以下、△5五歩▲同銀△4五歩が定跡化された対応であり
1.▲6五歩△3一金
 a.▲9六歩△5四歩▲6六銀△4四銀▲7五銀△3五銀▲6四歩△同歩▲3三角成△同金▲6八飛(代えて▲4五飛は△6七角の筋が常にある)△4六歩▲4八歩△3二金引
  イ.▲5三角△3三角▲9八飛△2四歩▲7一角成△4二飛▲8一馬△4七歩成▲同歩△8六歩▲3六歩(代えて▲同歩は△4七飛成)△8七歩成▲6八飛△7八と▲同金△3六銀
  ロ.▲5九金△7四歩▲同銀△5五角▲9七香△8六歩▲同歩△9九角成
 b.▲4五飛△8六歩
  イ.▲同歩△8八歩▲4三歩△3二金寄▲4四銀△同銀▲同角△同角▲同飛△8九歩成
   ⅰ.▲7一角△3三銀打
    ①.▲8二角成△4四銀▲8一馬△9九と
    ②.▲4八飛△5二飛▲5八金△9九と
   ⅱ.▲4二銀△3三銀打▲3一銀成△同金▲4八飛△8七角▲5九金△7六角成
  ロ.▲4三歩△3二金寄▲4四銀△同銀▲同角△同角▲同飛△4一歩▲6四歩△同歩▲同飛△8七歩成
2.▲4五同飛△5四歩▲4六銀△2四角▲3六歩△3三桂▲4二飛成△同飛▲4七歩△4四銀~△5五銀~△4六銀
でどうかだが、先手振り飛車側の攻めは頓挫している。

・▲5八金型

先手居飛車穴熊vs後手四間飛車穴熊の定跡形から▲9六歩が入った形の解説。

定跡形から▲9六歩~▲8八角~▲9七角の解説。

図b2から▲5八金△3二金寄と進んでテーマ図b3 ▲5八金型。

図b3 ▲5八金型

図b3以下
1.▲4七金
2.▲4七銀
3.▲4五歩△4二飛
4.▲4九飛△3一金から
 4-1.▲6五歩△4二銀
 4-2.▲9八香△7四歩
 4-3.▲9六歩△7四歩
 4-4.▲4五歩△4二飛
5.▲9六歩△3一金から
 5-1.▲8八角△4二銀
 5-2.▲4五歩△5五歩▲同銀△4五歩
6.▲6五歩△3一金▲4五歩(代えて▲4九飛は△4二銀で4-1に合流)△4二飛
を順に見る。

図b3以下
1.▲4七金は図b4~図b5に変化の一例を示す。▲4五歩の仕掛けには△8六歩▲同歩△7五歩▲同歩△4五歩~△7六歩がある。持久戦には△7五歩から一歩交換を目指して模様を良くする。

図b4
図b5

実戦例は以下。

▲4七金~▲3六金!!!に△5五歩~△5四銀型の構築。

2.▲4七銀は図b6~図b10に変化の一例を示す。やはり後手から動くには△7五歩からとなる。

図b6
図b7
図b8
図b9
図b10

3.▲4五歩△4二飛及び
4.▲4九飛△3一金から
 4-4.▲4五歩△4二飛
5.▲9六歩△3一金から
 5-2.▲4五歩△5五歩▲同銀△4五歩
6.▲6五歩△3一金▲4五歩△4二飛
のように▲4五歩の仕掛けに対して△4二飛あるいは△5五歩▲同銀△4五歩が可能な形については

>>>先手居飛車穴熊vs後手四間飛車穴熊
     
■ 右四間飛車(△6二飛)振り直しに▲6六歩型
     ・△5二金型

の項を参照。

実戦例は以下。

▲9六歩型で▲4五歩の仕掛け。

△3一金に代えて△3二金寄ならば本譜の▲4五歩に△4二飛と寄ることが出来る。52手目は代えて△7六銀成▲4三銀成△同金▲同飛成△7七成銀▲同桂△4二歩で▲4四歩!!!や▲5二龍△4一銀▲6一龍△7七飛成▲8一龍△5六歩も考えられるところ。本譜の進行は55手目で代えて▲4五飛と浮いておけば先手が指しやすかった。

34手目は代えて△3二金寄ならば本譜の▲4五歩に△4二飛と寄ることが出来る。44手目は▲5四銀を消すために△8四飛が絶対手。102手目は代えて△3九と~△7六飛なら後手勝勢だった。

4.▲4九飛△3一金から
 4-1.▲6五歩△4二銀▲4五歩△同歩▲同銀△7七角成▲同桂△8六歩以下の変化の一例を図b11~図b12に示す。

図b11
図b12

4.▲4九飛△3一金から
 4-2.▲9八香△7四歩は▲6五歩△4二銀▲4五歩△同歩▲3三角成△同銀▲6四歩△同歩▲5三角△8六歩▲6四角成△8三飛で後手居飛車側は千日手模様を目指せる。以下
 a.▲7四馬△8二飛▲6四馬△8三飛
  イ.▲6五馬△8四飛▲7五馬△8二飛▲8六歩△8七角▲4四歩△9八角成▲6九飛△6二歩▲6四馬△7三歩▲5四馬△5一香
   ⅰ.▲3二馬△同金▲4三金△3一銀▲3二金△同銀▲4三金△4二金▲同金△同銀
   ⅱ.▲4三歩成△5四香▲3二と△同金
  ロ.▲9一馬△8七歩成▲8五歩△同飛▲6四馬△9八と▲8六香△9五飛▲4四歩△4二香▲5四馬△9九角
 b.▲4五銀△8七歩成▲7四馬△8六飛▲7五馬△8二飛▲5四銀△9八と▲4四歩△4二歩▲8四歩△2四香
などが一例だが、▲9八香型が生きない。

4.▲4九飛△3一金から
 4-3.▲9六歩△7四歩▲6五歩と進んで図b13。

図b13

図b13から
1.△4二銀の変化は
[広瀬章人、四間飛車穴熊の急所2【相穴熊編】、浅川書房、2012、pp.220-224]参考。
2.△7五歩の変化も有力なので具体的に見る。△7五歩以下▲同歩△4二銀
 a.▲6七金の変化の一例を図b14~図b15に示す。金が囲いから離れるため振り飛車側からすると、まとめにくくなる。
→(cf.20201121_QueenAI_test201010g_i9-7920x_12c Krist_483_473stb_16t_100m@floodgate)が先後逆の例。

図b14
図b15

 b.▲4五歩(本命)△8六歩▲同歩△4五歩▲4四歩(代えて▲3三角成は△同銀で△8六飛と△7六角が残る)△7六歩(7筋を突き捨てた効果)▲6六角と進んで図b16。

図b16

図b16以下の変化の一例を図b17~図b20に示す。1筋の交換が無い場合は振り飛車側からの端攻めが全く無いため、この変化では特に居飛車側が得をする。

図b17
図b18
図b19
図b20

戻って図b3以下
5.▲9六歩△3一金から
 5-1.▲8八角△4二銀の変化の一例を図b21~図b22に示す。

図b21
図b22

その他実戦例は以下。

▲4八金左の瞬間に△8六歩~△4五歩の仕掛け。飛車道を遮断する手の場合、居飛車側からの仕掛けが成立する。

・▲5九金型

図b2から▲5九金以下の展開を1筋の交換が入った形で3つのパターンに分類して見る。

まずテーマ図b23 ▲3六歩▲3八金型。類型は
[広瀬章人、四間飛車穴熊の急所2【相穴熊編】、浅川書房、2012、pp.225-236]参考。

図b23 ▲3六歩▲3八金型

図b23以下△8六歩▲同歩△7五歩▲同歩△4五歩▲同歩△7七角成▲同桂△8六飛
1.▲4四歩△5九角
 a.▲4五飛△7七角成
  イ.▲4三角△8八飛成▲3二角成△同金▲4三金△3一銀左は後手居飛車側が千日手を狙える。途中▲6四歩△同歩▲6三歩の打開には△8一龍で徹底抗戦するか、△4一歩▲6二歩成△5五歩~△8七角で後手が潰れない。
  ロ.▲9五角△7六飛▲7七角△同飛成と飛車の位置をずらすのは
   ⅰ.▲4三角△4一歩▲5四角成△5七龍▲4七金△5九龍▲4三歩成△同金▲同馬△6六角
   ⅱ.▲6一角△5一桂▲4三歩成△同金▲同角成△同銀▲同飛成△同桂▲4四歩△同歩▲4三歩△8二飛でどうか。
 b.▲4九飛△7七角成
  イ.▲4三角△8八飛成
   ⅰ.▲3二角成△同金▲4三金△3一銀左▲3二金△同銀▲4三金△3一金▲4二金△同金▲4三銀△4一金打▲4二銀成△同金▲3一金△5一桂▲6四歩△同歩▲6二歩△5二角で受かる。
   ⅱ.▲5四角成△1五歩▲同歩△1七歩▲同銀△6六馬▲2八銀△5七馬▲4七銀で4筋を遮断し△4六歩▲同銀△5六馬▲3七金△2五桂
  ロ.▲9五角△7六飛▲7七角△同飛成と飛車の位置をずらすのは▲4三角△3三金▲5四角成△4六歩で△5七龍が狙い。
2.▲4六角△6六角
 a.▲4四歩△5五歩▲4五銀△8九歩成▲1五歩△7七角成▲1四歩△5九馬▲1三歩成△同銀▲5五角△4八馬▲4三歩成△4四歩▲同角△3三桂打▲同と△同銀▲同角成△同桂▲4八金寄△5五角
 b.▲8二歩△5五歩
  イ.▲同銀△7七角成▲8一歩成△2四桂~△9九馬
  ロ.▲同角△5七角成▲4七銀△4八馬▲同金△5九飛
といった進行が一例。

次にテーマ図b24 ▲3六歩▲4九金型。類型は
[広瀬章人、四間飛車穴熊の急所2【相穴熊編】、浅川書房、2012、pp.237-242]参考。

図b24 ▲3六歩▲4九金型

図b24以下▲4五歩△同歩▲同銀△7七角成▲同桂△6六角
1.▲3四銀△7七角成▲4三歩△5一銀▲4四角△同馬▲同飛△5二飛▲6一角△5三飛▲7二角成△6六角
2.▲2六角△9二飛▲8五桂△5七角成
 a.▲4三歩△同金▲4四銀△4七歩▲9八飛△4四金▲同角△5五歩▲5四歩△3三銀打▲5五角(代えて▲5三角成は△5六歩)△4八銀~△5六馬
 b.▲7一角成△4六歩▲3八金△4八馬▲同金△6八飛▲5六銀△5五歩▲同銀△5七歩▲5九歩△4七歩成▲同金△6五飛成
3.▲3七角△9二飛▲4四歩△7七角成▲5四銀△5一桂
4.▲7一角△9二飛▲3四銀△7七角成▲4三歩△5一銀▲4四角成△同馬▲同飛△5二飛▲6一角△5三飛▲7二角成△6六角
5.▲4四歩△7七角成▲3四銀△5一桂▲4三歩成△同銀▲同銀成△同金▲4四歩△3三金▲6四歩△同歩▲5三角△9九馬▲6四角成△9二飛
で居飛車側がやや指しやすいか。

最後にテーマ図b25 ▲3七歩▲3八金型。
[広瀬章人、四間飛車穴熊の急所2【相穴熊編】、浅川書房、2012、p.225]では▲3六歩を推奨しているが、3つのパターンの中では最も先手玉が堅く、実戦的に大変な変化。

図b25 ▲3七歩▲3八金型

図b25以下
1.△7四歩▲6五歩△4二銀▲4五歩△同歩▲同銀△7七角成▲同桂△6六角以下の変化の一例を図b26~図b27に示す。

図26
図27

図b26~図b27といった変化を嫌う場合、居飛車側は図b25以下
2.△4二銀となるが、今度は▲4五歩と突かれると△4二飛と回る余地が無く、また先手玉が堅いため△7四歩に▲9六歩など△6五歩を突かない変化を与えやすい。

▲5九金型の実戦例は以下。

先手三間飛車振り直しに△5五歩△5四銀型で対抗。

▲9六歩▲9八香型、先手の3枚穴熊▲3七歩▲3八金型に△4四歩△4二銀型で△4五歩の仕掛け。

先手の3枚穴熊▲3七歩▲3八金型に△4四歩△4二銀型で△8六歩~△4五歩の仕掛け。(本譜は決定版)

三間飛車に△4四銀型、石田流組み換えを狙う手に△8四飛~△2四角~△6四歩の仕掛け。

▲5六銀に対して△5五歩の仕掛け。▲5八金~▲6九飛~▲4九飛が先手の狙いであったが、その手順を許さない。(本譜は決定版)

先手の3枚穴熊▲3六歩▲4九金型に△4四歩△4二銀型で△5五歩の仕掛け。44手目は代えて△8六歩▲8六同歩△7三桂~△6五桂~△2四角や▲8六同角△4二銀▲3五歩△4五歩▲5六歩△8六飛~△6七角~△1五角も有力。

先手の3枚穴熊▲3七歩▲3八金型に△4四歩△4二銀型で△8六歩~△4五歩の仕掛け。本譜の千日手筋は常に後手居飛車側に有効。48手目は代えて△5八角~△7六角成が勝る。(cf.20021025_小林_土佐)

先手の3枚穴熊▲3六歩▲4九金型に△4四歩△4二銀型、▲4五歩の仕掛け。(本譜は決定版)

先手の3枚穴熊に△7三桂型、△8六歩~△4五歩の仕掛け。

三間飛車に△4四銀型、△5五歩の仕掛け。

先手の3枚穴熊▲3六歩▲3八金型に△4四歩△4二銀型で△8六歩~△7五歩~△4五歩の仕掛け。57手目 後手居飛車側は千日手歓迎だが、△5一桂が好手で▲4三角の打ち込みはやや無理筋。(本譜は決定版)

先手の3枚穴熊に松尾流+△8四飛~△7四飛の揺さぶり。先後が逆の場合、本譜の居飛車の打開筋は有力な手順。

先手向かい飛車振り直し。

三間飛車に△4四銀型、△7五歩の仕掛け。

先手の3枚穴熊に△4四歩△4二銀型、▲4五歩△2四角▲4七飛△8六歩▲同歩△4五歩▲4五同銀△7三桂の仕掛け。

先手の3枚穴熊に△4四歩△4二銀型、▲9八香△2四角の交換で△7三桂~△8六歩▲同歩△8四飛~△7五歩の仕掛け。

△2四角型に先手が▲3七銀と上がって力戦調。

先手の3枚穴熊に▲4五歩の仕掛け。

先手の3枚穴熊で▲4五歩△4二飛▲4四歩から飛車角総交換の変化。

先手の3枚穴熊で△7三桂に▲7五歩△同歩▲7八飛の仕掛け。

▲9八香型、先手銀冠穴熊に△4四歩△4二銀型で△8六歩▲同角△4五歩の仕掛け。

向かい飛車振り直しで▲8六歩から飛車交換。

先手向かい飛車振り直しに△4五歩▲同歩△7七角成の仕掛け。

▲6八飛型で▲4五歩の仕掛け。

▲9八香型、先手の3枚穴熊に△4四歩△4二銀型、▲4五歩△8六歩▲同歩△4五歩の仕掛け。

■ 袖飛車振り直し

▲4六歩▲4七金型で▲3八飛と転回する形。

先手居飛車穴熊vs後手三間飛車穴熊

■ 5筋不突き穴熊

かつての決定版。トマホークの流行により減少したが、後手三間飛車の△5四歩△5三銀型には依然として有力。

■ △6四銀型に▲6六銀型

テーマ図c1から△4五歩及び△2二飛以下の変化の解説は
[北島忠雄、解明! 相穴熊の最先端、マイナビ将棋BOOKS、2015、pp.12-38]参考。

図c1

矢倉流中飛車に関しては
[北島忠雄、解明! 相穴熊の最先端、マイナビ将棋BOOKS、2015、pp.112-125]参考。

実戦例は以下。後述する▲6六歩型の重要度が増しているため、多くの実践例を割愛する。

▲3七桂に△5五歩▲同歩△4二飛▲6八角△5五銀の仕掛け。

△7三歩型には▲7五銀のぶつけで先手良し。

■ △6四銀型に▲6六歩型

三間飛車ミレニアムの出現に伴い、△6四銀を見て▲6六歩と突く形が必須となった。▲6六銀型と比較して玉の堅さが劣る点がデメリットだが、矢倉流を防げて確実に先手の居飛車側から打開することが出来る点がメリット。

[深浦康市、斬り合いで勝つ! 深浦の居飛車穴熊、マイナビ将棋BOOKS、2021、pp.207-214]にも解説がある。

先手番専用定跡s-book_blackにも掲載済み。ファイルはこちら

実戦例は以下。

石田流組み換えを狙う手に▲6五歩△5三銀▲5五歩の仕掛け。

△7五歩に▲6五歩△7六歩▲同金△7三銀の進行。

△7三金~△8四金!!!~袖飛車振り直し。

▲6五歩に△7三銀引~△6四歩の反発。

手損を厭わずに△5三銀~△6四歩に対して、松尾流から▲2四歩△同歩▲同角の仕掛け。

△5三銀型に▲6六歩は居飛車が損。後手から△1五歩の仕掛け。

▲6五歩に△7三銀引~△6四歩の反発。

▲8六角△4二角▲6五歩△同銀~角交換の仕掛け。

後手が中飛車振り直しから△5五歩の仕掛け。

手損を厭わない△5三銀に▲6五歩△6四歩の反発。

先手三間飛車穴熊vs後手居飛車穴熊

■ △4四歩型

三間飛車ミレニアムの出現に伴い必須の形に。居飛車側は▲4六銀を見てから△4四歩と突くのが理想であるが、後手番のため叶わない。居飛車が仕掛けた局面あるいは振り飛車に仕掛けさせた局面の評価値が、-150程度となる手順を用意することが当面の目標。

居飛車側の種々の対策を見ていく。前提として、振り飛車側はBIG4まで組めれば▲6五歩~▲7五歩△同歩▲7八飛や▲6六角など駒をぶつけて行って手になる。

直ちに松尾流に組むのは▲7五歩~▲7六飛と浮かれる。(図d1)

図d1

但し、上図d1から
1.直ぐに▲7七桂だと△8六歩~△7四歩~△8六飛の筋があるので
2.▲4七金
 a.△8四飛▲2六角としてから△3三金寄▲7七桂△8六歩~△7四歩~△8六飛▲同飛△同角▲6五桂(図d2)や
 b.△5二飛(本命)▲6五歩△5五歩▲同歩△同飛▲5六銀△5四飛▲7七角(図d3)が一例。

図d2
図d3

松尾流に組んだ場合、石田流+▲7七桂を無条件で許すと振り飛車側が作戦勝ちになりやすい。

居飛車が△7四歩とする指し方は、石田流を絶対に阻止できるメリットがある一方、▲3七角として▲5五歩~▲5八飛や飛車のコビン攻めといったリスクを負う。

居飛車が△4三金を保留して△3二金△3一金型の穴熊に組むのは一案。▲4六歩を早めに決めている形に対して特に有効である一方で、組む過程で離れ駒が生じるため石田流組み換えを狙う手にやや弱くなるデメリットがある。

図d4

例えば図d4から
1.▲7五歩△5三銀▲5九角に
 a.△1一玉には▲7四歩△同歩▲3七角△8四飛▲9一角成△8六歩▲同歩△同飛▲8八歩△8七歩▲7四飛△7三歩▲7五飛△8八歩成▲7七桂△7八と▲8五飛△同飛▲同桂△8九飛▲3八銀△8五飛成▲6一飛△3二銀が一例で激戦。
 b.△8四飛(最善手)には
  イ.▲9五角△9四飛▲9六歩△1一玉
   ⅰ.▲3八銀△2二銀▲8六歩△5五歩▲7四歩△同歩▲8五歩△7五歩▲5五歩△4五歩
   ⅱ.▲9七桂△2二銀▲8五桂△5五歩▲7四歩△5六歩▲同銀△7四歩▲3八銀△4五歩▲5七金△4四銀
  ロ.▲3八銀△9四歩▲7四歩△同歩▲3七角
   ⅰ.△6四銀▲6五歩△7五銀▲9一角成△8六歩▲同歩△同飛
    ①.▲7七桂△8九飛成▲6八銀△3二銀▲3五歩△4三金▲6四歩△同銀▲3四歩△同金
    ②.▲8八歩△8七歩▲同歩△同飛成▲7九飛△4五歩▲5五歩△8八歩
   ⅱ.△9三香▲9一角成△8六歩▲9二馬△8七歩成▲7四飛△同飛▲同馬△7九飛▲9二馬△8九飛成▲8二飛△3二銀▲8一飛成
が一例。
b.△8四飛の変化の方がa.△1一玉と比較して居飛車側の評価値は良いものの、妥協して△3二銀と上がる展開や、穴熊に組めたとしても直ぐに金を引き締めるほどの余裕は無い局面が予想される。

図d4から
2.▲1八香△1一玉▲1九玉△2二銀▲2八銀△5三銀▲3九金△3一金▲4八金寄△4二金寄▲3七金△3二金寄には▲3五歩という手がある。(図d5)

図d5

この局面を竜王戦(20220524_中村_大橋)と比較する。△3一金△3二金型が△4三金型と比較して上部に薄いこと、▲4七歩型かつ▲3九金型のため袖飛車振り直しの際に▲4六銀、▲3八飛とスムーズな駒の進出が図れる点が挙げられる。

図d5以下
1.△同歩は▲4六銀
 a.△2四角▲2六金△3六歩▲3五銀△4二角▲3六金△8四飛▲6五歩
 b.△4二銀▲3五銀△4三銀▲3四歩△4二角▲6五歩△7四歩▲4四銀△3四銀▲3三歩
  イ.△同銀▲同銀成△同金▲4四銀△2二銀▲3三銀成△同銀▲4四金△2二銀打▲5四金
  ロ.△同桂▲3八飛△8六歩▲同歩△4三歩▲2六金△4四歩▲3四飛△8六角▲1五歩△7七角成▲同桂
の追撃が来るので
2.△4二銀(最善手)▲3四歩△2四角として
 a.▲4六銀
  イ.△5五歩▲同歩△4五歩▲同銀△8六歩▲同歩△5七角成▲4六歩△6七馬▲8八飛△7六馬▲1五歩△同歩▲5四歩△5七歩▲6五歩△5八歩成▲4四角△5二飛▲7七歩△6七馬▲6四歩△同歩▲6三歩
  ロ.△4五歩▲同銀△5七角成▲3八飛△8四飛▲6五歩△7四飛▲2二角成△同金上▲7五銀△同馬▲同歩△同飛▲4四銀△7九飛成▲3三歩成
 b.▲4六歩△4三銀
  イ.▲6五歩△3四銀▲6八飛△5五歩▲同歩△3五銀▲6六飛△4二角▲6四歩△同歩▲5四歩△8六歩▲同歩△3六歩▲3八金引△8八歩▲5六飛△8九歩成▲5三歩成△2四角
  ロ.▲3八飛△3四銀▲6五歩△8六歩▲同歩△7四歩▲4七金△3五歩▲5五歩△同歩▲5四歩△4三金▲6六銀
などが一例でどうか。まとめると、居飛車が△3二金△3一金型の穴熊を目指す場合、先手振り飛車側は序盤で千日手に苦労する展開にはなりにくく、形勢としては良い勝負となる。

なお△4四歩△4三金型に対して、振り飛車側から▲4六銀~▲3五歩~袖飛車振り直しを狙うのはあまり得にならない。何故なら、▲3五歩には△4五歩の突き違いが手筋で、▲3四歩△2四角の切り返しがあるからだ。

銀河戦(202112221_阿部_小林)から。32手目は代えて△4五歩▲3四歩△同金▲3七銀△5三銀▲3九金△2二銀が勝る。居飛車側は▲3五銀の形を許してはいけない。

これらを踏まえると居飛車側の対策としては、可能な限り△5三銀はそのまま据え置いて△9四歩~△8四飛か、単に△8四飛として石田流組み換えに備えるのが妥当なところか。この辺りは実戦例待ち。

その他実戦例は以下。

△9四歩~△8四飛で石田流組み換えを阻止。▲4八飛~▲4五歩の一歩交換に△7四飛の揺さぶり。

△7二飛▲7八飛△7五歩~△4五歩~△6五歩の仕掛け。本譜の進行は振り飛車側の手損が祟る展開のため、居飛車に不満は無い。

銀冠→銀冠穴熊に△6四銀型から△7五歩▲同歩△同銀の仕掛け。居飛車十分の進行。

石田流組み換えを狙う手に△6四銀。

△6四銀~△5五歩の仕掛け。

■ ▲4六銀型に△4四銀型

テーマ図d6から袖飛車振り直し~▲3五歩の仕掛けの変化は
[小倉久史、捌く振り飛車!三間飛車穴熊のすべて、マイナビ将棋BOOKS、2021、pp.23-38]参考。

図d6

テーマ図d6から石田流組み換えの変化は
[小倉久史、捌く振り飛車!三間飛車穴熊のすべて、マイナビ将棋BOOKS、2021、pp.39-45]参考。

袖飛車振り直し~▲3五歩の解説。

実戦例は以下。

四間飛車振り直しに△8四飛、▲3八飛に△7四飛の揺さぶり。

四間飛車振り直しに△8四飛、▲3五歩の仕掛け。

石田流組み換え+▲7七桂~▲6五桂に対し、△9六歩からの仕掛け。

石田流組み換え~▲7六飛に△4二角型で△6四歩の仕掛け。

向かい飛車振り直し、△5五歩の仕掛け。

石田流組み換えの▲7六飛に△5五歩の仕掛け。

▲7五歩△8四飛▲7四歩~飛車交換。

袖飛車振り直し~▲3五歩の仕掛け。

石田流組み換えを狙う手に△8四飛~5五歩の仕け。

▲4六歩型、△7三桂型で△8六歩▲同歩△8四飛~△7五歩の仕掛け。

向かい飛車振り直し、▲6六角型に△6四歩の仕掛け。

石田流組み換え~▲7六飛に△4二角型で△6四歩の仕掛け。

石田流+▲7七角型、▲4五歩~▲9五歩~▲3五歩の仕掛け。

四間飛車振り直しに△8四飛、▲3五歩の仕掛け。

▲9七桂型に△9五歩の仕掛け。

▲3七銀引に△5五歩の仕掛け。

袖飛車振り直し~▲3五歩の仕掛け。

△7二飛型に▲8六歩の仕掛け。

中飛車から▲5五歩の仕掛け。

向かい飛車振り直し、△6二飛~△6四歩の仕掛け。

袖飛車振り直し~▲3五歩の仕掛け。

▲7五歩~▲7四歩△同歩▲9五角の仕掛け。

中飛車振り直し、▲6六角型で▲7五歩の仕掛け。

石田流組み換え+▲7七角型、▲3七歩型には△3五銀のぶつけで後手良し。

袖飛車振り直し~▲3五歩の仕掛け。

△2四角~△3五歩の仕掛け。

四間飛車振り直し、▲3七銀引に△4五銀▲5五歩の展開。

▲3七歩型には△3五銀のぶつけで後手良し。

石田流組み換えを狙う手に△2四角~△3五歩▲同歩△8六歩の仕掛け。

中飛車から▲5五歩の仕掛け。

石田流組み換えを狙う手に△5五歩の仕掛け。

四間飛車振り直しに△6二飛、立石流阻止の飛車角交換。

四間飛車振り直しに△6二飛、立石流阻止の飛車角交換。

袖飛車振り直し~▲3五歩の仕掛け。△8六歩▲同歩の交換を入れて△2四角と上がることで△8八歩が可能に。

▲7五歩~▲7四歩△同歩▲9五角の仕掛け。

四間飛車振り直しに△8六歩~△7五歩~△同角の仕掛け。

まとめ

基本的には居飛車が指せる変化が多い。但し2022年8月現在、先手三間飛車▲5七銀型で△4四歩を強制させる指し方は振り飛車側も面白いと思う。

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