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逆噴射小説大賞一人反省会

 え?きたの?

 今から3週間ちょっと前。ギャラルホルンが鳴り響き、メキシコの荒野で春節の爆竹の如くパルプの弾丸が撃ち鳴らされた。その銃撃は期間中一度も止むことがなかったが、数日前、終了の鐘と共に一切が止んだ。

――逆噴射小説大賞2020のことだ。

 その文字の祝祭にひっそりと参加し、期限より少し前に5発撃ち尽くしていた私は、ようやく空になった弾倉拾いながら一息ついている。いや実際は仕事とかをしていて、一息つく暇もない。ゲームがしたい。そんなことはどうでもいい。
 このアカウントは、逆噴射小説大賞2020に参加するために作られたアカウントだ。応募が締め切られ、弾も撃ちきった今、私自身はともかく、このアカウントとしては、あとは審査に身を委ねながら、ぼんやりとして結果を待つくらいしかすることがない。
しかし、それもなにか素気が無さすぎる気もするので、5つの弾痕を振り返りながら、自己反省会をしてみようと思う。
 せっかく祭りに参加したのだ。ちょっと余韻に浸ってもいいではないか。

そもそも、新規にアカウントを立ち上げてまでこの賞に食いついた理由は、「続きを読みたいと思わせる、パルプ小説の冒頭800字を書け!」というオーダーが、自分が抱え込みながら手を付けていなかった物語の「書き出しブースター」として、都合の良すぎるほどに使えそうだったからだ。(自分の物語が、どこまでパルプ小説と近似かということについては、この際考えないことにする)

それはつまり、「よっしゃ書き始めるか」とやる気を点火するエサになると共に、自分はどうしてもスロースタートな書き出しになりがちなので、冒頭に勢いと速を加えることを意識するきっかけになるという、2つの意味での「ブースター」に使えるだろうと目論んだということだ。

 1発目の「グッバイドラゴンアンドドラゴンスレイヤー」は、特にその目的に適った。

 そもそもこれは、伝説や幻想の時代が終わりかけている世界の話で、特に前半は世知辛くなっていく世界とか、親子の確執だとかで話が進んでいくため、逆噴射小説大賞が視野に入れているだろう傾向とはかなり乖離していると思う。それ故、もともと構想していた冒頭部はかなりゆったりとした描写が続くものだった。客観的に見て、退屈になりそうなきらいがあったので、そこに少し勢いとフックを加えたく思い、賞のレギュレーションを利用させてもらったわけだ。
 というわけで、加速装置を付けたもの、ののんびりとした印象はぬぐえず、800字では軽い見せ場にも届かなかったのだけれど、自分の目的は実現できたので、満足はしている。

 2発目の「NECROPHAGE」も、書き始めあぐねていた話のひとつだ。

 これもまたやはり何も起こらないまま800字に行き着いてしまったけれど、暗い先行きと不穏な世界を予感させ、少しは先を気にならせるようにできた気はする。
 何よりの成果は、元は夢の場面から始まる構想だったのが、「そんなこっちゃ話が進まねえ!」とばっさりと1行でいってみたら、むしろフックのある強めの書き出しになったことで、これだけでも賞に参加して充分に意義があったと思える。
 というか、夢の場面から始まるの、ダサかったな……(漫画の第1話の1ページ目みたいなのをイメージしてたとはいえ)。
 タイトルは本来別のものがあって、しかし冒頭だけだとそれとそぐわないので、もっと雰囲気重視のものに……と、投稿直前に急遽考えたものなのだけど、わりとこれいいのでは?と思っている。意味が分からない、読みにくい、という難点はあるけれど。

 上で描いたように、自分が書き出すたのきっかけ作りが参加の第一目的で、賞狙いではなかったのだけど、2本書いてその目的を半ば達成したところで「やっぱり狙いたいよね、コロナ」と欲が湧きはじめた。愚者が欲をかきすぎるのは破滅フラグだが、無欲ではこの荒野は渡れない。いつでもリビドーはサバイバルの原動力なのだから。

 ならば、よりグルーブ感のあるものをと、一から考えて出てきたのが、3本目「アウトオブボーダー」だ。

 これはまず舞台設定を思いついて、そこからするするとキャラが生えるように出てきた。自然発生に近い。
 しかし完全に無からというより、前からこんな感じのをやりたかったというのはあって、だからこそポロっと舞台が生まれたことで芋づる的に出来上がったのだと思う。これは今回参加したことによる最大の成果なのではと思う。
 急造作品ではあるが、これはちゃんと先を書いてみたい。
 冒頭単体としては、やりたかった何でもありの雰囲気は出せたと思う。しかし、今思うと、それでもちょっとたるいところがあるかな、とも思う。「本番」では、もうちょっと詰め込みたい。

 3本目よりも先に、賞向けに考えていたらぽろっとこぼれ出るようにしてできたのが4本目「ガオンガオン」。

 事故みたいなものだ。
 まず、自分の好きなものを出そうということで「怪獣」をお題にして、いろいろ捏ね繰り回したら、結果こうなった。
 アイデアはともかく、とにかくのっけから「すでに始まっている」感を出すことだけを意識した。いきなりピークというか、出オチとなろうが出し惜しみしないで全力ぶん回しであることを心掛けた。それでこれか。
 出来はともかく、ノリも設定も個人的にかなり好きなものができた。惜しむらくは、800字までに技を出させるために、与太モリモリのセリフを削らざる得なかったこと。本来は先の2種の怪獣拳の説明とかがもっとあった。

 冒頭の場面自体は最後まで考えているけど、その先は本当にかけらも考えていないので、どうなっていくのか自分でもさっぱりわからない。この先どうなんの?これ。

 そしてついに5発目。ここまで来る間に、けっこうな数の冒頭、アイデアが転がり出て、最後の弾をどれにするかと悩んで、選んだのがこの「たとえば、カートいっぱいの花。」。

 最初の目的に立ち戻り、前からキャラクターと世界観のイメージがあったものを具現化したものだ。
 ずっと長らく抱えていたものだけに、けっこう好きな雰囲気が出せた気がする。だが、投稿してから2つのことに気がついて、ムム……となっている。

 まず、話の運びが先の「アウトオブボーダー」に被っていること。
 日常から少しズレた場所を、制服の女の子が歩いているところから始まって、敵が現れ、女の子の強さを見せてから、ちょっとピンチになったところで、第三の存在が登場……同じじゃねえか。
 世界観も雰囲気もこの先の展開もだいぶ違うのに、構成の引き出しが少ない故に、こんなことに……。

 そしてもうひつ。「剣(木刀)を持った主人公が、○○になった身内を運びながら、○○を倒す」って要素が、ほぼ流行りのアレと被っている、ということ。
 このキャラとギミック自体はアレ以前に頭の中にあったのだけど。世界観と共にこの先の話もだいぶ違う流れにはなるのだが、「■■に会わなかった▲▲が、自力で××する話」って言われると、全くそうなんだよな……。
 他の作品との多少の被りはスルー出来るけど、アレは流行り過ぎてるからな……。と、自分はちょっと気にしているのだけど、傍目にはどうみえるだろうか。


 そんなわけで、反省はここまで。このあと結果はどうあろうとも、荒野を進むことには変わりがない。書くだけだ。あ、そのまえに仕事しなきゃ……。ぎゃふーん。

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