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隠れ家の不良美少女 71 公園の希和

次の日、レコード会社が決まった事や長谷川さんの話など、色々と話すことがあったので、午後から希和の家までバイクを走らせる。
到着すると、希美子さんが迎えてくれた。
「希和の契約するレコード会社が決まったので報告に来ました」
「わざわざ有難うございます」希美子さんは深々と頭を下げる。
「SONEレコードです」
「ええっ!」希美子さんは大きく瞬きして驚いた。
「担当は長谷川さんです」
「…………」
希美子さんは驚いたまま立ち尽くしている。
「長谷川さんをご存知ですよね」
「は・は・はい」固まったままだ。
「長谷川さんは、やはり和也さんとお付き合いされてたんですね……そう言ってました」
「今頃になってバレちゃったの」ゆるい笑顔になった。
ゆるい笑顔は希和に似てると思った。
「でも、長谷川さんは少し嬉しそうでしたよ」
「そうなの……」少し赤い顔になって行く。
「やはり縁があるんだろうと言って、希和の事を一緒に大切に育てると約束してくれました」
「そうですか……でも長谷川さんなら私も安心です」大きく頷いた。

「希和はいないんですか?」
「少し先にある公園の前のおばあちゃんの所にいると思うけど」
「ご実家ですか?」
「いえ、希和が子供の頃から遊んでくれた親切なおばあちゃんなんですけど、最近足が悪くて買い物とか犬の散歩とかしてあげてるんですよ」
「そうですか、じゃあ散歩がてら行ってみます」
「はい、石坂さんって表札が出てると思いますよ」
「はい」俺はゆっくりと歩いて向かう。

公園に到着すると、希和がブランコで寂しそうに佇んでいる。
「どうしたんだ希和!」
声をかけると、驚いてこっちを見るなり走ってきて抱きつき泣き出す。
「おばあちゃんが………遠くに行っちゃったの……」
どうやら元気がなくなったおばあちゃんは息子さんやお医者さんと病院へ行ったらしい。犬も一緒に連れて行かれて、もう帰って来ないらしい。
恐らく……数日の命なのだろう。

「希和、帰ろう」
「うん……」
希和はずっと泣きながら家まで帰ってきた。
「どうしたの希和?」
「おばあちゃんが病院に運ばれちゃった、もう帰って来ないんだって」
「そうなの……」希美子さんは希和を抱きしめ頭を優しく撫でた。

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