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【和風怪奇短編小説】山伏、舟ひっくり返すこと【梗概】

 本記事は、短編小説「山伏、舟ひっくり返すこと」の梗概です。結末部分を含むネタバレがあります。ご了承ください。

 この物語は、渡守が乗客に聞かせる経験談という体裁をとる。舞台は、中世日本の説話らしい和風の世界で、甲楽城(越前)の渡しという土地だ。

 他の渡守との客取り合戦に負けて肩を落としている船頭のもとに、小男と、山伏らしい大男の二人組がやってくる。二人は喧嘩をしていたので、船頭は彼らと関わりたくなかった。しかし、二人組は船頭のもとに来た。

 さきに小男が舟に飛び乗り、紙包を運賃として出した。小男は自称陰陽師だった。船頭は懐疑論者で山伏も陰陽師も等しく怪しむ。だが、船頭に追い払う度胸はなかった。

 次に山伏らしい大男が無賃乗船を試みたが、船頭は断った。陰陽師も船頭の判断を認めた。

 結局、船頭は小男だけを乗せて舟を出し、乗れなくて憤る山伏を岸に置き去りした。

 航海中、船頭は異音を耳にした。船頭は幽霊の可能性を否定しつつも恐怖する。音の正体は、サメによって負傷した遭難者であった。船頭は遭難者を助けあげると同時に、遭難者に気づいていながら何もしなかった小男を軽蔑する。おかげで、小男と遭難者のあいだに険悪な雰囲気が生じる。

 遭難者が、岸辺を指し、大男が舟を岸に戻そうとして祈祷らしきことをしていると指摘する。船頭と小男は大男の振る舞いを一笑に付すが、遭難者は山伏を侮るなと警告する。それでも、小男と船頭は聞き入れない。

 大男は祈祷をつづける。やがて海は大荒れになり、船頭は転覆を恐れる。

 小男は嵐を鎮めてやると船頭に提案し、代償として船賃の返却を要求した。船頭は承諾した。小男は、船頭の目から見て、陰陽師らしい振る舞いを始めた。しかし、海は荒れたままで、小男は船賃を海に落とした。

 嵐は舟を、もといた渡し場へ吹き戻していく。船頭は海は大荒れなのに、快晴であることに気づき、大男は本物の山伏かもしれないと思う。小男は、大男が本物かどうかについて屁理屈をこねて、自分は本物の陰陽師だと主張しつづけるが、船頭も遭難者も小男を相手にしない。

 岸辺近くで風が舟をひっくり返し、一同は着地する。遭難者は遁走し、船頭は船賃を取りそこねる。小男は逆さになった舟の下に閉じ込められる。舟の下で助けを求める小男を、船頭はしばらく放っておいて嗜虐心を満たす。

 その後、船頭は大男の手を借りて舟を起こす。大男は再び無賃乗船を試み、船頭は承服する。小男は船頭を脅迫するが、船頭は無視して船を出す。

 船頭は大男が本物の山伏なのか、悪天候に乗じただけのペテン師なのか、探りをいれるが答えは得られない。対する大男は自らの怪物退治と財宝獲得の冒険譚を語る。船頭は話を聞き流して舟を向こう岸につける。

 すると大男は、船頭に宝の詰まった巾着を渡す。船頭は、大男の冒険譚が真実である可能性に接して呆然とする。そんな船頭に、大男は船賃を渡したから舟をもと来た岸に戻せと要求する。船頭は大男を敵に回したくないので従う。

 船頭が大男を乗せて引き返していると、海面に小男が首が突き出す。船頭は小男が仕返しに来たのかと怯えるが、小男は落とした船賃を探しているのだと答える。

 このようにして話を終えた船頭は、財宝を得たはずの自分が船頭を続けているわけを白状する。小男に怯えたとき、宝の巾着を海に落としたのだと。

本短編は宇治拾遺物語3巻4「山伏、舟祈り返す事」と、落語「巌流島」にアイデアを得たものです。両作品を考案した方々と今日まで伝えてきた方々に、末筆ながら感謝いたします。

本編はこちらから↓

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