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トレイルデザイン-Appendix L

Leave No Trace

海外のトレイルに関するサイトで「Leave No Trace」(略すとLNT)という文字やロゴを見たことはありませんか?最近、日本でも徐々に使われることが増えてきたような気がします。

例えば、日本のロングトレイルとして有名な「信越トレイル」のサイトをにも出てきますし、2020年10月1日に新たに開通する「摩周・屈斜路トレイル 」のサイトにも登場します。そんな「Leave No Trace」について理解しておいても損はしないでしょう。


アウトドア活動をする9割の人は、自然へのダメージを認識していません。

このタイトルは「Leave No Trace Japan」のサイトのトップページに出てくるものです。”9割”という数字はなかなか衝撃的です。この”9割”がどこから出てきたものなのか調べても分かりませんでしたが、本国のホームページにも出てきますのでアメリカのなにかの調査なのでしょう。

登山やハイキングをしていて気になるのが、人とすれ違う時に道を譲るのは良いのですが、植生の上を躊躇なく踏んでしまう方が結構いることです。人には配慮できていても自然へ配慮ができていないという良い例かもしれません。

アメリカでは1960年からアウトドアレクリエーションによる自然破壊が問題となってきました。そこから「ミニマムインパクト運動」や「"No Trace"運動」などの活動を経て、1994年に「Leave No Trace」が設立されました。


7 Principles

Principle”とは原理や原則という意味の言葉です。「Leave No trace」にはまず7つの原則があります。そして、それぞれついて具体的な指針がいくつか示されています。但し、アメリカで生まれたものなので、現在の日本の自然環境やルール・マナーにそぐわない部分もいくつかあります。特にトイレ焚き火についての考え方は大きく異なります。原則1の1に”Know the regulations and special concerns for the area you’ll visit(訪問する地域のルールと注意することを把握する)”とあるように、その地域や場所のルールやマナーに従いましょう。

The 7 Principles of LNT
①Plan Ahead and Prepare (事前の計画と準備)
② Travel and Camp on Durable Surfaces (影響の少ない場所での活動)
③ Dispose of Waste Properly (ゴミの適切な処理)
④ Leave What You Find (見たものはそのままに)
⑤ Minimize Campfire Impacts (焚き火の影響を最小化)
⑥ Respect Wildlife (野生動物の尊重)
⑦Be Considerate of Other Visitors (他のビジターへの配慮)


①Plan Ahead and Prepare (事前の計画と準備)

○ Know the regulations and special concerns for the area you’ll visit.
訪問する地域のルールと注意することを把握する
○ Prepare for extreme weather , hazards, and emergencies.
厳しい気候、リスク及び応急事項に備える
○ Schedule your trip to avoid times of high use.
時間を無駄にしない日程を計画する
○ Visit in small groups whenpossible. Consider splitting larger groups into smaller groups.
できる限り少人数のパーティーで訪問する。メンバーが多い場合は小さいグループで小分けを検討する
○ Repackage food to minimize waste.
ゴミを最小限にするように食糧をパッキングする
○ Use a map and compass to eliminate the use of marking paint, rock cairns or flagging.
標識を作るための色付け・石の積上げ・旗の設置などを避けるために地図とコンパスを使う

※最近は安全のためにGPSを携帯することが推奨されています。

②Travel and Camp on Durable Surfaces (影響の少ない場所での活動)

○ Durable surfaces includeestablished trails and campsites, rock, gravel, dry grasses or snow.
影響の少ない登山道、指定のテントサイト、乾いた場所の上で活動する
○ Protect riparian areas by camping at least 200 feet from lakes and streams.
湖や沢から約60メートル以内でのキャンピングは避ける
○ Good campsites are found, not made.Altering a site is not necessary.
良いキャンプサイトは作るのではなく探す
○ In popular areas : (パブリックな場所では
-Concentrate use on existing trails and campsites.
既存のトレイルとキャンプサイトを利用する
– Walk single file in the middle of the trail, even when wet or muddy.
ぬかるんでいるトレイルでもトレイルの真ん中を縦一列で歩く
– Keepcampsites small. Focus activity in areas where vegetation is absent.
キャンプサイトは最小限にする。植物がない場所での活動する
○ In pristine areas: (自然状態の場所では
-Disperse use to prevent the creation of campsites and trails.
キャンプサイトとトレイルをつくらない
– Avoid places where impacts are just beginning.
ダメージを受け始めている場所は避ける

※日本ではキャンプして良い場所が指定されていることが多いです。

③Dispose of Waste Properly (ゴミの適切な処理)

○ Pack it in, pack it out. Inspect your campsite and rest areas for trash or spilled foods.Pack outall trash, leftover food, and litter.
自分が持って行ったものは全て持ち帰る。キャンプサイトと休憩地でゴミなどを残してないか確認する。全てのゴミ、残りの食べ物などを持ち帰る
○ Deposit solid human waste in cat holes dug 6 to 8 inches deep at least200 feet from water, camp, and trails.Cover and disguise the cat hole when finished.
排泄物は水源、キャンプサイト、トレイルから約60メートル離れた場所に約15~20センチメートルの穴に埋める
○ Pack out toilet paper and hygiene products.
トイレットペーパーなどはバックパックに入れて持ち帰る
○ To wash yourself or your dishes,carry water 200 feet away from streams
or lakesand use small amounts of biodegradable soap. Scatter strained dishwater.
体又は食器を洗う際には沢または湖から約60メートル離れた場所に水を持っていき少量の自然の中で分解できる石鹸を利用して洗う。洗った水は散らして捨てる

※最近は、自然への影響や維持管理問題の観点から、携帯トイレの使用が推奨されている地域が多いです。

④Leave What You Find (見たものはそのままに)

○ Preserve the past: examine, but donot touch, cultural or historic structures and artifacts.
過去の状態をそのまま保存する。文化的又は歴史的構造物と人工物には触れない
○ Leave rocks, plants and other natural objects as you find them.
岩、植物、他の自然物はそのままにする
○ Avoid introducing or transporting non-native species.
外から動物・植物を持ってきて置いたり移動させない
○ Do not build structures, furniture ,or dig trenches.
構造物を作ったり木を折ったり穴を掘らない

⑤Minimize Campfire Impacts (焚き火の影響を最小化)

○ Campfires can cause lasting impacts to the backcountry.Use alight weight stove for cooking and enjoy a candle lantern for light.
焚き火は長い期間影響を及ぼす。料理のためには軽量なストーブを使い、照明はランタンを利用する
○ Where fires are permitted, use established fire rings, fire pans, or mound fires.
焚き火は許可されている場所で用意されている焚き火台、焚き火用パンなどを利用する
○ Keep fires small. Only use sticks from the ground that can be broken by hand.
焚き火は小さくする。落ちている小さい枝のみを使う
○ Burn all wood and coals to ash, putout campfires completely, then scatter cool ashes.
薪と墨は全て灰になるまで燃やし、火が消えていることを確認して、冷めた灰は散らして捨てる

※焚火そのものが禁止されていることが多いです。

⑥Respect Wildlife (野生動物の尊重)

○ Observe wildlife from a distance.Do not follow or approach them.
野生動物と距離を保つ。彼らを追ったり接近しない
○ Never feed animals. Feeding wildlife damages their health, alters natural behaviors, and exposes them to predators and other dangers.
野生動物に餌を与えない。野生動物に与える食べ物は彼らの健康にダメージを与え、自然的な習性を変えて、捕食者等の危険にさらします
○ Protect wildlife and your food by storing rations and trash securely.
食糧とゴミを安全に保管して野生動物から保護する
○ Control pets at all times, or leavethem at home.
ペットは常に繋いでおくか自宅に置いて来る
○ Avoid wildlife during sensitive times: mating, nesting, raising young, or winter.
子育て、巣作り、冬期など敏感な時期には野生動物との遭遇を避ける

※安全上や他の利用者とのトラブルを避けるためペットを連れてくることが禁止されている地域もあります。

⑦Be Considerate of Other Visitors (他のビジターへの配慮)

○ Respect other visitors and protect the quality of their experience.
他のビジターを尊重し、彼らが良い経験をできるように保つ
○ Be courteous. Yield to other users on the trail.
礼儀を守る。トレイルでは他の利用者に譲る
○ Step to the downhill side of the trail when encountering pack stock.
重たい荷物を背負った人とすれ違う場合はトレイルの谷側に立つ
○ Take breaks and camp away from trails and other visitors.
休憩とキャンプはトレイル及び他のビジターから離れた所を行う
○ Let nature’s sounds prevail. Avoid loud voices and noises.
自然の音をそのままにする。大きな声と騒音を出さない

※日本の山では登り優先という習慣が根付いてますが、個人的には「弱者優先」の方が良いと思うのですが…
※日本では休憩時も登山道から外れてはいけない地域がほとんどです

参考


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