恋するプリンとゆるルン密着旅 19 行く行く!
朝食を終えるとリンのスマホにメールが届く。
「仕事の依頼が来ちゃった」
「えっ、どんな仕事?」
「温泉紹介の仕事」
「へー……そうなんだ」
「依頼があった温泉に入ってレポートするの、そうしたら見た人が行ってくれたり、検索したりしてくれるから宣伝になるの」
「へえ…………」
「お仕事だから行ってもいい?」
「どこに行くんだ?」
「うん、伊豆まで」
「伊豆……結構遠いな」
「でも割と近い方よ、九州とか東北とかだったら大変だよ」
「そうか…………日本全国どこから来るか分かんないんだ」
「うん」
「仕事だったら勿論良いけど、運転しんどくないか」
「少しね…………」
「じゃあオレが運転してやるよ、この車のマニュアルも読んだし、ある程度分かったから」
「えっ!タクちゃん免許持ってるの?」
「ああ持ってるよ、たまに父親の車でドライブとかも行ってた」
「自転車に乗ってるから運転免許無いのかと思ってた」
「そんなに上手くは無いけどな」
「そうなんだ」
「保険ってオレが運転しても大丈夫なのか?」
「うん大丈夫だよ」
「じゃあ伊豆まで運転してやるよ」
「やったー!ありがとう」
リンは俺の肩にすり寄ってなついている。
キャンピングカーと二人は伊豆に向かって走り出す。
「お風呂にタダで入れるね」リンは笑っている。
笑っているリンを見ると、俺自身も楽しくなった。
不思議な感覚だと感じている。
「そうだな」俺も何となく笑った。
東名を伊豆に向かって走りだす。
海老名で休憩するためにサービスエリアに立ち寄った。
リンが俺の袖をクイクイと引っ張っている。
「何だよ」
「アイス……食べたい」
「ん……」
「ソフトクリーム食べたい…………」
「そうか…………」
二人でソフトクリームを買い、ベンチに座って食べた。
「美味しいね」
「うーん、甘いなあ」
犬を抱いたカップルが前を通り過ぎる。
リンはその犬に手を振ってアピールした。
気を取られてリンのソフトクリームが顔の前に来た。
俺はソフトクリームにガブリと食らいつく。
一挙に少なくなった。
気がついたリンは一瞬固まると、口が横に広がって泣きそうになった。
「あーん、これ私の……食べちゃダメー……」
その表情が可愛くてまた食べようとした。
「ダメー!」慌てて逃げようとしてソフトクリームが落ちてコーンだけになってしまった。
「フェーン…………」子供のように泣き出してしまった。
「ゴメンゴメン、これをあげるから」自分が食べていたソフトクリームを渡すと、グスン……グスン……と泣き止んでまた美味しそうに食べた。
落ちたクリームを処理して車の戻るとリンは助手席でそっぽを向いた。
「タクちゃんは意地悪だ…………私をいじめて楽しそうにしてる……」
「そう、でもリンのために運転してるんだけどなあ……」
「う……そうね…………優しいよね……多分……」
結局伊豆に着くまで膨れていた。そんなリンを見ていると少し愛しくなってきている。
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