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女性ホルモンによるメンタルの変化と、こころのケア

〈監修者〉
丸の内の森レディースクリニック
院長 宋美玄先生

大阪大学医学部医学科卒業。周産期医療、女性医療の診療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』『産婦人科医 宋美玄先生の生理だいじょうぶブック』『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』などがある。2017年に開業した丸の内の森レディースクリニックは日本屈指のオフィス街とターミナル駅に近く、近隣で働く人から遠方に住まう人まで幅広い層の女性が訪れている。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。


フェリシモ「gokigen Lab.(ゴキゲンラボ)」のCです。
今回は「こころとからだの関係」がテーマ。
皆さんは時々「自分でもびっくりするほど、何かにイライラする」ことがあったり、「わけもわからず落ち込む」ことがあったりしませんか?
そういうとき、私は生理前のことが少なくありません。
あとになってそれがわかると、「なんだ、そうだったのか! だからイライラしていたのか!」と納得できるのですが、イライラの渦に巻き込まれているときは、そんなこと考えられなくて……。
このこころの不調が生理のせいなのか、それとも違うのか、見分けがつかなくて、困ることも。
メンタル面の不調に悩んでいる人は、少なくないのでしょうか? 
アンケートで聞いてみました。

Q.生理前後などに「イライラ」したり「気分が落ち込んでしまったり」したことはありますか? 

アンケート 調査期間:2022年9月18日~9月25日 有効回答数12,832件


「ある」と答えた方、メンタルの不調をどのように解決していますか?

 

8割以上の人がメンタルに何らかの不調を抱えたことがあると聞いて、「自分だけではない」と少し安心しました。
とはいえ、不調があったときの相談先については、みなさん困っているみたいです。

【今回のお悩み】こころの不調は生理と関係があるんですか?

お客さまからもこうした声が寄せられています。

「年齢を重ねるにつれて、気分の落ち込みがひどくなってきました。これは生理と関係があるのか、ただの心配性なのか、いつも気になっています」

「生理の前はもちろんのこと、排卵日の少し前にも生理前と同じようにイライラすることが増えてきました。月に2回もイライラして家族に迷惑をかけるのが嫌です……」

「自分の症状が更年期なのか、持病のうつ病なのかわかりません」

そこで、女性のこころとからだの関係を、宋美玄先生に教えていただきました!

女性の「こころの不調」には、女性ホルモンがかかわっていることも多い

こんにちは、産婦人科医の宋美玄です。
自分の意志や予定とは無関係に、気持ちが上がったり下がったり、体調が変化したりするのって本当に困りものですよね。
そんなふうに私たちのこころとからだが左右されてしまうのには、「女性ホルモン」が大きく影響しています。
女性ホルモンは、女性のからだに多く分泌されている物質で、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類に分かれています。
エストロゲンとプロゲステロン、これら2つの女性ホルモンは、脳からの指令を受けて、卵巣から分泌されます。
そして、私たちのこころをウキウキさせ、肌も髪もつややかにして活動的にしたかと思えば、突然イライラさせたり、気持ちを落ち込ませたりもします。
そうやって、女性ホルモンによってこころとからだが影響されるのは、かなり迷惑ですよね。「やめてほしい!」と思う人もいるでしょう。
ですが、そこは裏をかえせば、「ホルモンさえコントロールしてしまえば、どうにかなる」とも言えます。もとは「ホルモンのせい」なのですから、低用量ピルや黄体ホルモン剤などの薬を使って適切な対処や治療をすれば、女性ホルモンに振り回されることが軽減されます。
毎月、月経周期に伴うこころやからだのつらさに悩んでいる人は、ぜひ一度、婦人科に相談してください。治療によって女性ホルモンを安定させると、こころも徐々に落ち着いていくはずです。

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From Lab. 編集部
「こんなにも自分のからだがホルモンに影響されていることを知って、目からウロコでした。知ることって大切ですね。生理になるタイミングでこころが不調になる理由がわかって、ちょっと安心しました」
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ライフステージ別、女性ホルモンがかかわるメンタル不調とケア方法

女性ホルモンのメンタルへのかかわり方は、女性のライフステージによって変化していきます。なかにはメンタルに不調が起きていることに気がつかず、思わぬ病気を招いてしまうこともあります。女性ホルモンが関連するメンタルの不調を、ライフステージごとに説明していきましょう。

■思春期~性成熟期

・思春期ブルー……女性の場合、8~9歳ころから17~18歳ころまでの、からだが変化して月経を迎える期間のことを思春期といいます。
この期間はこころのエネルギーが消耗しやすく、不安や恐怖、そして「生きていていいのかわからない」という無力感などにおそわれることもあります。そうした思春期のこころの状態を「思春期ブルー」とよぶこともあります。
思春期には、こころのつらさから解放されるために、自傷行為をすることも少なくありません。もしも、そのような状況になった場合は、カウンセラーなどの知識をもった専門家の力を借りて、少しずつ冷静に解決を試みることが大切です。

・月経前不快気分障害(PMDD)……月経の1週間くらい前から心身にさまざまな症状が現れるものの、月経が始まるとウソのように症状がなくなる現象を月経前症候群(PMS)といいます。
PMSの中でも、特に精神的症状が強く、イライラが止まらずに身近な人に当たり散らしてしまったり、気持ちが落ち込んで死にたくなったりする状態がPMDDです。ひどくなると、月経周期と無関係に症状が現れることもあります。
PMDDもPMS同様、医療機関で治療することで、ラクになることが少なくありません。思い当たる症状がある場合は恥ずかしがらず、ぜひ婦人科に相談してください。

■妊娠~授乳期

・マタニティブルーズ(マタニティブルー)……出産を終えた数日後~2週間くらいの間に生じることのある、気分の落ち込みなどの精神的症状のことをマタニティブルーズといいます。
ふとしたときに涙が止まらなくなったり、イライラしたり、落ち込んだり、または情緒が不安定になり、眠れなくなったりすることが多いです。
産後の女性の30~50%が経験するといわれていますが、出産とともに急激に変化する女性ホルモンの影響による一時的なもので、しばらくすると症状がなくなることがほとんどです。そのため、あまり心配することはありません。
ただし、なかには長引いてしまい、産後うつを発症することもあります。つらい気持ちがある場合は一人で抱え込まず、産後の健診などで助産師や産婦人科医に相談してください。

■更年期

・更年期障害……45~55歳くらいにあたる更年期には、女性ホルモンの分泌量が大きく減り、心身にさまざまな症状が現れます。そうした更年期に現れる症状が強く、日常生活に支障が生じるのが更年期障害です。
更年期は特に、エストロゲンという女性ホルモンが低下することによってやる気が出ない、人と会いたくない、イライラするといったメンタル面のトラブルが生じやすくなります。
自分なりのストレス解消法を見つけて、積極的にストレスを解消しつつ、それでもどうにもならないと感じたら、早めに婦人科に相談してください。

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From Lab. 編集部
「私は生理前にイライラすることがないので、ホルモンバランスの変動によるメンタルトラブルで悩んでいる人がいるのを初めて知りました。原因不明のこころの不調を感じたら、生理周期との関係をチェックしてみてもいいかもしれないですね」
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心療内科? レディース外来? こころの症状はどこに相談する?

ところで宋先生、メンタルの症状が現れた時には、いつも通り婦人科を受診していいのでしょうか? それとも心療内科や精神科を受診したほうがいいのか……。
どこに相談したらいいのか、そこでつまずきそうですが、どう考えればよいですか?

最近は女性のこころとからだの不調をまとめて診療する「レディース外来」などもありますね。相談先が多いことはよいことなのですが、多岐にわたるとかえって選ぶのが難しいかもしれませんね。それぞれの特徴について、まとめてみましょう。

・婦人科……月経の悩み、妊娠に関すること、子宮や卵巣の病気、性感染症、更年期障害など、女性特有の病気や症状を診るのが婦人科です。
女性特有の症状では、これまでもお話ししたように、精神面の不調が生じることも少なくありません。精神面の症状に女性ホルモンの影響はないか、それ以外に、からだに異常は出ていないかなどを診断する役割もあります。

・レディース外来……内科や外科、婦人科といった従来の診療科の分類にかかわらず、「女性」という大きなくくりで、こころとからだを総合的に診察するのが、レディース外来です。
「女性専門外来」とよばれることもあります。レディース外来では、働いているスタッフも基本的にすべて女性で、同性の専門家に安心して相談できるというメリットがあります。一方、設置されている医療機関が少なく、診療を受けにくいこともあるようです。

・心療内科……心療内科は、こころに関連する病気やからだの異常を診るところですが、心療「内科」とあるように、内科の一分野です。内科ですから、診るのは「からだ」。こころの影響によって、からだに現れている症状(医学用語で「心身症」といいます)を診療するのが、心療内科の役割です。
具体的には、ストレスによって下痢や便秘が起こる過敏性腸症候群や、ストレスが原因の頭痛、アトピー性皮膚炎などが、心身症にあたります。

・精神科……心療内科がからだを診るのに対し、こころを診るのが精神科の役割です。統合失調症、気分障害とよばれる双極性障害やうつ、認知症、睡眠障害などが、いわゆるこころの病気にあたります。
女性特有の病気のなかでは、PMDDの症状が強い場合、精神科と婦人科とが一緒になって治療することがあります。

そのほか、カウンセラーによるカウンセリングが行われることもあります。
これらの違いを見て、ご自身でどこに相談すればいいのかがわかる場合は、その診療科がある近隣のクリニックなどを受診すればOKです。
ですが、どちらかというと、診療科の違いを知っても「自分ではどこに相談すればよいのかわからない……」という人のほうが多いかもしれません。
その場合には、まずは信頼のおけるかかりつけの婦人科医に相談するのがよいでしょう。婦人科の医師から、必要な医療機関を紹介してもらえることもあります。

女性のこころの問題は、いろいろ複雑ですね……。自分だけで何とかできるものでもなく、女性ホルモンに左右されることもあるのでなかなか大変ですが、一人で抱え込まず、婦人科の先生にも相談して、少しずつ改善していけたらいいなと思います。


〈今回のPoint〉
・女性のこころの不調には、女性ホルモンが影響していることもある
・ライフステージごとに起こりやすいこころの不調は異なる
・無理せず医師に相談を。受診先がわからないときはかかりつけの婦人科医に相談してみよう


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