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仲間はずれのリンゴ

脇目に草原がうかがえる有料道路。
青い空と、草原の緑、アスファルトの一筋に伸びる黒みがかったグレー。
単調な景色が続き、退屈に感じる中、
無人販売所のリンゴを買った。
退屈な景色の中に突然放り込まれた赤は
景色に交わらない。
ただただ、私の手の中にあった。
それは孤独で、蠱惑的で、魅力に溢れる赤色。
宇宙の中にあるこの地球がリンゴだったらと妄想する。
引力に逆らうように宙に浮くリンゴはあるだろうか。
宇宙の中にある孤独に、地球の中ですら孤独なリンゴ。
理解できない地球の、理解できない物理法則があるリンゴ。
自分の理解から離れて、不規則なくせに
規則的な動きをするリンゴ。
それに対して、単調で規則的で記号的な空と、草原と道路。
くっきりと色があり、色が重ならない中、
白昼夢を見ていたようで、
再度エンジンをかける。
知らない土地の、知らない明日の方へ向けて。

お題『草、車、リンゴ。三つの素材を使って何かを作る。』ハン@世界を旅するお弁当様

【後書き】
Twitterに投稿したものを手直ししたもの。
景色に交わらないリンゴにあれこれ想像する。

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