恋するプリンとゆるルン密着旅 37 一人にしないで
お風呂から出ると、京都の観光を撮影するためにノートパソコンを開いて、検索しながらどこへ行くか考えている。髪をドライヤーで乾かしていたリンが横に座った。リンはジーッと俺を見ている。
「ん………」
「今日はないの?おやつは?」
「ああ……そう言うこと?」
オレはチョコを一つ手に隠して手を出した。「お手!」
リンは嬉しそうに手をトンと乗せる。
リンの口にチョコを入れて「よしよし」と頭を撫でた。
リンは嬉しそうに食べたが、その後不思議そうな顔をした。
「ねえタクちゃん、これ何のチョコ?」
「ほら。糖質オフのチョコだよ、リンが気にしてたからさ」パッケージを見せる。
「タクちゃん!」リンはいきなり抱きついてキスをしてきた。
「まだキスって言ってないぞ」
「だってタクちゃん、リンのこと考えてくれて優しいんだもん………スキ!」
そしてまたチョコをねだってきた。
「もう何もしなくてもいいよ、全部あげる」
「やだ!なんかしたい、タクちゃんなんか言って?」
「じゃあ………一生好きって言って」
リンはオレの前に改まって座ると優しそうな表情になる。
「ずっと一生タクちゃんの事を好きでいる」そう言ってキスしてきた。
「キスは言ってないぞ」
「キスもセットなの」
ベッドの上で抱き合って長い間キスをした。
しばらくすると、リンは悲しそうな顔でオレを見た。
「どうしたんだリン?」
「私……岩手で生まれたの………」
「えっ………もしかして………」
「うん、私の両親も、おじいちゃんもおばあちゃんも、そして妹も……みんな津波に飲み込まれちゃった」
「リン…………」
「私だけ学校からみんなと一緒に避難したから助かっちゃった」
「そうだったのか………」オレは言葉をなくした。
「それからずっと一人だった………寂しかったよ………」
オレはリンを強く抱きしめる事しかできない。
「でも、今はタクちゃんがいてくれる……だから………」
「リン、オレはずっと一緒にいたいと思ってる」
「すてないでね…………」
「ああ、絶対にてすてない…………」
「どっか行かないでね…………」
「ああ、どこへも行かない…………」
「もう一人にしないでね…………」
「絶対に一人にはしない…………」
リンはオレの胸に顔を押し当てて嗚咽している。
その夜おれはリンの寂しさを少しでも埋めるようにリンを抱いた。
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