春が

春の狂気がもう和らいでいる気がする。芽吹きのエネルギーは、蠢く虫たちの希望は得体が知れない。今年は梅も張り合いなく咲いただろうね。

カタイ冬になる、と言われていたけれど、私自身はそうは思っていなかった。あの夏の長びきかた、下手な幕引きからして、きちんと冬が立ち上がれるわけがないと思った。その通りだった。地球は変わってきているのかな、とも思う。たんなる気紛れやもしれぬけれど。
そうとは言っても、今年の冬のあいだだって気分は落ちた。まだ見ぬ人生を恨んだ。フィンランドの冬はマイナス20℃をも超えるらしい。私のバイト先の冷蔵庫の温度ですらマイナス17〜19℃なのに。まあ日本の冬のつらいのは大体風のせいなんだけれど。都会のビル風はつらい。狭いところに追いやられて怒った風がビュンビュン列をなすから。

いや、とにかく冬は終わった。春が到来している。光を見ればわかる。これは冬のクリアーな色をしていない。降り注ぐ光だ。夏の差すような光でもなければ、秋の落ちてくるような光でもない。いま触れる光は、何年前の輝きから届いているんだろうか。

かおりに包まれる季節が始まる。

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