2019/08/15

誰かに好きだ、というとき、わずかに自分自身が軽くなっている気がして怖くなる。イメージではなく質量のはなしで、1g軽くなるという感覚を覚える。身体は何も変化などしていないから、きっと魂、のようなものが、ふわりとわたしから離れているのだろう。

あなたがすきです、という魂は、空気を伝い、声になって宙を舞い、言葉としてあなたの目の前を通過する。あなたがわたしの1gの質量をみつけ、あなたに溶けていく様子を想像して、わたしは怖くなる。

もしも、魂が、確実にだれかに届いてしまったら、誰かの中に溶けてしまったら、わたしは、わたしを、あなたを、もう永遠に手放してしまう気がして、怖くなる。届いてしまった祈りなんて呪いと同じだよ。言葉にならなかった、わたしの質量だけが、魂だと、信じているあいだ、わたしは確実にあなたを愛していられる。

わたしたちは、誰にも溶けずに宙を舞う


#散文 #詩