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怪物をまた観た話。

早速、リピートしてしまった。

おととい観た『怪物』を、もう一度観てきた。
私は昔から「何度も見返す癖」があって、小説にしろ、映画にしろ、ドラマにしろ、気に入った作品は定期的に振り返るのが一つの趣味と化している。
結末を知っているから安心して見れる、というのも一つの理由だし、まだまだ自分が見落としている作者からのメッセージがあるのでは無いのだろうか、と疑っている本心もまた、理由の一つだ。

平日だったこともあり、人はまばらで、大人の観客が九割を占めていた。
初めて観た時、後半は泣き通しでハンカチを出しておかなかった事をひどく後悔したので、今回はきちんとカバンからあらかじめ出して膝の上に置いておいた。
案の定、泣いた。
グッジョブ、二時間前の私、と内心誉めながら、泣いた。

スクリーンに映る諏訪は、ここでは語り尽くせないほどに、美しかった。
やはり、その美しさに感化されて涙が溢れた。
一回目ではうまく飲み込めなかった描写も、今回は結末や理由、因果を知っているからこそ、ひとつひとつ咀嚼しながらワンシーンごとに噛み締めることができた。

色々な方がnoteやTwitterなどに感想や解説を投稿されていて、素直にすごいな、と思う。
私は、いまだに整理できていない気がする。
いや、確かに作品が伝えたいことはちゃんと捉えられているし、根本的な部分では良質な観客の枠からはみ出してしまっているわけではないのだけれど、なんというか、抜け出せないのだ。

※ 以下、ネタバレ要素含みます。

ひとつ前の投稿にも挙げたように、ラストシーンの青く茂った獣道を駆けていく二人の後ろ姿が、もう頭から離れない。
私は是枝監督の作品が大好きで、大好きで(いちばんのお気に入りは『海街diary』)、この愛は誰にも負けないという自負がある。
ほぼ全ての作品を観た私の経験上、ここまで掴まれてしまったのは『誰も知らない』以来だった。
その理由の一つに、やはり作品の最後の結末が関わっているだろうな、と考えている。

終わり方には色々憶測が飛び交っているらしいけれど、ハッピーエンドを好む私はやはり、二人には生きていてほしいな、と思う。
でもバリケードがなくなっているあたり、怪しいよね……と小声で囁くもう一人の私もいる。
こうやって自分の中に何人もの分身を作って、一人振り返り会ができる終わり方が、私は最高に好きだ。
どちらにせよ、私は星川依里の最後のセリフ「よかった」に救われた。
よかったのだ、これで。
生まれ変わらず、生まれたままの二人で、また。
あの嵐が嘘だったように、真っ青に晴れた空の下、白く霞む視界の奥で、泥だらけの二人が見た景色は何よりも美しく、愛おしい景色だった。
それだけでもう、いいよね。

もう観た人なら、きっと誰もがそう思っているはず。
綺麗に白黒つけずに静かに尾を引いて終わる感じは、やはり是枝組だなあ、と感無量でした。
ハッピーエンドが好きだけど、付け焼き刃の粗い終わり方は好まない。
これを超える終わり方は無いだろうな、と一人しみじみしました。

これは人生を賭けて何度も何度も観たくなる作品です。
私の振り返りリストに、今日追加されました。
小説部門一位は『ハリー・ポッターシリーズ』
ドラマ部門一位は『舞妓さんちのまかないさん』
映画部門一位は『海街diary』でしたが、『怪物』に変わりそうです。
何度も観て、その度に内省できるような作品で、今後『怪物』を超えるものは現れないでしょう。


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