隠れ家の不良美少女 186 困惑
皆んなは匠真くんの運転するキャンピングカーで帰ったので、俺と希和はキナコ号で児玉へ向かう。
「ねえ友希さん、どうして猫の『にゃ〜』であんなにコメントが一杯くるの?」唇を尖らせている。
「キナコが可愛いからだろう」
「そんな事で人気なら歌のレッスンなんていらないじゃん」
「そうかなあ………俺は色んなキナコの愛し方が有っていいと思うぞ」
「そうなの?」納得出来ない様子だ。
希和は助手席で体操座りになって膨れている。
「私はアイドルなの?それとも…………」
「そんなのどっちでもでもいいじゃないか」
「そうなの?」
「それはファン一人一人の気持ち次第だろう、こっちが決められるもんじゃ無いと思う」
「…………そうか…………」
希和はしばらく考えると言った。
「私を好きになってくれたファン次第なんだ」
「そうだな、その人の気持ち次第だな、アイドルだと思ってる人もアーティストだと思ってる人も、色んな人がいていいと思うぞ」
「………………そういう事なんだね………」
希和は助手席で普通に座った。
「そっか、考えなくていいんだ、ただみんなに楽しくなってもらえるように頑張ればいいんだね」
「そうだな、それがプロ意識だと思うぞ」
「これからは可愛いことも楽しくなることも、カッコいいことも全力でやるよ」
「いいぞ希和、俺はそんな希和が好きだ」
「本当?」
「ああ、本当さ」
「じゃあ希和は頑張るよ」
「俺もしっかり応援するから」
児玉に到着すると希和はギターを練習し始める。
希美子さんが帰ってきた。
「お疲れ様です」
「あら、希和はギター頑張ってるのね」
「なんか吹っ切れたみたいですよ」
「そう…………」
希美子さんはハイボールとツマミを用意してくれた。
二人で乾杯する。
「武道館まで頑張ってね」希美子さんはニッコリした。
俺もニッコリ頷く。
俺は希和が武道館に向けて助走を始めたように感じた。
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