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隠れ家の不良美少女 55 お父さん

お昼を食べてガレージハウスへ戻ってきた。
希和も当然のようについて来る。
「友希さん……」心配そうに呟く。
「どうした?」
「動画をお父さんも見るかなあ……」
「恐らく見ることになるだろうな……」
「勝手に歌ったからお父さん怒るかなあ……」
「どうだろう…………多分大丈夫だと思うけど……」
「お母さんは分かってるからいいけど」
「お父さんには何も言ってないし……私の事が分かるかなあ……」
「どうかなあ……もしかしたら希美子さんの子供だと分かるかも知れないな」
「希和はお母さんに似てる?」
「まあ……似てるかも」
「そうか……」希和は考え込んだ。
俺はコーヒーを入れてミルク多めで希和に渡す。

「希和、お父さんに会いたいか?」
「分かんない……でも……一度は会って話をしたいかも……」
「そうか……」
「お母さんが私を産んで、頑張って育てくれた事は伝えたい」
「そうだな……」
希和はミルクコーヒーを啜った。

「お父さんに会いに行くか?」
「えっ?会えるの」
「俺の父親がロブスターズのメンバーを知ってるから、聞いたら分かるかも」
「そうなんだ……でも……お母さんに聞いてみなくちゃあね」
「そうだな、まずはお母さんの気持ち次第だな」
「お母さんが良いって言ったら、一緒に福岡まで行ってくれるの?」
「ああ、俺も実家にずっと帰っていないからな」
「そうなんだ、福岡旅行か」希和はニッコリ微笑んだ。
「お前、なんか勘違いしてないか?」
「ううん……大丈夫」ゆるい笑顔になった。

夜になって希和は歌のレッスンを受けるために天空カフェに行く。
俺はバイクで希和を送った。
新くんも綾乃さんもまだ残っていた。
二人に希和の父親のことを話してみる。
「友希くん、今後のことを考えると、父親としっかり話した方が良いかもね」
「そうだよね……」
「希和を僕の嫁にくださいって言ってくれば」綾乃さんが含み笑いをくれた。
「綾乃さん、キツイ冗談は辞めてくださいよ」
「あら、善は急げって言うじゃん」
「…………まったく〜……」

「できれば……キナコちゃんの次の曲を作って欲しいとお願いしたら?」
「やっぱそう思う?」
「そうする事が希和ちゃんとお母さんの為にもなる様な気がするなあ」
「だよね……」

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