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ZUGAさんの見る夢は

 愛知県豊橋市、真夏は気温35度。クーラー無きその録音部屋は六畳間(想像)。古い機材から漏れ出す熱と知恵熱で揺らぐ蜃気楼。汗だくになりながらノスタルジックに狙いすますが、その意に反し、2021年に鳴る音は最新である。

 Colorful-ZUGA BEST SELECTION。確かな世界観の上で成立する音楽。一聴した感じ、筆者はMy Little Loverを想起したのだが、繰り返し聴くたびにそんなイメージは露と消え失せた。白いレースカーテンが面倒そうに揺れている。うだり気だるく死にたくなった真夏の夕を、心の片隅から強引に引っ張り出してくるような、そんな暴力性に満ち満ちている。シュガーコイルさんはノスタルジックに「もののあはれ」を表現していたが、ZUGAさんのサウンドはまるで催眠導入剤のようで、リスナーの心を露わにする。擦り切れるような痛み、ノスタルジックな憂鬱の想起。ボサノヴァ風味なコードワークに、切なく遠くで鳴るようなメロディーと錯綜する言霊。その質感は非常に重くて濃ゆい。でも繰り返しその感傷に浸りたくなるような中毒性。筆者はこんな感触の音楽を他に知らない。

 筆者がリスナーに提示できるものは以上だ。その音に浸り、こんな妄想に取りつかれるのも一興。是非繰り返し聴いてほしい。ちなみに筆者のマストは「朝焼けのノラ」だ。

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https://twitter.com/takurokupopZuga

音源


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