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隠れ家の不良美少女 50 水の生まれる場所

「どんな感じで撮る予定ですか?」奏太くんは嬉しそうに聞いてくる。
「まだ何も決まってないんだよ、歌はとてもいいバラード風の曲だけどね」
「そうですか」
「いつも写真を撮影しているセットがあるから、そこで歌って録音しようと思ってるんだけどね」
「そうですか……ブルーバックでの撮影も可能ですか?」
「ああ、大丈夫だけど」
「じゃあ、背景の前でモノクロから始まって少しづつ色がついて、やがてブルーバックで加工して、最後は自然の中で歌うなんてどうでしょう?」
「良いねえ、カッコいい」新くんが何度も頷く。
俺も何となく良いように思えた。
「希和はどう思う?」
「新さんや友希さんがいいと思うならいいよ」
「そうか、じゃあその方向で進めよう」

「何処か神聖な自然を感じさせる所がないですか?」奏太くんはイメージを膨らませているようだ。
「あるよ、凄く良い所が」新くんが微笑んだ。
「近くなの?」俺は新くんを見た。
「ああ、直ぐそこだよ、ただ私有地だから確認してみないといけないけどね」
「どんな所なんですか」奏太くんは身を乗り出す。
「綾乃と水の生まれる場所って呼んでるんだけどね……」新くんはスマホで確認をとった。
「O Kだって、直ぐそこだから行ってみるかい?」
「「「はい」」」全員一致でいく事になる。
15分程歩くと、山の中に水が湧き出しているとても神秘的な所へ着いた。
「うわ〜なんて綺麗で神秘的なんだろう、水の生まれる場所って感じますね」奏太くんは感激している。
プリンちゃんや匠真くんも言葉を無くして見ている。
「友希さん、凄いねここ」希和は溜まった水を手ですくった。
「いいなあキナコちゃん、ここで歌って最後を締めくくろうよ」奏太くんは何度も頷いた。
「うん、いいよ、早速お母さんに話して衣装を作ってもらおう」希和も微笑んだ。

カフェへ戻ると綾乃さんが迎えてくれる。
「どうだった?とっても良い所だったでしょう?」
「うん、とっても綺麗だったよ」希和は少し興奮気味だ。
「あそこで生まれた水が別荘に来てるから、とっても美味しいし、お風呂も気持ちいいのよ」
綾乃さんは少し自慢げに言った。

千草さんは「何かが始まるって素敵よね、みんな頑張ってね!」そう言ってデザートを出してくれる。
プリンちゃんたちはニコニコと手を振って帰った。
俺も希和とガレージハウスに戻ってくる。

「友希さん………」
「何だよ」
「希和は、友希さんがいないと一人じゃ何にもできないよ」心配そうに俺を見る。
「大丈夫だよ、そばにいるから」
「絶対捨てないでね?」
「まるで恋人同士みたいな言い方だな」俺は笑った。
「だって……希和は友希さんのことを恋人以上だと思ってるもん」
「そうなのか……」
希和は抱きついてきた。
俺は希和の髪をそっと撫でた。

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