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星降る夜のセレナーデ 第79話 お仕事

「そうだ!お礼に食事はいかがですか?」アリサちゃんはトンと手を叩いた。

「えっ、今からですか?」

「はい、後でやっぱり嫌だと言われないように、先にご馳走しちゃいます」ニッコリ俺を見ている。

「まあ………良いですけど…………」俺は不安そうに小池さんを伺った。

「真人くん、行っておいでよ」ゆっくり頷く。

結局2人で食事する事になってしまった。

「私、目立たない所を知ってるからそこでいい?」

「はい、どこでも良いです」

二人で出版社を出ると、お店へ向かう。彼女はサングラスに帽子を深く被っている。お店はすぐ近くだった。レンガの壁で歴史がありそうなお店に入ると、彼女は安心したように帽子をとり、サングラスを外した。

「いらっしゃいアリサちゃん!」優しそうなマスターが声をかけた。

「いつものビーフシチュー2人分ね」彼女は俺に横目で確認をとりながらオーダーした。

食事をしながら色んな話しをした。

「1日に3千人も来るなんてすごいですね」俺は今日の驚きを言葉にする。

「3千人もいないわよ、同じ人が3回見ることが多いの」

「えっ、そうなんだ」俺は更に驚く。

「じゃあ1人で9枚も買うんですか?」

「そうね、そういう人もいるわね…………」

「………………………」俺はただ頷いた。

それを見た彼女は少し寂しそうな表情で言葉を漏らす。

「悪どいって思った?」

「いえ、そんな事は……………」

「これは私が決めた事じゃ無いし、お仕事だから…………」彼女は俯いた。

「解りますよ、仕事って自分の好き勝手には決められない事ばかりですから」

「浅見さんって優しいんですね」少しだけ口元が緩んだ。

「私母と二人暮らしなんです、だからお金が必要なんです」唇に力が入る。

「そうなんですか」俺はゆっくりと頷いた。

「中学まではこれでも真面目なガリ勉少女だったんですよ、こんな分厚いメガネをした」彼女は笑顔の前で、両手を上げてトンボのメガネを作ってみせた。

「え〜!」俺は少し笑いながらその様子を見ている。

「でもお父さんが病気で亡くなってから、お母さんが一人で昼も夜も働いてるから」少し寂しそうな表情だ。

「だからアルバイトしようと思ってたら、スカウトされたんです」

「そうだったんですか…………俺頑張ってテーマ曲作りますよ」

「ありがとう」彼女は微笑んでいる。

俺は彼女が優しくて頑張り屋さんだと思い、協力したくなった。

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