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野球を挫折した園部暁彦は、ある日、小学生が飛ばした紙ヒコーキを拾った。紙を広げてみるとそれは、百点をとった算数のテストだった。 1 手にした本をカウンターに置いた瞬間、園部暁彦は気怠そうにタメ息をついた。そのタメ息が俺に向けられたものでないことは分かっている。 座っているだけなのに、長時間労働をさせられたような疲れた顔で、園部は「ははは」と笑った。おかしくて笑ったのではない。どう見たって自分には似合わない場所にいることを嘆いているのだ。 図書室そのものが狭かった
後輩の女子生徒・木曽島蒼はなぜか毎朝、反対側のバス停に立って逆行きのバスに乗る。そして毎朝学校に遅刻するのだった。中学時代は遅刻なんて一度もなかった彼女がなぜ? 逆行きのバスに乗る理由は? 1 七時五十分。バスが来るまで、あと十分。僕は背負った鞄を肩から下ろした。通勤・通学ラッシュだというのに行列はなく、朝の慌ただしさなど欠片もない。地元のおばあさん一人と、観光客らしき若い男女が一組いるだけ。だから、バス停にはどんなにギリギリに来ても、二つ横に並んだ長いベンチに座れる余
いつも自転車通学している結城が、今日に限って自転車は家に置いてきたという。彼はふと、小学生が民家のブロック塀にあるものを置いた「目撃談」を語る。 1 ――ガガガガガッ! ――ガガガガガッ! 下校時間になるタイミングを見計らったかのように、近くで道路工事の作業が再開した。テスト期間中に道路工事は勘弁してほしいものだ。いや、それを分かっているからこそ午前中は工事をしていない。 現場監督には城和学園高校に知り合いがいて(一年生の図書委員)、この近所に住んでいる俺(
高校の夏休み。亜衣実は久しぶりに生まれ故郷に帰省し、初恋の幼なじみ天池美佐男と再会する。だが美佐男は、なぜか亜衣実が愛用していた「学習机」の話にこだわる。その真意とは? 1 開け放たれた窓から西風が吹きつけ、風車がカラカラまわった。車内に取りつけられたピンクや白や黄色の華やかな風車が、一両編成のローカル線にやさしい色合いを添えている。 中心都市を発って一時間。収穫前の青々と育った稲田が延々と続く。まるで同一画家による同じテイストの作品を見ているようだ。 無人駅、