見出し画像

【#チームえぞオフィス】生産性向上から”三方良し”へつなげる!デジタル活用セミナー レポート

えぞ財団が目指す「こんなもんじゃない北海道経済を創る」。
その実現に向けて現場視点で多様な働き方・価値観醸成に繋げるアクションを具体的に展開するプロジェクト、それが「チームえぞオフィス」です。

1128えぞオフィス説明

※えぞ財団についてはこちらから

チームえぞオフィスではその取り組みの一環として、道内企業や道内に事務所を持つ企業経営者、働く社会人向けに情報提供を目的とした無料セミナーを行なっております。

このたびDX・デジタル活用をテーマとした「生産性向上から”三方良し”へつなげる!デジタル活用セミナー」を2021年7月20日に開催致しました。

えぞオフィスイベント

今回のデジタル活用セミナーでは、DXを「わかる!」「使える!」ことを目的に、その第一歩をわかりやすく解説することをモットーに実施しました。
当日は平日の夕方にも関わらず、沢山の方々に参加頂きました一方、「仕事が忙しい。」「緊急の予定が入ってしまった。」等で参加できなかったという声も伺ったことから、イベントレポートとしてお話した内容の一部をご紹介致します。
皆さんの今後のお取組みに少しでもお役に立てれば嬉しいです!

顔写真

【登壇者】データドリブンパートナー 山口 将太
北海道札幌市に生まれ、大学卒業以降、主に営業職とコンサルティング職に従事する。人材サービス、IT総合機器メーカー、アナリティクスソフトウェアメーカーを経て、現在はコンサルティング会社に所属。専門は企業のDXとデータ活用支援。特に、デジタル上では必ず蓄積されるデータをいかに価値あるものにするか?をテーマに邁進する日々を送っている。

画像4

【ファシリテーター】守屋 賢史(NeX株式会社 代表取締役)
大学卒業後、人材サービス会社にて営業職や営業マネージャーに従事する。
2018年より人事・組織コンサルタントとして開業、2019年よりNeX株式会社を設立し、人事制度設計、評価制度運用コンサルティング、研修教育体系の提案・構築・研修講師や新卒採用コンサルティング等を実施し、組織と人財の活性化に貢献をしている。

1.セミナーのコンセプト(何を根底に企画したのか?)

このたびのセミナーのタイトルである「生産性向上から”三方良し”へつなげる!デジタル活用セミナー」からお気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、”三方良し”という経営哲学を土台として企画しました。

”三方良し”とは、江戸時代から明治にかけて活躍された近江商人の経営哲学です。
「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」と定義されています。
日々ビジネスの中で、心から満足した時には、ありがとう。という言葉を自然と発するケースがありますよね。
商売の当事者のみならず社会を含めて「ありがとう」の連鎖を起こしていきたい!循環構造を作りたい!そんな思いを企画段階から大切にしてきました。

そして、DXとはIT・テクノロジーの力を有効活用し、その循環構造をより良いものにしていくものだと考えます。商売に関わる皆が、最終的に「ありがとう」と言える。そのために、今やかかせないDXというビッグワードを紐解き、わかりやすくお伝えすることを意識しました。

画像5

2.DXの定義とは?

まずはDXを語る上で、その定義をおさらいしました。
広義では「ITで世の中を良くする!」
狭義では「テクノロジーを使い、事業を良くしながら、根底からの変化にも挑戦する!」といった意味合いになります。

ビジネスでは狭義として扱われているケースが多いですよね(ビジョンやメッセージとして広義が使われるケースもあります)。意味合いで注意頂きたいのは、ただテクノロジーを使えば良いというわけではなく、「テクノロジーを使って事業も良くするし、根底から変えられるものもこの際変えていきましょう。」という点です。

単に「テクノロジーを利用しました!」や「利用してます!」ではDXの実現とは言い難いです。企業としては収益につなげること、競争で優位性を築くこと、などを最終的なゴールとしていく必要があります。

画像6

3.日本でDXが必要とされる理由

DXに向けた取り組みが世界的に広まっていますが、日本ではなぜ必要とされるのでしょうか?
当然、大義名分的な理由があるのですが、ここでは国内からの影響と国外からの影響に分けて、それぞれご紹介します。

国内からの影響による1つ目は「生産年齢人口の減少」です。
少子高齢化によって働ける人がどんどん減っていくため、「一人当たりの生産性(=効率よく働いて稼げる力)を高めましょう」というもの。
このままのペースで人口が減っていくと、2060年には生産年齢人口数(=働ける人の数)が、45.9%も減ってしまうそうです!現在の約半分近くと聞くと驚きますし、危機感がありますよね。

2つ目は「量ではなく質での競争へシフト」です。
「特定のものをたくさん作って、激安で沢山安く売る!という価格主体で勝負する機会は減っていきますよ。」そのため、「1人1人に向けたサービスを提供することで、需要を喚起していきましょうね。」というもの。
人口が1億人もいるのに、1人1人のサービス提供を実現することは難しいことですが、既に色々な業界で取り組みが進んでいます。

さて、国外からの影響による1つ目は「競争原理の変化」です。
これは、「業界の垣根がなくなりつつありますよ。井の中の蛙だと大海からやってきた黒船に襲来されて、市場を根こそぎ奪われてしまいますよ。」というものです。
具体的に、iPhone等で有名なアップル社の例を引用すると、アップルは現状自動車業界にいつでも参入出来るという状態です。アップルはOSの開発、デバイスの開発、スマホ普及と成長してますが、強さの源泉はiOS(アイオーエス)であり、それを軸にさまざまな産業に参入しています。

それに対抗する場合、単にものづくりをするのではなく、サービス全体の仕組みから作らないと、その仕組みを押さえられてしまう可能性があります(iOSに乗っかるかどうかの議論はありますが)。このように、単に一つの構成要素で競争するのではなく、その競争範囲が広まっている現状があります。そのことに常にアンテナを立てながら、変化に対応していかなくてはいけません。

2つ目は「産業構造の変化」です。
最もイメージが付きやすい例として、例えば市場の変化に対応すべくトヨタがガソリン自動車の製造を止めたとしたら、トヨタの下に数多と連なる下請け業者が路頭に迷う可能性があります。
これまでの説明の通り、競争原理が劇的に変化していく時代に突入しており、コモディティ化された製品群の一部に依存したビジネスモデルは高リスクと言われています。これは単に自動車業界のみならず、様々な業界で言えることであり、変化に対応していく必要があります。

このような影響はテクノロジーの進化から生じている部分が大きいです。私たちの日々の生活から捉えると、単にサービスとして便利さを感じながら使うケースも増えてきています。一方、それを自ら使いこなすハードルも下がっており、テクノロジーという武器を自社の収益向上につなげていくことが以前より容易になっていることから、積極的にその武器を使い、変化に対応していくことが大切なのではないでしょうか。

画像7

4.DXの事例

DXの事例はグローバル・ローカルの両面よりご紹介しました。
グローバルの事例では「ネットフリックス」社の例を上げました。皆さん、ネットフリックスは使われていますか?
使われている方はその仕組みについてピンとくるかもしれません。(ネットフリックスではなくても、アマゾンプライムやディズニーチャンネル等の動画配信サービスも同じような類ですので、イメージの参考になればと思います。)
以下のスライドはネットフリックスが提供している価値のサイクルをイメージしたものです。

画像8

ネットフリックス社が目指すところは、ユーザーに自社サービスを沢山かつ持続的に使ってもらうことです。そのためにユーザーの満足度は一定以上で保たれている必要があります。(そうでないと、契約を止めたり他社サービスに切り替えたりされる)
そのためには、ユーザーが価値を感じることのできる③「レコメンデーション」が充実している必要があります。
レコメンデーションとは「おすすめ」機能です。ユーザーの利用データを活用することで、一人一人の趣味趣向にあった映画やドラマをおすすめできるようになり、ユーザーは興味を持つことで、様々な動画を観るようになります。ここが正にデジタルを通して価値提供のレベルをぐっと押し上げている点です。

もう少しイメージをしやすくして頂くための参考例として、映画・ドラマ等の動画サービスを展開している、「ツタヤ」や「ゲオ」のDXDレンタルを上げさせて頂きます。
DVDレンタルを利用する場合、ユーザーは店に行き、最新作や自分の興味あるジャンルから作品を探しますよね。この状態はユーザーに購買(レンタル)の選択を委ねていることになります。
能動的に情報を取っていける人は、頻繁に店舗へ行き、好みの作品を探し続けられるかもしれませんが、そうでない人は気になる作品をいくつか購買した後は満足していまい、その先は不定期な利用(気になる作品情報をキャッチした際の利用など)に留まってしまいます。そうすると、一人のユーザーから得られる収益にばらつきが生じますよね。店側は、定期的に来てくれる人(=常連さん)に合わせた作品を集めて陳列させていくため、益々常連さんよりの作品が並んでいく。
こうなってしまうと、収益の大半は常連さんに頼ることになり、新規客の収益割合はいつまで経っても上昇しないことになってしまいます。(もちろん安定的な収益基盤として常連さんを固めていくことは重要です。)

一方、「ネットフリックス」の場合、既に説明の通り、全てのユーザーに対して興味を持つであろうタイトルをどんどんおすすめしていく提案型です。
ユーザーは自分が好む作品をいつでもどこでもチェックして、すぐに観れるようになるための仕組みを作ったことで、新規客→常連さんという流れを全てのユーザーを対象に実現出来るようになり、常連さんはどんどん増えていくアプローチが可能になりました。
また、おすすめをする場合はユーザーを知る必要があります。そのためにユーザーの情報(性別・年齢層・好きな映画など)が無くてはいけません。そのために必要なものは「データ」です。ここでは詳細を活用しますが、ネットフリックス社は
データを蓄積するための箱から、データを使うために加工する道具、データ分析・機械学習の手法など、様々なテクノロジーを駆使することで、データ活用の仕組み化も実現されており、高付加価値サービスの提供を実現しています。

続いて、「ローカル」の事例では吉野川タクシー社を上げさせて頂きました。
ネットフリックス社の事例ですと、資本や人材、文化や社風が先端を行き過ぎており、手触り感がない!という声もあるのではないかと想定し、徳島県でタクシー事業を行われている会社の事例を取り上げました。
以下のスライドをベースに吉野川タクシー社は何をしたか?についてのステップを紹介しました。

画像9

取り組みの背景としては、日本全体の傾向と同様、事業を展開している徳島県の人口減少によって、タクシーを利用する人が減っているという経緯からでした。

吉野川タクシー様はこのような市場の影響に流されるままではなく、改めて自分たちの在り方を確認されました。何か新しい取り組みは出来ないか?新しいユーザー層(=若年層)の利用を何とか促せないか?促すにしても、自分たちのことを認知して記憶し、長く使ってもらう方法はないか?
熟考した結果、「マタニティタクシーとキッズタクシー」という2つのサービスを開発します。

しかし、その実現には壁がありました。
マタニティタクシーのユーザーは妊婦さんを対象とします。そうなると24時間何が起こるかわかりません。そのために常時何人もの受電オペレーターを昼夜配置してしまうとコストが合わない…。といった問題が生じます。
また、キッズタクシーのユーザーは通学されているお子さんが対象となります。この場合も、子供さん一人一人を家まで送迎することをカバーするための車両数は十分ではありません・・。

それではどうするのか?
オペレーションで課題が生じている領域でテクノロジーの利用を検討した結果、受電は自動対応サービスを導入され、それと併せて運転手とお客さんを効率的にマッチングする方法をテクノロジーを使い実現させました。
そうすることで、限られた車両と乗りたい人を上手くマッチングさせ、収益性のある新サービスを展開するに至りました。このように事業のあり方を考え直し、テクノロジーを使ってこれまで実現出来なかったことを実現させることで、新しいユーザー層を確保するモデルを作られた好事例として紹介させて頂きました。

5.DX実現のステップ

前項ではDXを具体的にイメージするために企業事例を取り上げましたが、ここで改めてDXを俯瞰すると、DXに辿り着くためのステップが見えてきます。

画像10

当セミナーのコンセプト上、最初のステップでDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現することはかなり難しいだろうと想定しているため、初めの取り組みで目指すべきところは、オペレーションのデジタル化であることをご紹介しました。

これは、「日常的に取り組んでいる業務を自動化する」、「デジタル化を土台にした業務オペレーションを新しく作り上げてしまう」など、プロセスの効率化に重点した取り組みです。それらを連続的に行うことで、社内でプロジェクトマネジメントの経験値が上がり、小さな成功を継続に実現していくことが可能になります。
その結果、社内で上手くいった仕組みをサービス化して外販することで新しい収益につなげたり、会社を大きく変革させることが出来るようになるのではないと思います。
初めは小さな一歩ですが、身近なところから挑戦していくことで大きな目標に辿り着くことが出来ます。

画像11

6.DX成功のカギとは

ここまでDXの概要や事例、そこに辿り着くためのステップについてご紹介しましたが、最後にDXを成功させるための要諦について少し説明します。セミナーでは、特に「組織改革」「人材の意識改革」という点でご紹介しました。

DXの達成に近づくには事業とテクノロジーの掛け合わせを行い、生産性向上や新しいビジネスの実現を繰り返していくことになります。人によっては、テクノロジーという得体の知れない、真新しいものを取り扱って事業を改善していくことになることから、DXやテクノロジーを使うことに対する意識改革や実現に向けてプロジェクトを推進させるための組織構築とその円滑な運用が欠かせません。
私も経験上、ここで詰まってしまうケースをいくつか体験してきました。

画像12

それを乗り越えるためにはどうすべきか?
もう少し掘り下げると「人が動き、動かしていく」必要があります。

画像13

組織がピラミッド構造になっている場合、トップ層の理解は欠かせません。
最近はCDO、CXOといったデジタル活用を目的としたリーダー役を配置する組織もあります。現場担当から取り組むケースもありますが、意思決定権のあるトップ層がDXに関して深い理解を持ち、取り組みについて後押ししてくれれば、これほど強力なことはありません。

また、もちろん現場でDXのプロジェクトを進めることが出来るリーダーと動けるチームも必要です。
要するに、ビジネスとテクノロジーの両方を理解した人が集まってプロジェクトを回せるチームを編成しつつ、それ推進するリーダー役が必要ということになります。周囲の理解を得て、リソースを集め、継続的な取り組みを行うことは難所であることから、取り組むべき点は多く、ここで説明しきれず恐縮ですが、これをおざなりに進めてしまうとプロジェクトは上手くいかない、成功したとしても一部門の取り組みで終焉してしまう等、DXを目指す上で危機的な状況になり兼ねません

自らが改革者の場合、DXは自社には無理だ…という悲観ムードが漂ってしまうことは避けたいですよね。この点については、今後のセミナーの題材としても取り上げていきたいと思いますので、乞うご期待下さい!

あとがき

最後まで読んで頂きありがとうございました!
セミナーの企画メンバーとしても、DXは一筋縄ではいかない…と企画時から議論が活発していました。
しかし、困難はチャンス!ということで皆さんへお伝えしていくべきことがあるのではないかと考え取り組んで参りました。DXは会社や組織をより良くするための取り組みとして無視することは出来ない!ということを少しでもご理解、ご認識頂けたようでしたら幸いです。

えぞ財団が目指す「こんなもんじゃない北海道経済を創る」。
そのためにはどさんこならではのDXの在り方が問われていると思います。好事例をどんどん作り、北海道経済の押し上げに貢献すべく、今回のセミナーを糧に良質なコンテンツ作成に取り組んで参ります。

そのためには、皆さんからの「生の声」がとても重要です!この記事を読んで頂き、「これって別の視点があるんじゃない?」「いやいやもっと重要なポイントがあるでしょ!」「ここがどうしても理解出来ない!」など少しでも感じるところがありましたら、ご意見どしどし頂きたいと思います。
その「生の声」が北海道ならではのDXを創り上げていくための糧となりますので、今後とも何卒宜しくお願いします!

以上、第一回【生産性向上から”三方良し”へつなげる!デジタル活用セミナー】のレポートでした。

えぞ財団では「こんなもんじゃない北海道経済を創る」をキーワードに、様々な活動を行なっています。
北海道に住んでいる人もそうじゃない人も、北海道への想いを持つ方であればどなたでも、様々なバックグラウンドを持つ人達と一緒に楽しんでいけたらなーと思いますので、興味を持ってくださった方は是非チェックしてみてくださいね。


北海道を少しでも盛り上げていければと思ってます!ぜひとも応援をお願いします!!よければメンバーシップから団員登録もお願いします🐻