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トレイルデザイン-True Trail Sustainability

100年続くトレイルを…

ここまでサスティナブルトレイル、つまり「持続可能なトレイル」に関する物理的な技術やノウハウをいろいろと見てきました。しかし100年続くような真のサスティナブルトレイルは技術だけで作り上げる事は出来ません。

真のサスティナブルトレイルを実現するためには、「Physical(物理)」「Enviromental(環境)」「Social(社会)」の3つの観点からアプローチする必要があります。


Physically Sustainable Trails

まずはフィジカルつまり物理的な持続可能性を保つことを考えましょう。

・環境へのインパクトが小さい事
・メンテナンスが容易な事
・費用対効果が高い事
・利用者の求める体験と一致する事
・安全性の向上

具体的にはここまで見てきたハーフルールアウトスロープグレードリバーサルなどの仕組みをきちんとトレイルに組み込む事です。また、トレイルのクラスに応じて整備する規模や費用をきちんと考えましょう。そこを間違えると費用対効果が低く、過度な整備や過少な整備は利用者にとっても良いものではありません。当然のこととして安全性も担保する必要があります。


Ecologically Sustainable Trails

次に、環境や生態系への影響も考える必要があります。

・その場所の生態学的な調査項目を把握した上で作る事
・敏感な生態系の地域や危機的な生物の生息地を避ける事
・生態学的に敏感な地域を避けるか、守るために緩衝帯を設ける事
・水の流れを最も効果的な方法で管理する事
・トレイルとその周辺の自然を継続的に管理する事
・持続不可能になったトレイルは利用を止め、復元を図る事。

トレイルを作る上では、調べるべきことを事前にきちんと調べる事が重要です。例えば、地形、表面流、土壌の状態、植生、野生動物、土地の所有権、危険な場所、土地の管理者などなど多くの項目を把握しておく必要があります。

また、トレイルを作る上で最も忘れられがちなのが、利用を停止すべきトレイルの閉鎖復元です。侵食が進んだり、生態系を破壊が進んだトレイルは放っておいても元に戻ることはありませんので、閉鎖を検討する必要があります。その場合、まず全てのの人工物を撤去しましょう。踏圧や締固められたトレイルの路面を解し、土壌の状態をもとに戻します。また、復元した場所を守るため、閉鎖した後も利用者がいないか、侵食が進んでいないかなどモニタリングを行いましょう。


Socially Sustainable Trails

トレイルは作る人だけのものではありません。地元の人もいれば他の地域から訪れる人もいます。そこを利用する人(ハイカーやバイカー、ランナーなど)も様々ですし、トレイル管理や維持をする団体や自治体、観光やアウトドア関連企業など多くのステークホルダーが関係してきます。この関係する人々をいかに巻き込んでいけるかが鍵となります。

・内外すべての利害関係者に関与する事
・方々から情報を集める事
・コミュニケーションの取り方を考え、周りを巻き込む事

まずトレイルを利用する人たちついて、誰がトレイルを使うのか?どれくらい利用者がいるのか?その人たちはなぜそこに来るのか?利用者は何を求めて何を求めていないのか?を考えましょう。

さらに、100年続くトレイルを実現するためには「トレイル作る」→「利用する」だけでは足りません。トレイルを持続可能にするためには社会的に必要な役割がたくさんあります。それらを誰がどうやって行うのか考えていく必要があります。

メンテナンス 継続的なメンテナンスが必要です
自然保護 生態系や希少な動植物を守る
教育 インタープリテーションやそのプログラムを組む
レクリエーション 利用する人やコミュニティの力を利用する
監視 安全や保護のため監視する
計画 短期的、長期的な戦略を考える
マーケティング 広く発信して周知させる
ボランティア ボランティアの力を活用する
行政 規制や法的な手続きは行政抜きには進みません
お金 お金をいかに集め、いかに使うかを考える


Lasts For 100 years...

物理学、生物学、社会学的、3つのアプローチで持続可能性を実現することで、トレイルは驚くほど長持ちします。世界的に見ると、例えばヨーロッパの「Via Francigena」はローマ時代から1000年以上の時を経て、今も尚現存しているトレイルです。

あなたの関わる登山道は出来てから何年経過していますか?現在の状況はどうなっているでしょうか?持続可能なものとなっているでしょうか?

持続可能なトレイルは地域の大きな資産となります。私たちは、少なくとも100年続くトレイルを目指すべきでしょう。そのためにどうデイザンするのか、どのように作るのか、どのように管理するのか、考えていきましょう。


参考

Sustainable Trails 101:Mike Osborne(Five Rivers MetroParks)


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