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恋するプリンとゆるルン密着旅 10 ってこと…

「俺は特別にやりたい事もなかったし、実家のカフェを引き継ぐ事になってるから大学の経済学部に入ったんだけど、お店をやるのにはあんまり関係ないような気がしてやめたんだ」

リンは優しそうな表情で俺を見ている。

「それから絵が好きだったから、美術系の大学に行ったんだけど、本当に芸術家になる人って俺とは取り組み方がまったく違ってた。だからそこも自分のいる場所じゃないと思って辞めてしまったのさ」

「そうなんだ、すごいね、行きたいと思ったらどんな大学でも行けちゃうんだね、私はバカだからどっこも行けないよ」

「ええ、大した大学じゃないよ」

「タクちゃんって優秀なんだね」

「そこそこ何でもできる……けど……何一つ誇れるものは無い」

「そんな事無いよ、優秀だよ」
頷いて唇に力が入っている。

「リンの方が自分の道を持っていて一生懸命生きてるから羨ましいかも、オレは夢中になるものが何もない」

「私は生きていくのに必死なだけだもん、タクちゃんの余裕がうらやましいよ」

「親が理解があるからそれに甘えてるだけなんだ、何一つ自分じゃ出来て無い」

「いいじゃん、何をやってもそこそこ出来るなんてうらやましいよ」

「何かその言い方ちょっとキズつくな」

「そうなの?」

ニコニコしているリンを見ていると、何かホッとする気がした。

「何か嬉しい…………だってずっと一人だったから」

「そうなんだ」

リンは3缶めを開けて飲み始めた。少しずつ表情が変わってきている。

「ずっと一人は辛いよ……グスン……グスン……」

「少し飲みすぎてないか?」

「大丈夫だよ……グスン……グスン……フェーン」

「もしかしてお前、酒癖悪いのか?」狭い車内で逃げ場も無いのにか………

「そんな事ないよ……フェーン……」

「泣き上戸かよ、まいったなあ」ううう…………

「フェーン……ヒク……ヒク……フェーン」

何か余程辛い事でもあったのかな、そう思ってリンの横に座り背中をさすった。

「フェーン……私……フェーン……ヒク…ヒク…フェーン」

「だめだこりゃ………」

リンは俺に寄りかかったまま眠ってしまった。
結局そのまま朝まで寝てしまったので体のあちこちが痛い。

カーテンの隙間から明るい光が差し込んでいる。
容赦無く朝が来てしまったようだ………。

「おはよう、酔っ払って寝ちゃったね」

まるで昨日の事は覚えてない素振りで子供のように笑った。
もしかしてコイツ、あんなに泣いたことを覚えてないのか?

「マジか、ってことはオレ一人が被害者な訳?」

「被害者?」
リンはニッコリ首を横にした。

「可愛くねえ〜!」

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