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隠れ家の不良美少女 33 変わり始めた日々

旨味たっぷりの『唐揚げ親子丼』を食べ終わると、凛ちゃんがコーヒーを出してくれた。
店内が落ち着いて来たので、匠真君と二人でテーブルに来てくれる。
「一瀬さん、今度匠真さんと二人でユーチューブをやろうと思ってるんですけど、どう思います?」
「それはいいんじゃないかな、またプリンちゃんを見たい人は沢山いると思うし」
「実は親友の奏太が映像の大学を出て映像制作の会社を立ち上げたんです、それで凛と俺が所属タレント第一号なんですよ」
「へえ〜、そうなんだ」
「本人は映画を作りたいんですけど、そんなお金はないのでしばらく動画を作って仕事にしたいらしくて」
「なるほど、俺も映像制作の仕事があったら声をかけるよ」
「ありがとうございます」匠真君はお辞儀した。
そこへどうやら本人らしき青年が現れる。
「お疲れ〜」
「奏太、イベント制作会社の一瀬さん、映像の仕事があったら声をかけてくれるって」
「私が有名になるきっかけを作ってくれた人だよ」凛ちゃんが補足してくれた。
「マジ!、初めまして榊奏太《さかきそうた》です、よろしくお願いします」名刺を渡される。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「あのう……こちらの可愛いJKさんは?」奏太君は希和を見る。
「初めまして私……今日からコスプレイヤーになったキナコです」恥ずかしそうに言った。
「キナコちゃんか、可愛いんでビックリしちゃったよ、今日デビューなんだ」
「はい、池袋のゲームショーに行って来ました」
「あっそうか、今日サンシャインでやってたねえ」
「俺の名刺です、何かあったらよろしく」ニッコリ会釈する。
彼は近くのテーブルに移動してノートパソコンを開いて見始めた。

しばらく凛ちゃんと希和はフアンを増やすにはどうしたらいいか話し込んでいる。
俺と匠真君は、今後の展開を考え、カップル系ユーチューバーの話をしていた。

「あのう!これ!これがもしかして?」奏太君がノートパソコンを持って慌ててテーブルにくる。
画面には『キナコ』の写真が大量にアップされている。
「すごい反響じゃないですか『キナコ』ちゃん」
「えっ?」希和は覗き込む。
俺も覗き込んだ。
『謎の美少女コスプレイヤー池袋に降臨』派手な見出しで投稿されたSNSの画像はとんでもないアクセス数だ。
「これが『キナコ』ちゃんだよね」
「はい、『マリン戦士アクア』のコスプレです」
「しかも、衣装の完成度すごいなあ」奏太君は驚いたままだ。
「お母さんが衣装を作ってくれたんです、剣と盾は友希さんが作ってくれました」嬉しそうに希和は微笑んだ。
「凄いなあ…………」奏太君は固まったまま動かなくなった。

凛ちゃんも覗き込んで「可愛い!」と声を漏らす。
「一瀬さんって女の子を有名にするのが上手なんですね」笑っている。
「いや、そんな事は決してないよ」俺は手を横に振る。

時間もかなり経ったので二人でお店を出る。
電車に乗り慣れてない希和を東京駅まで送って行った。
新幹線の改札で「本庄早稲田で、ちゃんと降りるんだぞ」そう言って別れた。
本庄早稲田駅までは、お母さんが迎えに来てくれるらしい。
ホームへ上がっていく希和を見届けた俺は、所沢へ向かった。

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