隠れ家の不良美少女 40 ドームイベント
木曜から始まった『ジャパンうまいものフェスティバル』の仕込みは無事にステージが出来上がって行く。
音響・照明・舞台施工も毎年同じ会社とメンバーなので、安心している。
施工が進む間にそれぞれのチーフが集まり、本番の台本を見ながら、細かい打ち合わせを進めた。
司会の原友里香《はらゆりか》さんも本番に向け原稿の確認で参加している。
原友里香さんは大学の時からの付き合いで、気心も知れているので安心だ。
大まか順調に進み、翌日の本番を迎えた。
東京ドームは入り口が回転扉になっていて、大きな荷物は運べない。
大型の太鼓などは搬入用の別の入り口から入れなくてはならないので、いくつかの郷土芸能は準備が大変になる。搬入から楽屋の管理は影山未来がやっている。
社長の小宮さんは会場の物産展を管理しているので大変だ。
アルバイトは三百人ほどがそれぞれの場所で働いている。
来場者はかなり多く、会場は賑わいを見せていた。
休憩できる場所と飲食できる場所が、ステージを見られる場所なので、ステージの前ににも多くのお客さんがいる。
俺はステージが見える後方の音響や照明のオペレート席で進行を管理している。
金曜は出演者が少ないので余裕で終わりを迎えた。
土曜の本番も無事に進み、終わった後司会の友里香さんと未来ちゃんも一緒に食事へ出かけた。
「友希くんとはお久しぶりだねえ」
「友里香さんも元気そうで何よりです」
「初めまして、影山未来です」
「初めまして、原友里香です」
とりあえず生ビールで乾杯する。
「「「乾杯!」」」
「友希先輩、友里香さんとは大学からの知り合いなんですよね?」
「そうだよ」
「じゃあ、私の先輩でもあるんですよね?」
「そうだね」
「じゃあ友里香先輩、友希さんの大学時代の事を教えてくださいよ、特に女性関係について」
「えっ!」友里香さんは俺をチラッと見た。
「伝説の歌姫『鳴宮桜子』さんと友希さんは仲が良かったんですよね?」
「そうね…………」友里香さんはまた俺をチラッと見た。
「未来ちゃん、俺の個人的な話はしなくてもいいだろう?」
「でも…………」少し頬が膨れる。
「そうなの、未来ちゃんは友希くんのことが好きなのね?」
「えっ!…………はい」恥ずかしそうに俯く。
「そっか…………今も友希くんの中には桜が住んでるのね」俺をまたチラッと見た。
「やっぱり友希先輩は桜子さんとお付き合いしてたんですね?」
「そうね、大恋愛だったわね」
「う………やっぱり………」
「でも桜が亡くなる前に、友希くんが誰かと幸せになるように応援してねって言われてるから、未来ちゃんが好きだったら応援するわよ」
「友里香さん、変な事言わないで下さいよ」俺は慌ててたしなめる。
「嬉しいです、友里香先輩!」未来ちゃんは友里香さんの横に移動した。
「友里香先輩、でも友希さんには彼女(仮)って言う可愛い女の子がいるんです、まだ16歳のコスプレイヤーなんですけど」
「そうなの?……へえ〜」ニッコリしながら俺を見ている。
「友里香先輩、この子です」未来ちゃんがスマホでキナコの画像を見せる。
「あら!可愛いわね………でもどこか桜に似てない?友希さん」
「えっ?そんな目で見たことがないからなあ」
「ええ〜!キナコちゃん桜さんに似てるんですか?」
「うん、何処となく表情が似てるかも」
「うそ……絶望的だわ」未来ちゃんは意気消沈した。
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