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隠れ家の不良美少女 88 名古屋遠征

名古屋でのイベントが間も無く始る。
前日に名古屋へ入り、朝から会場へ向かった。
既に会場の入り口にはキナコに会いたいフアンが集まっていた。
雑誌や新聞、テレビのカメラも多く駆けつけている。
SONEレコードやアートシンクのスタッフを初め、サークルの美奈さん詩織さんと撮影の奏太くんなど、15名ほどに守られキナコは楽屋へ向かう。
俺と希美子さんは顔がバレないようにサングラスをしている。
その物々しさはキナコに大物感をもたらした。
直ぐにネットで画像が飛び交う。
多くのスタッフに守られながら、ファンにニッコリ手を振るキナコの存在感が多くの人にアピールされた。

会場には協賛企業のブースが設置してあり、その一角にはアートシンクのブースが作られている。
そこには、ゲームの予約告知でキナコの大型ポスターが展示してある。
また、SONEレコードのブースも用意されてた。
キナコのミニアルバム写真集が予約受中と大きく表示してある。

イベントが始まると、サークルの子達がKKステージのコスプレ衣装でにこやかに笑顔を振り撒いた。
多くのフアンが集まり囲み撮影が始まる。
人気が出始めた子達なので、あちこちで「可愛い〜」とか「綺麗」など声が飛び交う。そして圧倒的な衣装のクオリティが溜息を呼んだ。

やがて彼女達はアートシンクのブース前に集まって並び道を作った。
ゲームの音楽が大きくなってキナコが登場する。

まるで展示してある大型ポスターから抜け出して来たようだ。
そしてその圧倒的な存在感は会場にどよめきを起こした。
ヨーロッパ宮廷風のドレスをロリータ風のアレンジでまとめ、レースやリボンが効果的にあしらわれている。
前は短くなって綺麗な足が見えているが後ろは長いレースで、サークルの子達がそのレースを持ってキナコの後を付き添って歩いた。
キナコはニッコリとランウェイを歩く様にゆっくりと前へ出て来た。
巨大な人のドーナツができ、囲み撮影が始まる。
サークルの子達が離れると、キナコは取り囲んでいる一人一人にアピールするような笑顔でポーズを决めた。
これほどシャッターの音が聞こえるのを俺は経験した事がない。
普通はシャッターの音でポーズを変えたりするが、切間もないシャッター音にもキナコはニッコリとポーズした。

しばらくすると、サークルの子達がまた後ろに立ちレースを持った。
キナコは歩き出すと囲まれた中を手を振りながら一周にこやかに歩いて、アートシンクのブースへ入って行った。
ブース前ではアートシンクのスタッフがチラシとノベルティグッズを配布して、ゲームの予約も開始される。

会場にアナウンスが流れ、30分後にもう一度キナコが出てくる事が伝えられた。
SONEブースの大型スクリーンにキナコの映像が流れる。
レコーディング風景から沖縄の撮影の様子など、歌姫キナコのプロモーション映像が映し出された。

やがて『ラプソディを君に』のイントロが始まると、キナコはマイクを持ってSONEレコードのブースから登場する。
新たなステージ衣装は照明に照らされ、キラキラと輝く。
キナコはミニアルバムの中から3曲を歌った。
レッスンで表現力が増したキナコの歌は見ていた人達の心を鷲掴みにした。

午前の部と午後の部で2回観客の前に立ったキナコは流石に疲れたようで、楽屋でぐったりしている。奏太くんもその様子は撮影しなかった。

「よく頑張ったな希和」
「うん、希和頑張ったよ」ゆるい笑顔になった。
希美子さんも希和の頭を撫でている。
「希和、とってもカッコよかったわよ」
「本当?お母さん……」
希和は希美子さんに抱きついて甘えた。

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