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トレイルデザイン-Trail Reconstruction

サスティナブルなトレイルのためには Tread Maintenane が重要であることが分かりました。そして、浸食が進んでしまったトレイルは閉鎖して植生や土壌の再生を図り、Rerouting する必要があることも分かりました。

確かに、浸食が進んだトレイルは Rerouting するのが一番の方法です。しかし、メンテナンスやチェックダムだけでは対処しきれず、諸々の事情でトレイルを閉鎖するこもできず、新たにトレイル作る事もできない場合はどうしましょうか?またトレイル上では予期せず、木が倒れてしまったり、土砂崩れが起こる事もあります。そのような場合はどのように対処すれば良いのでしょうか?

その時は、トレイルを元の状態に戻す「Trail Reconstruction」を行いましょう。Trail Reconstruction とは文字通り、トレイルを元に状態に復元することです。今回は、「California Department of Parks and Recreation」の『Trails Handbook』から Trail Reconstruction の手法を見ていきましょう。


Trail Reconstruction

例えばバームやスラフの処理などメンテナンスを怠り、侵食がステージ3まで進んでしまった場合はどうしましょうか。
(ちなみに『Trails Handbook』では Tread Maintenance のうち、バームとスラフとアウトスロープの3つのメンテナンスを「Trio Maintenance」と呼んでいます)

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図のとおり、スラフを処理してバックスロープ(トレイルの山側の法面)を元の状態に戻し、バームも処理します。そこで削った土砂を利用して掘れてしまった路面を埋めて、アウトスロープの状態に戻します。この時、スラフやバームに生えた植生も処理してしまいます。これはもったいないような気がしてしまいますが、これらの作業を行わないと侵食が進んで、余計に周辺の植生を失うことになります。


Uprooted Tree

次に、木が倒れた場合はどうでしょうか?

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このような場合、日本だと通行に支障がなければ倒れた自然の状態のままにしておくことが多いと思いますが、これも大きく処理します。

まずバンク状になった斜面は大きく削り、やはりバックスロープを適切な斜度に維持させます。これは一見もったいないように感じますが、これを怠ると水が上から落ちる衝撃で土がどんどん削られていく Headcutting という現象が起きて、バンク状のまま土が削られ続けてしまいます。スロープ状にすることで水が落ちる衝撃が無くなり Headcutting を防ぐ事ができます。結果的に土壌が守られ、植生の回復も見込まれます。

また、削った土砂を使って路面や斜面を埋めてアウトスロープやサイドスロープも適切な状態に戻します。木の根も邪魔になる部分は切っておきましょう。

ちなみに、水による下方浸食は Downcutting と言います。 Headcutting と併せて、これらはガリー浸食の原因となります。


Slide Maintenance

では、サイドスロープ(斜面)が地滑りなどで崩れた場合です。

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この場合も、図を見ればお分かりとおり同じ考えで処理します。つまりバックスロープとアウトスロープの維持です。


サスティナブルトレイルのメリット

サスティナブルトレイルの強みは何よりもシンプルであることだと思います。どのような状況でも基本的な考え方はほぼ同じです。初めから定められたルールに則ってトレイルが作られているため、あとはその状態を維持することだけを考えれば良いのです。そのため、ある程度の知識と技術を身につければ、高度な技術がなくてもどこでも誰でも一定の水準でトレイルを維持する事ができるのです。


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参考


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