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隠れ家の不良美少女 60 希和の父の消息

夜になって我が家は大宴会になった。
沢山の料理が用意され、まるで嫁を迎えるような勢いだ。
「友希、父さんは嬉しいぞ、こんな若くて可愛い嫁を迎える事が出来るなんて」
「だから、誤解なんだってば」
「希和ちゃん、これからもずっとよろしくね」妹は希和の横から離れない。
「希和ちゃん、友希が気に食わない事を言ったら直ぐに俺に言ってくれよ、俺が何とかするから」兄まで喜んでいる。
「希和ちゃん、いつ来ても大歓迎だからね」母親も嬉しそうだ。
みんなで連絡先の交換会になっている。
「じゃあメールするね」妹はすっかり馴染んでいる。
俺はどうしたものかと途方に暮れた。

希和は妹の部屋で衣装を見ることになったらしく二人で出て行った。
「父さん、あの話だけど……」
「本当に和也くんの子供なのか?」
「ああ、間違いない」
「そうか……」
「愛美さんには話してある、今夜行ってみたらいい」
「有難う父さん」

夜9時を過ぎて俺は希和と愛美さんの経営するスナックを目指す。
兄が車で送ってくれた。

「今晩は……一瀬です」
「いらっしゃい、達也さんから話は聞いてるわ、座って」
「有難うございます」
希和と二人カウンター席に座った。
俺はハイボールを注文する。
希和はジュースを頼んだ。
落ち着いたシックな内装のお店は、安らげる感じがした。

「希美子さんはお元気?」
「お母さんを覚えてるんですか?」
「勿論よ!だって衣装は随分わがままを聞いてもらったもの」微笑んだ。
「はい、元気で今も衣装を作っています」
「私も話を聞いて画像や動画を見たわ、一眼で希美子さんの作った衣装だと分かったわよ」
「そうですか」希和は感心している。

「和也さんにはもう話してあるわ」
「そうですか、有難うございます」俺は頭を下げる。
「彼、今は東之和也なの、山下和也では無いのよ」
「そうですか……もしかしたら今の家庭に波風を立てる事になりますか?」
「どうかしら……でも会うって言ってくれたけど」
「そうですか?」希和は一瞬喜んだ。
「彼は今唐津に居るのよ、明日尋ねると良いわ、時間を決めてくれたら場所を指定してくれるから」
「有難うございます」二人で頭を下げる。
明日午後2時に会う事にした。
愛美さんはメールを見て唐津の喫茶店を教えてくれた。
タクシーに乗り二人で家に帰ると、妹が待っている。
「キナコちゃんは私の部屋で寝ようよ」
「いいんですか?」
「大歓迎よ」
俺はしっかり母親が残してくれている俺の部屋へ帰ってきた。
懐かしい匂いがした。

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