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その夢、KOJI The Planet Stoned Plus

 20世紀のMPC2000でレコードからチョップした音を鳴らしギターを弾き歌うKOJIと、ベースのYUMIKOの2人組ロックバンド

 ダウナーにすぎるその夢見心地な世界で、KOJIはクラゲのようにふわふわと漂いながら好き勝手に歌っている。そんなブリブリとヨレにヨレるフロントマンが思い描く、グルタラール製剤な世界の輪郭を、まるで気遣うかのようにベースのYUMIKOが撫で上げる。うん、大変だろう(笑)筆者は彼らと面識があるわけでもないし、Twitterで時々絡むことがある程度なので、音源やライブ映像から読み取って想像するしかないのだが、彼らはデュオでしか成立しえないだろう。なぜなら、それだけフロントマンであるKOJIの個性が強烈すぎるからだ。行きっぱなしにならぬよう、支える者が必要不可欠だ。それだけ危ういのだ。一聴した感じ、その手触りはThe Velvet Undergroundのようである。そのルーツに根差した音楽であるのは疑いようのないことなのだが、彼らの志向と指向はSqueeze (1973年2月)以降の音であろう。彼らは「音楽は系譜」であると深く理解している。まるで2021年から来たタイムトラベラーが1974年の舞台に上がり、表現しているかのようである。

 表現には「無限のバリエーションが存在する」。そう、取り上げたいアイデアが頭の中に山積みだ。それに加えて、ライブでの再現性も重要視しているからこそ、MPC2000をメンバーとして迎え入れたのだろう。曲により、その都度ドラムセットを入れ替えることなんてとても現実的ではないしね。そして何より、MPC2000は決して注文をつけてこないから(笑)。その詞やライブでの振る舞いを見て、筆者が勝手に思ったことなのだが、このデュオのフロントマンは傲慢なタイプだろう。たぶんね、たぶん。そうであってほしいという願望が入り混じっているが、世界観が世界観なので、一癖も二癖もあるだろうなというのが、筆者のシックスセンスだ。

 彼らの楽曲のそのほとんどが英詞である。EDGE WATER INさんのレビューでも述べたが、筆者の意見は「そんなことは些末な問題」だ。創作者によって歌詞の役割は異なる。川柳じゃないんだから、そこにルールなんてない。英詩の響きだったり、レンガみたいな継ぎ目だったりを重視したいのかもしれないし、音で表現しきっているからそれ以上の要素を詰め込みたくないのかもしれない。初期衝動を重視してる場合もあるし、単に海外のリスナーをターゲットにしている場合だって当然ある。英詩だから聴かないという日本のリスナーがいることなど百も承知の上だろう。なぜ?と問いかけるまでもない。だって、なんであんたの要望に応える必要があるんだ?。やりたいようにやっているだけだろう。俺たちは宅配ピザ屋じゃないんだから。

 デジタルアルバム「KOJI The Planet Stoned Plus primal」は何度繰り返し聴いても飽きが来ない。しっかりと確立された世界観があり、かつ実験的なアプローチも積極的に取り入れているので、どっぷりと浸れるしその都度新たな発見がある。特に、8曲目のORANGE SQUEEZERは秀逸だ。4つ打ちを取り入れること自体に目新しさはないのだが、、電気グルーヴの虹に近い「ただただ美しい光景」を目の前にした時のあの感じ。自分たちが志向、指向している音楽には「ドラッグ」が必要不可欠なのだということを理解しているというか。10曲目のA NIGHT WALKER (RMX)なんかはまさにそうだ。ドープとドラッグは切り離せないだろう?KOJI The Planet Stoned Plus、よくわかってるなぁ!というのが筆者の感想だ。畑違いのように感じると思うが、HIPHOPのトラックメーカーにこそ是非聴いてもらいたい。きっと取り入れるべきものが見つかるだろうと思う。

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