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生保受給者の部屋探し③

上の2つの記事からの続きです。
独身ひとり暮らし女性、そして生活保護受給者、そんなわたしがどうやって住まいを探したのか?
続きをどうぞ。

  1. 住みたい部屋の条件を洗い出す

  2. 福祉課に地域の不動産屋を紹介してもらう

  3. 住みたい部屋の条件を不動産屋に共有する

  4. 賃貸情報サイトを片っ端から閲覧する

  5. 見つけた物件は不動産屋に伝えて、現状を確認してもらう

  6. 内見は遠慮しない

4.賃貸情報サイトを片っ端から閲覧する

わたしが今住んでいる部屋は、ウェブに掲載されていた物件だった。
賃貸情報サイトというと「すでに埋まっている物件ばかりが掲載されている」「問い合わせをすると希望の物件の代わりに悪条件な物件や高価な物件をゴリ推しされる」などのイメージがあると思う(なにしろわたしはそう思っていたし、実際そういう目に遭ったこともある)。
しかし粘り強く探すと掘り出し物が見つかることもあるのだ。
なにより間取り図や写真があると、自分が選択した条件の部屋がどういったものなのかイメージしやすい。
やっぱりこっちはなくても我慢できる。
これはそんなにこだわる必要ないな。
こっちのほうが自分には重要かもしれない。
これをナシにしてあっちをアリにしたらどんな部屋になるんだろう?
そういった具体的なイメージがしやすいのは、賃貸情報サイトの強みだ。

今時、賃貸情報サイトを一度も見たことがないというひとはおそらくいないと思うが、閲覧の仕方がイマイチ分からないという知人もいたので、ひとつの例としてわたしの閲覧の仕方を書いてみる。
「地域」「家賃」「専有面積」の3つを指定して物件を検索し、出てきた検索結果一覧を「専有面積が広い順」に並べ直してから閲覧する。

  • 地域:保護を受けている区や市。「北区」とすることもあれば、利用したい駅を指定して「赤羽駅」「十条駅」とすることも。区が同じであれば、近隣3駅くらいまでは同時に指定する。

  • 家賃:上限60,000円(管理費・共益費込みにチェック)都心の単身者の住宅扶助は53,700円だが、わたしは60,000円くらいまでで探していいと言われていた。

  • 専有面積:下限25平方メートル(これは個人的に我慢できる広さの下限)

検索結果を広さ順に並べ直してから閲覧すると、比較的条件のいい物件が上位に浮かんでくるので、個人的にとても探しやすい。
賃貸情報サイトに掲載されている物件で良さそうなものがあったら、物件の情報を控えておいて、協力してくれるA不動産に伝えるようにしていた。


5.見つけた物件は不動産屋に伝えて、現状を確認してもらう

管理会社に直接連絡すると即座に「生保受給者はダメ」と断られてしまうので、協力してくれるA不動産を介して物件の現状確認をしていた。
これによって、素っ気ない門前払いに遭うことは激減した。というか、素っ気ない対応や露骨な差別偏見に晒される機会が減った。些細なことのように感じるが、自分の置かれている状況を直接、露骨に、否定されるというのはショックなものだ。そういった機会は少ないに越したことはない。

なにより、生保受給者というだけでスタートラインにも立てなかったのが、間に身元のはっきりしている者が入ることで、少なくとも聞く耳を持ってもらえるようになったことは大きい。
A不動産の話によると、大家や物件所有者の意向とは関係なく、問答無用で「生保受給者には部屋を貸さない」と決めている管理会社もあるが、まったく逆に「大家を説得してみる」と言ってくれる管理会社もあるそうだ。
生保受給者に対してぼんやりした偏見だけを持っている大家や物件所有者もいるので、そういった相手に「このひとは大丈夫そうだ」と説明してくれるのだという。

誰が間に立とうと「生保受給者はダメ」と言われる時は言われるので、不安がすべて解消されることはない。それでもまずスタートラインに立って話を聞いてもらえるようになるというのは、大きな一歩だったし、ほとんどそれがすべてだった。

わたし個人は、貸主と借主が対等な立場で直接交渉を行えないことは、実に不便で不健全だと感じる。
とはいえ、不動産業界から生保受給者への差別的な眼差しがいきなり変わることはないので、管理会社や大家への問い合わせは協力者にお願いした方が無難といえるかもしれない。


6.内見は遠慮しない

「服屋で試着をしたらその服を買わないといけないような気がして、試着しづらい」という友人がいた。
なんだか少し分かってしまう。
わたしも昔は「内見までした部屋を「やっぱりいいです」といって断るのは気が引ける」と、思っていた。
これまでの引っ越しでも、内見というのは管理会社の人間からもっとも圧をかけられているように感じる瞬間だった。
契約することを前提で部屋を案内されるし、ほかの客が狙っているから急がないとなくなってしまうと脅される。あからさまな時には、わざわざ目の前で会社に電話をして「ここ決まりそう?あー、やっぱり?」という会話を聞かせられたりもした。
A不動産が同行してくれた内見ではそういったことは発生せず、とても落ち着いて部屋を吟味することができた。
部屋の広さ、湿気、隣からの音漏れ、扉の建てつけ、コンセントの位置、雨漏りがないかどうか…
もちろん、いい物件は引く手あまたであるから、実際にわたしが内見した3件のうち1件は、諸々の確認を待っている間に別のひとで契約が決まってしまった。
それでも幸運なことに、第一希望だった物件は誰の手に渡ることもなく、現在わたしの住まいとなっている。

内見したからといって必ずその部屋を借りなければいけないなんて決まりはないし、借りるか分からないのに内見するのは気が引ける…などと遠慮する必要はひとつもない。
この先年単位で暮らすことになるであろう住まいなのだから、できるだけ細かいところまでチェックし、他の物件とも比較して、よくよく吟味して決めたほうがいい。
わたし達にはみんな、自分が家賃を払って暮らす部屋がどんなものなのか、事前に確認する権利があるのだ。
それはもちろん、生活保護受給者だって同じだ。


終わりに

先日、お世話になったA不動産の方に久しぶりに連絡を取った。
生保受給者だけでなく、高齢者、障碍者、外国籍の方などの住まい探しにも協力しているとのことだった。
福祉課からもたびたび協力要請の連絡が来るが、生保受給者を含む社会的弱者に貸してもいいという物件は少なく、なかなか対応しきれずにいるという話だ。

この一連の記事を書きながら、「なぜ社会的困窮に陥っている者が、住まい探しという基本的かつ重大な課題に際して大きな差別にぶつからなければならないんだ?なぜ公的なバックアップがこんなにも貧弱なんだ?」と、考えないではいられなかった。

「生保受給者のお部屋探しは、まず福祉課で協力的な不動産屋を紹介してもらうといいでしょう!」
これを書くことの馬鹿馬鹿しさに、どれくらい逡巡しただろう。
住まいを探す生保受給者に対して、役所が即座に無条件で不動産屋を紹介できたらどんなにいいだろう。けれど、そんな不動産屋はめったにいないのだ。いないから紹介しようがないのだ。
そして、受給者はなんのツテもないまま自力で部屋を探すことになり、無碍にされて途方に暮れる。

わたしが今の住まいを獲得できたのは、一にも二にも幸運だったからに他ならない。
福祉課からA不動産を紹介されたことも幸運ならば、転宅が決まるまで宿所提供施設にいて家賃がかからなかったことも、部屋探しを焦らずにいられたので幸運だった。
生保受給者の居住に寛容な方がわたしの希望する物件の大家だったことなど、大幸運だったといえる。
正直、それらをこうして羅列して書いて、一体なんの意味があるんだろう?と、むなしくなる。
福祉課が非協力的だという話や、協力者を得られないのでひとりで部屋探しをして途方に暮れているという話を聞くにつけ、とても腹が立つし、やるせなくてなる。
一体なぜそんな扱いを受けなければならないんだ?

わたしは生保受給当事者として生保受給者の誰もが、偶然の幸運などではなく、不当な偏見に晒されることもなく、健全な部屋探しをすることができて、それぞれの生活にあった住まいと出会ってほしい。
そう願わないではいられない。

わたしが出会った幸運の一端が、これから住まいを探そうとしている生保受給者(あるいは生活保護を受給しようとしているひと)にとって、なにかしらのヒントになっていれば幸いだ。


グダグダと長くなってしまったけれど、今回はこのへんで。
では、また。


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