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J-45の話

 J-45の話をちゃんとしてなかったのでしますか(挨拶)。

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 5,000文字くらい書いてたんですけど、なんかよくわからなくなってきたので書き直しています。なんか……自分の音楽のルーツとか、歌のルーツとかに脱線し始めて、超スペクタクルな自伝になりかけたので、それは別の機会に書けば良いんじゃない?
 ともあれギターです。アコースティックギター。J-45。
 画像の赤いギターがそれなんですけれども、まあ簡単にスペックを紹介しますと……メーカーは『Gibson』です。カタカナ発音で『ギブソン』というギターメーカーのギター。『アコースティックギター』というのは、簡単に言えば電気を必要としないギターですね。名前の『J-45』は、これは諸説あるんですけれども、『ジャンボシリーズの45$』という意味らしいです。2022年1月現在、1$が114円くらいですから、45$というと5,130円です。が! これは1942年に販売されたギターですので、当時の時代背景なんかをなんとなーく加味して計算すると、45$=18万円くらいに相当します。
 現行品のJ-45(僕が買ったものは2020年製)の値段が大体25万円くらいですので、まあ妥当な値段なんじゃないかと思います。発売以降、様々なチューンナップがなされていますから、多少の値上がりは仕方ないでしょう。

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 そもそもなぜこのギターを買ったのか、ですが。
 J-45というギターは超絶有名なギターなので、それなりに音楽に親しんでいる皆さんであれば、一度はこのギターを目にしている可能性があります。J-45には様々なカラーバリエーションが存在しますので、一見して「J-45だ!」と見分けるのは非常に難しいと思いますが、大体のミュージシャンが使っているギターは「J-45がD-28」のどちらかだと思ってしまっても、ほとんど間違いじゃありません。一例ですが、J-45を使用している、最近でもよく名前を聞く有名ミュージシャンを挙げてみます。

あいみょん、稲葉浩志、奥田民生、木村拓哉、桑田佳祐、斉藤和義、桜井和寿、福山雅治、藤原基央、山崎まさよし、星野源、井上陽水

Wikipedia-J-45

 多いですね。これでもほんの一握りです。日本国外問わず、痺れるくらい大勢のミュージシャンが、このJ-45というギターを使っています。
 僕もこのギターを知ったのは、上記したような有名ミュージシャンが使っているからでした。「あの人のアコースティックギターは何だろう?」ということが気になって、音楽雑誌を買ったり、バンドスコアを買ったりしては、使用機材コーナーを雑誌に穴が開くまで眺めたものです。僕が高校生の頃は既にインターネットは世の中に普及していましたが(2004年くらいの話です)、コンテンツが充実していたかというとそうでもなかった頃なので、ネットで「山崎まさよし 使用機材」とか検索しても、ちゃんとヒットしなかった頃ですね。なのでまあ、バイト代で音楽雑誌を買いまくる日々でした。
 そうして調べて行くうちに、僕が好き好んで聴いたり、コピーしているミュージシャンの大半がこの『J-45』を使っているということに気付きました。大人になるにつれて『J-50』『J-160』『J-200』『Southern Jumbo』『humming bird』などなど、様々なGibsonのアコギがあることを知るのですが(それらの方が上位機種なので値段が高い)、当時の僕は「プロはみんなJ-45を使ってるんだ!」と思い込みました。この思い込みは珍しくほとんど当たっているんですけれども、まあとにかく、当時高校生だった福岡少年にとって、このJ-45というギターは、憧れのギターになるわけです。

部屋撮りで色写りの悪いJ-45

 で、色々調べるうちに、J-45には様々な種類があることがわかります。あのー……一般的な、皆さんが想像するアコギって、多分茶色だと思うんですよ。茶色というか黄色というか。ギター界隈ではよく「サンバースト」という言い方をするんですけれども、そういうギター。ピックガード(上の画像だと白い部分)が黒くて、本体が茶色と黄色の混合色みたいな。あれが普通のアコギのイメージだと思います。
 が、僕はなんか、それにあんまり惹かれなくて……この歳になると、「サンバーストのJ-45かっけ〜!」みたいな気持ちにもなるんですけれど、当時ギラギラしていた僕は、あんまりそれが格好良く思えなくて。で、BUMP OF CHICKENの藤原基央さんが使ってるJ-45が格好良いなと思ったんですね。参考画像はこんな感じ。

Gibson Custom Shop【1960's J45 ADJ】

 黒! 白!
 シンプルにカッコいい!
 もうこれを買うっきゃねえと。当時の僕も、島村楽器で作っているJamesというブランドのエレアコを持っていたんですけれど、次にアコギを買うなら、絶対にJ-45の黒ボディにしようと心に決めたんです。当時から20万円以上の値段だったので、金を貯めていつか買うぞ買うぞと思いながら、ノートの端に「J-45」と名前を書いたり、この特徴的なラウンドショルダーボディを描いたり、暇さえあればインターネットで「J-45」について調べていたりしました。今とやってることが変わりませんね。
 そんな風にして日々を過ごしているうちに、僕は今回自分で買った、ワインレッドカラーのJ-45の存在を知るんですね。

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 ちょっと話が脱線しますけれども、僕はこの「有名ミュージシャンはみんなJ-45を使ってるんだ!」ということに気付く前に……時期的には高校1年生の10月頃に、1本エレキギターを買ってるんです。Gibsonの、レスポールスタジオ、というギターです。参考画像はこちらです。

ステッカーはASIAN KUGN-FU GENERATIONの『ファンクラブ』

 見た目に一目惚れして買ったギターです。ちなみに写真は所有品です。
 このギターを買った時に、「うわあ! この世にこんなに美しいギターがあるのか!」と思って、金もないのに親から金を借りて、そのまま人生初のアルバイトを始める、という、超特急な人生を歩んだ過去があります。そのくらい、当時の僕には衝撃的なギターだったんですね。もう、この、ワインレッドというカラーリングが、あまりに美しかった。大人になってギター知識が増えた今考えると、この『レスポールスタジオ』というギターは、いわゆる『廉価版』のギターで、様々な装飾を削ったり、木材もちょっとレベルの落ちる物を使用して、出来るだけ値段を抑えたギター、という感じでした。カラーリングもブラックとワインレッドの2色展開なんですけれども、これも「杢目がそこまで綺麗じゃないから、濃い色で塗装することで目立たなくしている」ということらしいです。まあでもそんなことはどうでもいいくらい、僕はこのギターに惹かれました。それ以来、このギターは永遠に愛機として使用し続けています。

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 そんな経緯のある僕が、高2になってしばらくして、J-45にも同様のワインレッドカラーがあることを知るわけです。買わざるを得ん、となるのが心情というものでしょう。
 なんですけれども、うーん……今は割と出回っているし、インターネットでも検索出来るのでそうでもないかもなんですが、このワインレッドカラーのJ-45、いわゆる「レアカラー」らしいんですね。上記したブラックボディのJ-45とワインレッドカラーのJ-45は、1960年頃に発売されたものらしいんですけれども……なんかワインレッドカラーは非常に本数が少なく、現在でもヴィンテージ物だとかなりのレア物らしいです。1970年代くらいまで流通して、それから一時期、このブラックとワインレッドのJ-45は製造されなくなるんですが、2000年頃にまた復刻して……人気の高さからか、最近はちょくちょく日本で売られているのを見ます。見ます、なんですが、それでもやっぱり黒のJ-45が多くて、ワインレッドのJ-45ってほとんど見ないんですよ。
 もちろん、当時高校生だった頃にはネット販売ですら見かけませんでした。ヴィンテージ品は愚か、現行品も売ってない。もし入荷したとしても、すぐにSold outしてしまう。当時、2回くらい現行品のワインレッドカラーのJ-45をネットで見つけたことがあったんですが、見つけた時には既に売れてるか、交渉中でした。だからまあ、なんて言うんですかね、「金があっても買えない」ものだったんですよ。僕の人生は、この手の「金があっても買えない」ものを手に入れるために動いているような気さえします。あと僕はヴィンテージ志向のギタリストではないので、ギターはなるべく現行品を買おうとしています。理由は単に、技術が進歩しているから。

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 そんな風にJ-45への憧れを抱いたまま、高校を卒業して、ニートになり、フリーターへ進化して、会社員になり、結婚して、地元を離れて、離婚して、なぜか都会に留まり……現在は横浜在住なんですけれども、まあ普通に暮らしていたんですね。紆余曲折ありながらも、平々凡々に暮らしていました。高校卒業後は、「将来は作家になりたいなぁ」なんて夢を抱いて小説ばかり書いていたので、J-45への憧れは、憧れとして、胸に秘めて暮らしていました。
 で、なんの因果か……あのう、また話が脱線するんですけれども、僕の兄も音楽をやる人間なんですけども、基本的にはドラマーなんですけど、2018年くらいに何故かギターを買いまして。で、ギターも弾くようになったんですね。本職ではないのでそこまでプレイスキルがあるわけではないんですけれども、まあ普通にコード弾けたりという感じで。で、兄貴の方が僕よりよっぽどいろんな曲を聞く人なので、いろんなギターや、音作りに興味を持ったようなんです。今は2本ギター持ってるのかな? まあ普通に弾いてる人なんですよ。
 で、2021年の1月末頃、兄貴が仕事の関係で東京に来る用事がありまして。上記したように僕は横浜住まいだったので、兄貴が泊まりに来たんですよ。兄弟仲が良いので、「仕事終わった! 飲みに行こうぜ!」みたいな感じで。で、僕の家でだらだら酒飲みながら、「せっかく都会に来たことだし、楽器屋にギターを見に行きたい」と兄貴が言い出したんですね。
 僕はその当時、もうギターは今持ってるギターでいいや、みたいな気持ちになっていて。もう15年以上弾き続けていたギターでしたし、体に馴染んでいたのもあって、新しいギターを買う気なんてさらさらなかったんですよ。ていうかもう、「このエレアコと一生を添い遂げよう」みたいな気持ちでいて。高校入学祝いに親に買ってもらったギターだったんですけれども、学校に持って行って弾いたり、コンサートに出たり、路上ライブをしたり、レコーディングをしたり、作曲のお供になったりと、もうずっと一緒にいたギターだったので、こいつと添い遂げようと、マジで、思っていたんです。嘘でもなんでもなく。俺はもう、こいつと死ぬんだと。死ぬときは俺をこいつのハードケースに入れてくれと。マジで思っていたんです。

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 翌日、兄貴と一緒に横浜にある楽器屋に行ったんです。
 兄貴がギターを見る、というのがメインの回だったので、僕はまあ、「最近の楽器屋はどんなもんかしら」みたいな気持ちでギターを眺めつつ、楽器屋の奥にある、アコースティックギターコーナーへ向かったんです。大体、広めの楽器屋って、アコースティックギターは別部屋に置いてあるんですよ。多分、生鳴りを確認しやすいように、という配慮だと思うんですが。
 で、そのアコースティックギターコーナーに行ったらですね、その……あったんですよ。高校生の僕が夢見た、J-45のワインレッドカラーが。「え!?」と思って。「嘘!?」って。あると思わないじゃないですか。いや、あるはずないんですよ。あるはずないのにあるんですよ。「なんで?」と思って。もう、不思議で仕方なくて……よくわかんなくなりながら、店員さんを呼んで、「あのう、これ試奏したいんですけど……」って気付いたら言ってたんですね。よくわかんないまま、憧れのJ-45を手にとって、「うわ軽!」って思って。で膝に抱えて、「うわボディがでけえ!」と思って。で一発ジャーンと弾いたら、ああ、もうどうでもいい、どうでもいいや……何もかもどうでもいい……という気持ちに、なったんですね。

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 気付いたら25万円を下ろして、買っていました。
 なんかその……運命的な話というわけじゃないですけれども、そのJ-45、そもそも値札が貼ってなくて。聞いたら「今日昼頃入荷したばっかりなので、お客さんが最初の試走ですよー」とか言われて、こ、これが運命か……とか、そんなことを思ってしまって。とにかく鳴りも良いし、弾いてて気持ち良いし、不満が一個もないというか。
 たくさんのミュージシャンが使ってるギター、と書きましたけれども、このJ-45っていうギターはなんか、音がでかいんですよ。ギター本体が大きいということもあって、単純に音が大きく鳴る構造になってる。加えて、なんというか……煌びやかな音がするんですね。ガキみたいにジャンジャカかき鳴らすのが似合う、シンガーソングライター向けなギターなんですよ。アコギ1本で歌う、みたいなミュージシャンに愛されているのも、それが所以だと思います。こいつ1本でなんでも出来るみたいな気持ちにさせてくれる。
 だからもう、兄貴がギター見に来たはずなのに、気付いたら僕がJ-45買ってて、それを持って帰宅しました。昨日の夜までは「こいつと一生を共にする!」とか言ってたはずのギターと弾き比べて、「いや……すまん……J-45だったわ……」みたいな。浮気者ですね。最低です。いや違うんですよ。若くて可愛いギターが欲しかったわけじゃなくてですね、元々こいつが欲しかったんです僕は。ずっと欲しかったんです。でもまあ、いいかなー……今あるギターでいいかなー……と思ってたところに、急に現れたもんですから、「あーごめん! 俺、こいつと暮らしていくわ!」って感じになって……何を言っても無駄ですね。何を言ったところで僕は浮気者です。ごめんなさい。僕が全部悪いです。慰謝料は払います。でもとにかく、ひょんなことから僕はJ-45との出会いを果たして、初めて会うはずなのにものすごく懐かしい感じがしたりして、なんか勢い余って、買ったのでした。

サウンドホール内のステッカー

 上記を見れば一目瞭然かと思いますが、1960年製のJ-45を元にしたモデルであり、2020年12月21日の18番目に製造されたギター、であるということがわかります。
 全人類の99%は画像を見ればすぐに判別出来ると思いますが、稀有な存在である1%の方に説明すると、なんかこのシリアルナンバー、1桁目が西暦の10の位、5桁目が1の位らしいです。23560018なので、2020年製。356の部分はその年の日数ということなので、12月21日。最後の018は製造本数ということなので、18本目のギター、ということになるようです。さすがの僕も暗記は出来ていないので計算しないと判別出来ませんが、そういうことらしいです。
 なのでまあ、2021年に買ったギターですが、2020年製のギター、ということになります。買ったのが2021年1月30日だったので、本当に作られてすぐに海を渡って日本に来て、その日に売れたギター、ということになりますね。まーとにかく嬉しくて、1年近く経過した今も、暇さえあれば弾いています。流石にアコースティックギターをジャンジャカ弾いたら近所迷惑な気もしますから、休日の昼間とかしか激しくは弾けませんけれど……なんかやる気出ないなー、とか思った時は、脇に抱えてポロポロしている感じです。

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 どっかに記録としてJ-45を買った話を残しておこう、と思って書いたら、思ったより長くなってしまいましたね。
 ともあれそんな感じで、僕は人生の目的とも言える「金があっても買えない」類の欲しいものをひとつ、1年前くらいに手に入れてましたよ、というお話でした。
 こいつは現金即決で買ったのでもう支払いは済んでいるんですが、うーん……まあ多分、ギターなんて一生弾き続けるだろうから、32歳のうちに一生物を手に入れられてラッキーだったかな、という気持ちです。人に歴史ありというか、まあ長く使ってるから偉いってわけでもないんですけれども、前述した『レスポールスタジオ』みたいな長きに渡って使っているツールがあると、昔を懐かしんだり出来ますし、思い出が染み付いているから嬉しくなったりして、なんか……いいもんだな、と最近しみじみ思います。
 断捨離人間が言うのもなんですけれども、過去を共有出来る道具があるってのは、なかなかいいもんだよなと。
 だからこそ、長持ちする良品を買いたいと思うのかもしれませんが。メンテナンスすれば一生使える物が好き、という話かもしれません。
 まあそんなわけで、つらつらとJ-45駄話をしてみました。
 またなんかの機会に、今度はES-355について日記を書こうかと思います。
 そんなわけで以上! 永遠のギター少年でした。
 また次回!

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