隠れ家の不良美少女 58 里帰り
俺は社長の小宮さんに里帰りをしたいと言って一週間休みを取った。
小宮さんは「1ヶ月でも良いよ」と笑った。
個人的な契約で働いているので、暇な時はびっくするくらい自由だ。
しかし、仕事が無くなれば、契約も無くなる。
俺は希和と福岡へ向かう。
希和の家までバイクで行くと、本庄早稲田まで希美子さんが二人を送ってくれた。
東京駅で駅弁を買ってのぞみに乗り込む。
希和は嬉しそうに車窓から外を眺めている。
「友希さん!富士山が見えるよ!」慌ててスマホで写真を撮っている。
「飛行機が早かったんだけどなあ……」
「いいの!新幹線に乗りたかったの!」希和は頬をふくらす。
「新婚旅行みたいだね?」希和がゆるい笑顔になった。
「俺は里帰りだけどね……」
「友希さんのお父さんやお母さんに気に入られるかなあ………」心配そうな顔だ。
「何を心配してんだよ」俺はただただ呆れるばかりだ。
希和は駅弁を開いて嬉しそうに食べ始める。
「美味しいね」
「そうか?……」
「うん」
広島を過ぎると希和は少し不安そうな顔になっている。
「お父さん会ってくれるかなあ……」
「どうだろうな……」
希和が飛行機を嫌がったのが何となく分かったような気がした。
博多駅に到着すると、兄が迎えに来てくれていた。
「お帰り……」
「有難う兄さん」
「初めまして、友希の兄、翔です」
「は、初めまして相沢希和子です、この度はご迷惑をおかけいたします」希和は恥ずかしそうにペコリと頭をさげる。
車に乗り込み走り出す。窓の外には懐かしい街並みが見えた。
「友希、まだ帰ってこないのか?」
「ああ……色々とやり残した事があってね」
「父さんも二人で工務店をやって欲しいと思ってるぞ」
「工務店は兄さんが頑張ってよ、俺は向いてないと思うんだ」
「そうかなあ……細かい仕事はお前が上手だけどなあ……」
「これからは働いている人達をまとめていく事が重要だと思うんだ、それには兄さんが適任だと思うよ」
「そうか…………」
実家にたどり着く。
大きな倉庫と横にある大きな家に希和は少し驚いたようだ。
「友希さんの家って大きい」目をパチクリさせている。
「お帰りなさい、そしていらっしゃいませ」母親が迎えてくれた。
「突然失礼します」希和は固まってお辞儀した。
「自分の家だと思って寛いでね」
「はい、有難うございます」希和はコチコチになっている。
広いリビングルームに案内されて更に硬くなった。
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