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待っていた現実と体験談

 介護に興味を持った経緯

 高校卒業してすぐに就職するも、父方の母親が骨折で入院。右半身麻痺の祖父を家に一人にしておく訳にはいかないので、仕事を辞めて介護に入ることとなる。食事はまだ自身で食べられるような人だったが、排泄は失禁すれば下着や服を交換しては洗い、お風呂は特に注意を払い怪我だけをさせないように最低限のことしか行わなかった。

そもそも、どうして介護業界に転職したのか?

 施設警備員を辞めてから人の役に立てるような仕事に就きたいと考え、興味があった介護業界に飛び込んだ。祖父母の介護経験もあったのも理由のひとつである。同時に警備の仕事で人命救助を経験したのが転機であり、元々お年寄りと話すのが嫌いではなかったので転職を決意した。

短期入所型施設(ショートステイ)に配属

 私が配属されたのはショートステイと呼ばれる部署。最短1泊2日~最長一ヶ月を超えるご利用者様が基本。しかし、家族の事情や有料・特養に入所するまでロングを希望される人も少なからずいた。入社したての私は右も左も分からないまま、教育をしてくれる先輩について仕事をするも様々な悩みや現実に苦しむことになる。

仕事場の現状

 まず、誰でも最初なため戸惑うのは当たり前であるが、介護業界の人手不足と退職する理由を思い知る。私の勤めた施設にはマニュアルなんてなく、教育する職員達も独自の解釈とやり方があった。言ってしまえば個人スタイルが強く、前の人に教えて貰ったことを実施しようとすれば注意されるなど教育方法が統一されていなかった。そして、利用者さんの性格も一癖二癖ありコミュニケーションを取ろうにも上手くいかず。認知症の方と初めて関わった時は、同じことを繰り返したり、急に帰ると怒りだしたりなど理解できないような光景に眩暈を覚えた。癖がある人には声の掛け方や対応にもこだわりがあり、一つ間違えれば怒られるし他職員に言いふらしたりもするなど精神的に追いつめられることが連続で続いた。

理想との違いに挫折する

 私は精神的にも肉体的にも限界が来ていた。覚えることは山積みなのに人手不足もあって、教育も中途半端で放置される。利用者さんで手一杯なのに職員との人間関係も容赦なくのしかかった。新参者からしてみれば出来上がった輪に入りにくく、何か話しても反応が薄いので暫くは喋ることをしない日も多々あった。私は転職したことに大きな後悔を抱く。自分が入社する前にイメージしていたのは、お年寄りと落ち着いて会話をしながら出来ない部分だけを介助すると認識していた。しかし、現実は失禁は日常茶飯事、ティッシュや異物を口にしたり、暴言に暴力など甘い理想を抱いていた自分が馬鹿だったと改めて思い知らされた。

給料と仕事内容の差

 同時に給料も読者の皆様が思っている通り少ない。不穏になって歩き回る人の横に付いて一~三時間付きっ切りなんて当たり前。気難しい人や認知が強い人による暴言や暴力で精神的にも肉体的にも傷つき、怪我や転倒があれば事故報告書も書かなければならない。一発で通ることなんてなく、主任の価値観に左右されて何度も書き直しをすることもざらにあった。その他にも職員同士の陰口に頭を悩ませ、自分が標的にされないように表面上でも愛想良くするなど利用者さん以上に気を遣う。これだけ、大変なのに給料は少なく職務改善手当も施設の稼働率で変動し、先月多くても次の月で少ないなんていくらでもあった。

四年半続けたが退職を申し出た

 四年半勤務したが、潰瘍性大腸炎の症状もあり辞めることを決意。どちらかと言うと勤めていた所の方針に付いていけなかった。職員の負担は増すばかりで改善手当も減る一方だし、真面目に仕事をしていたのに陰口や嫉妬から確信のない報告をされて怒られ、理にかなったことを言えば怒られることにもう耐えられなくなった。利用者さんの状態も重くなるばかりで、改善を提案しても応じてもくれず此処にいる意味を見いだせなくなった。介助以外にも利用者さんを第一に考え、環境を整える仕事をしていたのはいつも一人だった。正社員とは? ベテランのパートさんとは? 他の職員への愚痴・私語が耳障りになり辞める決心をした時は、肩の荷が降りたような気がした。いつも仕事のことばかり考えては朝早くに起きるようになり、ろくな睡眠も取れないことも多々あった。

これから介護業界に入る方へ

 貴方がこれから、介護業界に入るなら明確な目的や正しい知識を得てから入ることをすすめる。正直言うと、利用者さんに暴力を振るう職員は最低だと思うが気持ちはわからなくもない。若い人がこの人達を支えていく必要が本当にあるのかと、仕事をしているうちに何度も考えることはあった。人に役に立つ仕事は他にもある。自分には介護しかないと諦める必要はない。自分の能力を見直せば、介護以外の道を切り開けるかもしれない。それでも介護に入るなら人間関係に振り回されず、余計なことやプライベートは話さず黙々と仕事をこなすことをおすすめするが、そこは個人の自由なのでどう選択をしようが止めはしない。


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