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「半導体の仕組み」について

半導体の仕組みや定義、性質について解説いたします



半導体は、現代社会において欠かせない存在で、多くの電気製品や電子機器に使われている。それではなぜここまで広く普及したのだろうか。

半導体の仕組みを知ることで、多くの電気製品に使われる理由を理解することができる。

今回は、半導体の仕組みから定義や性質について解説したいと思う。


〈目次〉
1.そもそも半導体とは?
2.電気の流れ=電子の移動 
3.半導体の材料「シリコン(Si)」 
4.半導体の仕組み
(1)n型半導体 
(2)p型半導体 
5.現代の半導体は「pn接合」が主流 
(1)順方向バイアスと逆方向バイアス
(2)PNP又はNPNトランジスタ
6. 半導体の役割
(1)電流のコントロール 
(2)エネルギーの変換
7.社会における半導体の用途や必要性
8.さらなる進化が期待される半導体


1.そもそも半導体とは?
半導体とは、電気を通す「導体」と電気を通しにくい「絶縁体(不導体)」の中間の性質を持つ物質である。

導体は鉄や金といった金属物質、絶縁体はゴムやガラスなどの物質が該当する。半導体は電気を通したり通さなかったりすることで、電流の制御が可能である。また、使い方によっては光と電気のエネルギー変換もできる。

こうした性質により、半導体はCPUやメモリなどのIC(集積回路)、LED、サイリスタといった数多くの製品に利用されている。

CPU…コンピュータを構成するデバイス。制御・演算を行う

メモリ…コンピュータを構成するデバイス。データを一時的に記憶する

IC…集積回路。超小型化したトランジスタ、コンデンサ、抵抗などをシリコンチップ上に集積させたもの

LED…電気を流すと発光する性質を持つ装置

サイリスタ…電流を制御することができる装置



2.電気の流れ=電子の移動
半導体は電流を制御するわけだが、そもそも「電気の流れ(電流)」とは「電子の移動」と言い換えることができる。

物質は「原子」の集まりである。さらに、原子は「原子核」+「電子」で構成されている。簡単に言うと、電子は電気を運ぶ役目がある。

導体の原子は、原子核と電子の結合が弱い状態である。原子核から電子が離れやすく、物質の中で自由に動ける「自由電子」が多く存在する。電圧の印加により自由電子が移動することで、電気が流れる仕組みになっている。

さらに導体には、電子が存在できない領域「バンドギャップ(禁制帯)」がない。自由電子が容易に移動できることから、電気が通りやすい。

対する絶縁体の原子は、原子核と電子の結合が強い状態である。電気を運ぶ自由電子がほとんどない上にバンドギャップが大きく、電圧を印加しても電気は流れない。なお、半導体のバンドギャップは導体よりも大きく、絶縁体よりも小さいといった特徴がある。


3.半導体の材料「シリコン(Si)」
半導体の仕組みをわかりやすく理解するため、材料についても把握しておきたい。半導体の材料は、シリコン(Si)が最も使用されている。

ゲルマニウム(Ge)やセレン(Se)などの元素を使う場合もある。シリコンは「珪石(SiO2:二酸化ケイ素が主成分の石)」などの形で自然界に存在しており、資源が豊富である。加工もしやすいため、多くの半導体製品はシリコンを採用している。

IC(集積回路)を製造する場合、採取した珪石(けいせき)は、金属シリコン→多結晶シリコン→単結晶シリコンの順番で精錬される。続いて、ICの基盤である「シリコンウエハ」に加工されると、回路や電極を取り付けたチップに分離して製品化される仕組みである。


4.半導体の仕組み
半導体に用いる単結晶シリコンは、「真性半導体(i型半導体)」とも言われいる。シリコンは4個の価電子(電子の総数は14個)を持つ原子である。4個の価電子は隣り合うシリコン原子と強く結びつき(共有結合)、強固な結晶格子を形成している。このままでは電子が移動できず、ほとんど電気が流れない。

そこで、シリコンに不純物をわずかに混ぜて「不純物半導体」を作ります。不純物の種類により、「n型半導体」あるいは「p型半導体」となりますが、どちらも電気が流れる半導体である。それぞれの仕組みをご説明する。

(1)n型半導体
n型半導体とは、自由電子を移動させて電気を流す半導体である。マイナスの自由電子を利用する仕組みにより、「negative型」と名付けられました。シリコンにリン(P)、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)などの不純物を添加して作る。

リンの原子は、5個の価電子(電子の総数は15個)を持つ。シリコンの価電子は4個であるため、リンを加えたn型半導体は価電子が1個余っている状態だ。余った1個の価電子は隣り合う原子と共有結合できず、自由電子になる。自由電子はマイナスの電荷を持つため、電圧を印加することでプラス側に移動して電気が流れるわけである。


(2)p型半導体

p型半導体は、「正孔(ホール)」への電子の移動を利用して電気を通す。主に利用する不純物は、ホウ素(B)やインジウム(In)である。

ホウ素の原子は価電子が3個(電子の総数は15個)であるため、シリコンよりも価電子が1個少ない。シリコンにホウ素を添加すると価電子が不足し、結合箇所に電子が欠落した空白「正孔(ホール)」が1つ生じる。正孔がある状態で電圧を印加すると、電子はプラス側へ動き、隣の電子が正孔に移動して電流が流れるわけである。


代わりに移動した電子が、元いた位置に新たな正孔が発生します。実際は電子がプラス側に移動しているわけですが、ホールが次々とマイナス側に動いているように見えます。まるで正孔がプラスの電荷のようにふるまうため、「positive型」と命名されました。


5.現代の半導体は「pn接合」が主流

ここまで、不純物半導体である「n型半導体」と「p型半導体」の仕組みを別々に説明した。

しかし、現代の半導体製品の多くは、n型半導体とp型半導体を組み合わせた「pn接合」の仕組みが主流である。pn接合とは、n型半導体とp型半導体を繋ぎ合わせている接触面を指す。

n型半導体とp型半導体が接触すると、お互いのキャリア(自由電子と正孔)が拡散する。つまり、n型半導体の自由電子がp型半導体の方向へ、p型の正孔がn型の方向へ移動するわけである。拡散したキャリアは接触面で結合し、相殺される。

お互いのキャリアが消滅した接触面付近は「空乏層」と呼ばれ、キャリアが存在しない。絶縁物のように、電気を通さない領域である。空乏層がある状態でp型側にプラスの電圧を印加すると、自由電子と正孔は接触面へ向かう。次第に空乏層が縮小し、電流が流れる。

(1)順方向バイアスと逆方向バイアス
pn接合において、p型半導体側にプラスの電圧を印加することを「順方向バイアス」と言う。順方向バイアスは空乏層が狭まり、電流が流れる。


反対に、n型半導体側からプラスの電圧を印加する「逆方向バイアス」は、電流が流れる。お互いのキャリアが離れるように移動するため、空乏層が広がって電気が通らなくなる。  


こうしたpn接合による電流を流す・流さない「整流作用」は、半導体デバイスの1つ「ダイオード」で活用されている。ダイオードとは、電流を一方通行にする半導体である。アノード(陽極)からカソード(陰極)の方向にしか電流を流さず、逆流を防ぐ。

ダイオード


(2)PNP又はNPNトランジスタ

pn接合はダイオードだけでなく、トランジスタにも利用されている。トランジスタとは、電流のオン・オフによるスイッチ機能や、電流の増幅を行う部品である。ダイオードと並び、基礎的な半導体製品と言える。

トランジスタは、p型半導体とn型半導体を3つ使用しています。Pnp又はnpnの順番で、どちらかを挟んでいる構造である。それぞれ、「PNPトランジスタ」「NPNトランジスタ」と言う。


トランジスタ



6.半導体の役割
ここまで紹介した仕組みにより、半導体はどのような役割を担っているのだろうか。半導体の役割は、「電流のコントロール」と「エネルギーの変換」の2つがある。

(1)電流のコントロール
半導体の1つ目の役割が、電流のコントロールです。pn接合などのメカニズムによって、電流の流れを制御できる。前述のとおり、「電流の流れを一方向にする」ダイオードや「電流のオン・オフ」「信号の増幅」が可能なトランジスタで活用されている。

さらに、オン・オフの高速な切り替えにより、デジタル信号の高度な処理も可能である。一例として、「IC(集積回路)」が代表的な製品だ。ICは、基盤上にトランジスタやコンデンサなどの電子素子を配置し、電子回路を形成している。高速な情報処理により、ICはコンピュータの演算・制御を行う「CPU」や、データの記憶媒体「メモリ」などの製品に広く使用されている。


IC(集積回路)


(2)エネルギーの変換
半導体は、エネルギーの変換も可能である。以下の半導体製品により、光から電気、あるいは電気から光へのエネルギー変換ができる。

・光から電気へ変換:太陽電池
・電気から光へ変換:LED、レーザー

例えば太陽電池は、光が当たった物質から電子が飛び出す「光電効果」により発電している。pn接合の半導体に太陽光が当たると電子が弾かれ、p型側はマイナスの自由電子が、n型側はプラスの正孔が発生する。自由電子が正孔へ流れることで電気が流れ、発電されるわけだ。


7.社会における半導体の用途や必要性
半導体は、身近な製品から社会インフラまで、数多くの製品に組み込まれている。例として、以下の製品が挙げられる。

・パソコンやスマートフォンなどの情報機器
・エアコンや冷蔵庫、炊飯器、テレビ、LED電球などの身近な家電製品
・自動車、医療機器、産業機器、業務用機械

例えば、上記の身近な製品のうち、エアコンは半導体を使った装置「インバータ」を使用している。インバータとは、直流を交流に変換する装置です。交流電流の周波数を変化させ、エアコンの回転数を制御している。

インバータにより、「設定温度に室温が近づくと回転数を下げる」「室温と設定温度が離れているので回転数を上げる」といった省エネ運転を実現している。エアコンがなければ温度センサーとスイッチのみで制御するため、柔軟な温度調整ができない。


冷蔵庫では、半導体チップであるマイコンの制御によってコンプレッサーを動作させたり停止させたりしながら内部の温度を温度センサーで計測して一定に保ったり、スイッチのON/OFFをセンサーで検出してドアを開いた際にライトを点灯させたり、といったことを実現している。

またテレビでは、半導体によるLED、有機半導体(半導体としての性質を示す有機物)による有機ELなどのさまざまな仕組みで、画面の表示を実現している。

このように、半導体は電化製品の利便性を大幅に向上させている。2020年ごろには世界的に半導体不足が広がり、「欲しい製品が買えない」「車の買い替えやリフォームができない」といった日常生活への影響も生じた。今や半導体は、現代生活に不可欠な部品と言えるだろう。


8.さらなる進化が期待される半導体
半導体は、今後さらなる技術開発が期待されている。とりわけ注目されている分野が、ダイヤモンド(C)やシリコンカーバイド(SiC)を使う「ワイドバンドギャップ半導体」である。

ワイドバンドギャップ半導体とは、従来のシリコン(Si)よりもバンドギャップが広い半導体である。絶縁破壊電界強度はシリコンの約10倍以上とされ、放熱性やエネルギー効率にも優れている。

シリコンを超える高電圧・高速・高温動作が可能になることから、電気自動車、航空機、電車、情報機器といった多様な分野への実装が待たれている半導体である。

ワイドギャップ半導体


参照元: 「Tech Web」Webサイト

以上

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