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Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第23話 奴隷解放?

 図書館で準備を進めていると、茉白ちゃんも準備を始めた。茉白ちゃんはどんな企画をするんだろうと思い、のぞいてみる。『心が伝わるメールの本』と書かれたポップが見える。そうか、メールの文章に着目した企画だ、とても素晴らしいと思った。

「茉白ちゃん、これすっごくいいアイデアだね!」

「そう思う?」少し不安そうな表情だ。

「とってもいいいと思うよ、僕はメールを打つときに色々と悩んで返すのが遅くなったりするんだ、だからこの本を読みたいよ」

「そうなんだ、実は私もメールの返事が遅くなっちゃうんだ」

「素敵な企画だよ」僕は何度も頷く。

「星七くんが雑誌の紹介をする企画を見て、私も身近なところに何かないかと考えたの、だから星七くんのおかげだよ」

「えっ、そんな事ないよ、茉白ちゃんの発想が素晴らしいんだよ」僕は手を横にひらひらと振った。

 準備を済ませると、二人で駅カフェへとやってきた。

「文化祭で私たちの展示を見て本を手を取ってくれる人がいたらいいなあ」

「そうだね、でも初めてのことだから緊張してしまうよ」

「私もうすでにドキドキが始まってるわ、当日になったらどうなるんだろう」茉白ちゃんは可愛く瞬きしている。

 可愛いなあ、ランデビ琴音さんとは全然違う、やはり茉白ちゃんは天使だ!心の中で叫ぶ。

 僕は緩んだ口元のまま、スーパーで買い物して返ってきた。今夜は琴音さんが早く返ってくるので夕食を作らないといけない。簡単なサラダを作り、真ん中にキャベツの千切りを盛り付け湯通しした豚肉を乗せる、冷しゃぶの出来上がりだ。ゴマだれとポン酢を用意して好きなように食べられるようにした、やはりゴマだれやポン酢は何にでも使えて便利だ。味付けが上手でない僕はかなり助かっている。

 そんな料理でも琴音さんはニコニコと食べてくれる、そういうところは優しいのだ、だから少しずつは料理も上手にならないといけないと思っている。

 食べた料理は毎日パットのカレンダーに書き込んでいる、もしアレルギーが出たらその近くの日に食べたものを見ると原因がわかるかもしれない。

 メールの予告通り琴音さんは返ってきた。

「ただいま〜星七、お腹すいたよ〜」

「はい、準備できてます」僕はテーブルに並べて案内する。

「おっ、美味しそうだね』琴音さんはジャージに着替えてテーブルへ来て手をあわせる。

「いただきます」夕食が始まった。

「ねえ、星七の高校ってクラブ活動が盛んなんだって?玲司さんが言ってたよ」

「はい、そうです」

「星七はどんなクラブに入りたかったの?」

「一応文芸部に入りたかったんですけど、図書部員になってしまったので………図書部員は部活の掛け持ちはできないんです」

「そうなんだ、残念だったね」ほんの少し優しい目で見ている。

「でも図書委員は文芸部に出入りが自由なので。結果的には良かったかもしれません」

「そっか、星七は本好きだもんね」

「まあ………そうですけど………」

「もしかして将来は作家を目指してたりして?」ニヤッとこっちを見た。

「そんなのなれるわけないです!才能ないし」ふと亜斗夢先輩を思い出す。

「わかんないじゃん、これからいろんな経験をして感動的な文章が書けるようになるかもしれないし」

「世の中はそんなに甘くないと思いますけど」僕は眉を寄せる。

「それに図書部員に任命されたのは、学校に本好きが認められたからでしょう?」

「そんな事はないです、たまたま中学で図書部員だってのでそのまま押し付けられただけですよ」

「そうかな………」食べ終わった琴音さんは頬杖をついて考えている。

「行儀悪いですよ」僕は手を合わせてごちそうさまをした

 琴音さんは考えながらごちそうさまをしている。

「図書部員になったから茉白ちゃんと会えたじゃん、これから楽しい青春が待ってるかもよ」含み笑いで見てくる。

「そんな訳ないです」奴隷のような僕の高校生活に楽しい青春がある訳ないのだ。それにパンツとブラの悪魔ランデビ琴音さんが僕を変態へ導こうとしている、そう思って琴音さんを少しだけ睨んだ。

「お風呂沸いてるんでしょう?」そう言って可愛く首を傾げているが、すでにランデビ琴音へ変身しているじゃないか。今夜はグリーンなんだ………………。僕のまぶたの裏にはまた一枚の画像が貼り付く、ペタッ!むむむ………。

「私は星七を応援するよ」そう言い残しお風呂へ行ってしまった。

「応援はしなくてもいいから、奴隷から解放して!」っと聞こえないように言った。

 お風呂から上がった琴音さんはジャージに着替えると話しかけてきた。

「星七も16歳になったんだからバイクの免許をとりなよ、費用は私が出してあげるから」

「えっ、バイクの免許ですか?無理ですよ、学校の許可が出ません」最もバイクに興味ないですけどね、そう思ったが、別に言う必要もないと思った。

「バイクの免許を取るのに学校の許可がいるの?」

「友達は家が和菓子屋なので配達の手伝いをするからという事で許可が出たらしいけど、僕には必要な事情がありません」

「そうなんだ………」琴音さんは少し天井を見て考えている。しばらくすると「うん」と言って拳を握った。

 琴音さんはニコニコとコーヒーを淹れた、僕は牛乳を足して少しのむ。やっぱり苦いや、なんでこんなもの飲むんだろう?不思議に思った。

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