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「食料・農業・農村基本法」の検証・見直しについて



農林水産省では、令和4年9月から「食料・農業・農村基本法」(以下「現行基本法」という)の検証・見直しを行っています

今回は、 
①現行基本法」の検証と見直し背景と過程
②農林水産省にて「現行基本法」の検証と見直しのために設置された「食料・農業・農村政策審議会」の答申の内容(※1)
について、ご紹介いたします。

(※1)農林水産省におかれている「食料・農業・農村政策審議会」の報告内容のことです。


〈目次〉
1.食料・農業・農村基本法の検証・見直しの背景と過程
2.最終取りまとめ(答申)の内容



1.食料・農業・農村基本法の検証・見直しの背景と過程

現行基本法は、「基本法」の名前の通り、農政の基本理念や政策の方向性を明らかにする内容となっています。

現行基本法は、その理念として、
(1)食料の安定供給の確保
(2)多面的機能の発揮(※2)
(3)農業の持続的な発展
(4)農村の振興
の4つをかかげていて、
国民生活と国民経済の健全な発展を図ることを目的としています。

……………………………
(※2)農業・農村は、私たちが生きていくのに必要な米や野菜などの生産の場としての役割を果たしています。しかし、それだけではありません。農村で農業が継続して行われることにより、私たちの生活に色々な『めぐみ』をもたらしています。このめぐみを「農業・農村の有する多面的機能」と呼んでいます。農業・農村は、私たちが生きていくのに必要な米や野菜などの生産の場としての役割を果たしています。しかし、それだけではありません。農村で農業が継続して行われることにより、私たちの生活に色々な『めぐみ』をもたらしています。このめぐみを「農業・農村の有する多面的機能」と呼んでいます。例えば、水田は雨水を一時的に貯留し、洪水や土砂崩れを防いだり、多様な生きものを育み、また、美しい農村の風景は、私たちの心を和ませてくれるなど大きな役割を果たしており、そのめぐみは、都市住民を含めて国民全体に及んでいます。
……………………………


現行基本法は、平成11年に制定されて約四半世紀が経過しました。

その間、国内市場の縮小や生産者の減少・高齢化など、農業構造が大きく変化し、さらに昨今では、ウクライナ情勢や輸入食料・資材の価格高騰など、食料安全保障上のリスクも高まっています。

こうした情勢を踏まえて、令和4年9月に、農林水産大臣から食料・農業・農村政策審議会に対し諮問(※3)行われました。

(※3)有識者または一定機関に、意見を求めることです。

これを受け、同審議会は「基本法検証部会」を設置し、現行基本法の検証・見直しを開始しました。

同年10月以降、同部会は1月当たり2回のペースで計17回開催され、各分野の実務家等の方々からのヒアリングや議論が行われてきました。

さらに、令和5年6~7月にかけて農林水産省のウェブサイトを通して国民からの意見・要望の募集を行うとともに、同年7~8月にかけて全国11ブロックで基本法検証部会委員と各地域の意見陳述者による地方意見交換会を行いました。

これらを踏まえて、同年9月11日に答申(※1)が行われました。

(※1)農林水産省におかれている「食料・農業・農村政策審議会」の報告内容のことです。


2.最終取りまとめ(答申)の内容

(1)今後20年を見据えて予期される課題

今後20年を見据えて予期される課題として、大きく五つのポイントが挙げられます。

1点目は、平時における食料安全保障リスクです。世界的な食料需要が高まる一方で、気候変動などによる不作、他の食料輸入国が現れるなどの状況において、安定的な輸入にも懸念が生じています(図1)。

さらに、国内においても、経済的な理由、または食品アクセス上の理由により、質・量的に十分な食料を確保できない国民が増えつつあります。

図1


2点目は、国内市場の一層の縮小です。人口減少が本格化し、国内市場の縮小は避けられない状況となる中、国内市場だけでなく海外市場も視野に入れた農業・食品産業への転換が極めて重要となります(図2)。

図2


3点目は、持続性に関する国際ルールが強化されている点です。食品産業においても、原料調達において環境や人権への配慮、食品ロスの削減などの持続性の確保が求められるようになっています。

このような取り組みは企業評価の重要な判断基準となるだけでなく、諸外国の規制・政策にも考え方が反映されていくことが見込まれます。

このようなルールの下でも市場から排除されない農業・食品産業を主流化していく必要があります。


4点目は、農業従事者の急速な減少です。農業者の大幅な減少が予想され、さらには雇用労働力についても全産業間で獲得競争が発生することが予測されます(図3)。

こうした中、少数の経営体が、限られた資本と労働力で国内の食料供給を担うべく、生産性の向上が求められます。

図3


最後は、農村人口の減少による集落機能の一層の低下です。自然減による農村人口の急減が避けられない中、農業インフラはおろか、集落機能の維持さえも困難となる地域が出てくることが見込まれます(図4)。

図4



(2)基本理念の見直しの方向

前述の課題を踏まえて、現行基本法の基本理念について、次の四つの論点から見直しを行うこととされています。


第1に、「国民一人一人の食料安全保障の確立」です。食料安全保障を、不測時に限らず「国民一人一人が活動的かつ健康的な活動を行うために十分な食料を、将来にわたり入手可能な状態」と定義し、平時から食料安全保障の達成を図ることとしています。

さらにこのためには、国内農業生産の増大・輸入の安定確保・備蓄の活用による食料の安定供給、食品アクセスの改善、海外市場も視野に入れた産業への転換、適正な価格形成に向けた仕組みの構築を行うべきとされています。


第2に、「環境等に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換」です。多面的機能について適切で十分な発揮を図るとともに、環境負荷等に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換を目指すべきとされています。


第3に、「食料の安定供給を担う生産性の高い農業経営の育成・確保」です。少数の経営体が農地の受け皿、食料供給の大部分を担うこととなることから、これらの農業経営の経営基盤の強化、生産性の向上を図るべきとされています。


第4に、「農村への移住・関係人口の増加、地域コミュニティの維持、農業インフラの機能確保」です。

他産業との連携の強化等を通じた関係人口の増加による地域のコミュニティ機能の集約的な維持、農業生産基盤の適切な維持管理を図るべきとされています。


引用元: 「エーリック 農畜産機構」webサイト

以上

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