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「インベーダーゲーム」/ 大ヒットに至った物語



「インベーダーゲーム」 は、1978年(昭和53年)に発売され、日本中に大ブームを巻き起こした。

単なるヒットゲームではなく、昭和の文化史では必ず取り上げられるほどの社会的影響力があった。

このゲームの人気により、日銀関係者が硬貨の流通量に右往左往し、さらに街中の風景に「ゲームセンター」が定着し、それまでマイナーなビジネスであったゲーム産業が社会的に認知されるきっかけにもなった。

それでは、なぜインベーダーゲームはそこまで人々の心をつかんだのか、そして大ヒットに至ったのであろうか。


〈目次〉
1.ゲーム機がレジャー施設の定番になるまで
2. 動かない敵を消すのも面白いが、動く敵を消すのはなお面白い
3. 「100円で遊ぶ」という文化を作り出した


1.ゲーム機がレジャー施設の定番になるまで
インベーダーゲームが生まれた背景には、アメリカでのゲーム人気があった。

アメリカでは1962年に、マサチューセッツ工科大学の学生によって「スペースウォー(二機の宇宙船が互いに光線銃で撃ち合って競うプログラム)」という原始的なコンピューターゲームが開発され、それが人気となり、アメリカ各地に広まっていた。

その頃、大学で電子工学を学んでいたノーラン・ブッシュネル氏(後に世界初のゲーム専門会社「アタリ」を創業)は、コンピューターゲームの面白さに着目した。

遊園地で働いていたブッシュネル氏は、レジャー施設でコンピューターゲームが遊べるようになれば、ビジネスにできると思いついた。

そこでブッシュネル氏は、コンピューターゲームを小型の筐体に収まるように改良した。スペースウォーの「撃ち合うルール」をテニスゲームに変えたり、ボールでブロックを崩していく「ブロック崩し」に発展させた。

結果的に両ソフトとも全米でヒットし、コンピューターゲームがビジネスで成功した初のケースといわれています。

これ以降コンピューターゲームは、デパートの屋上や遊園地といった遊びのシーンで、人の目に触れるようになりました。


2.動かない敵を消すのも面白いが、動く敵を消すのはなお面白い
ブッシュネル氏のゲームは1970年代中頃に日本にも輸入され、特にブロック崩しタイプのゲームがヒットした。

その頃、玩具会社で働いていた西角友宏氏は、ゲーム人気に目をつけた営業担当から「これ(ブロック崩し)を超えるものを作ってくれ」と依頼され、インベーダーゲームを開発した。

開発にあたって西角氏はまず「面白さの本質」を掴もうとした。ブロック崩しゲームの人気の秘訣は「ブロックを全部消すというシンプルで明快な目標、達成した時の爽快感や満足感」が魅力の核だ。

しかし、ただ踏襲するだけだとオリジナルを超えられない。そのため、面白さを高めるために様々な工夫が凝らされた。

まず1つ目は「双方向性」の魅力だ。動かないブロックを消していくだけで面白いのであれば、攻撃してくる敵を撃ち消していけば、さらに面白くて満足できるだろう」と、西角氏は敵キャラが攻撃してくる設定を採用した。

2つ目は「難易度を高めて飽きないようにする」ことだ。ステージをクリアする度に攻略をするためのレベルを高くすることで、「シンプルすぎると飽きる」という弱点を抑える狙いがあった。

難易度の高さは、このほかにも効果がある。レベルが高くなるほど勝つのは難しくなるため、プレイヤーはゲームオーバーの度に悔しい思いをする。

しかし、そのことで「次こそは記録を超えてやる!」というモチベーションにもつながるため、自発的にお金をつぎ込むユーザーも出てくることになった。

こうして発売された「スペースインベーダー」は、発売されるや空前の大ブームを引き起こしたのだ。

なお、「スペースインベーダー」という名前はタイトーの商品名であり、「インベーダーゲーム」は、スペースインベーダーの模倣品を含めた俗称である。

海外でも「インベーダーゲーム」は大ブレイクした。アタリ社が「スペースインベーダー」を家庭ゲーム機用に移植すると、史上初のソフト百万本突破を記録する大ヒットとなった。

「インベーダー」 家庭用ゲーム機


3.「100円で遊ぶ」という文化を作り出した
インベーダーゲームの成功の裏には、コンピューターという新しいイノベーションがあった。

技術の進歩でゲームプログラムが小型の筐体に収められ、普及できたことで、ヒットの下地となる環境が整ったのである。

もちろん、ハードだけではヒットしない。西角氏のように、ユーザーを熱狂させるソフトを作る人材が必要だ。

ハードとソフトの両面において、人を惹きつける革新が結びついたことが、新しい「インベーダーゲーム」の大ヒットを生み出したのだ。

イノベーションには、新たな価値を生み出して、社会的に大きな変化を起こす側面がある。インベーダーゲームはまさにそのケースにあたる。

従来にはなかった、100円で遊べる場を創り出し、愛好する人たちが集って楽しめるひとときをもたらした。そのことは、現在も、ゲームセンターという形で続いている。


参照元: 「NTT東日本」Webサイト

以上

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