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隠れ家の不良美少女 69 第一歩

翌日、吉祥寺にある奏太くんのオフィスに向かう。
小さいビルの3階がオフィスだ、なかなか綺麗だった。
走り書きだが、四年間の希和のプロモーション計画書が出来ている。
「これ、手書きで悪いんだけど………… 」
奏太くんはじっくりと見た。
「なるほど、キナコちゃんが四年間で行う最高の活動計画 ですね」そう微笑んだ。
「これを踏まえて、レコード会社も決めたいと思うんだ」
「賛成です」
「勿論、奏太くんの意見も遠慮なく言ってくれよ」
「はい、何か思いついたら相談します」
「それから、キナコで発生した利益の30%がこの事務所ウイングの取り分と言うのではどう?」
「えっ?そんなに頂いて良いんですか?」
「妥当な線だと思うんだけど」
「ありがとうございます」
「それから、希和に30パーセント払って欲しい」
「はい、残りは希和のお母さん相沢洋裁に30%、そして最後の10%を美奈さんのサークルに支払って欲しいんだ」
「分かりました、全て了解です、じゃあ友希さんのプロデュース費用はウイングから支払います」
「いいよ、俺の事は考えなくても」
「ダメですよ、仕事をお願いしにくくなりますから」彼は笑った。
「これをどうぞ……」奏太くんは名刺を出す。
見ると株式会社ウィング  プロデューサー 一瀬友希と印刷されている。
「なるほど……手回しがいいね社長」そう言うと。
「社長は勘弁してくださいよ友希さん」頭をかいた。
「これからよろしくね」そう言って手を出すと「こちらこそよろしくです」そう言って力強く握手した。
その後匠真くんとプリンちゃんに報告も兼ねてお店に行く。
四人で会社の発展を願って乾杯した。

翌日からウイングの事務所でレコード会社と個別に話をした。
レコード会社のうち2社はいかにもキナコで利益を上げたいと言うのが見える。
当然のことだが、やはりキナコをいい商品として見ているようだ。
そして最後の一社である『SONEレコード』と話を始める。

「初めまして、SONEレコードの長谷川と申します、よろしくお願いします」品の良い白髪の紳士だ。
「初めまして、ウイングの一瀬です」俺は名刺を交換する。
「お伺いします、キナコさんをどのようにプロモーションされる予定でしょうか?」
これまでは『是非うちに任せてください』と言うような話だったが、少し違っていた。
「キナコはまだ16歳です、ですから彼女を潰してしまうような事はしたくありません、ですからこんな風にと考えています」
俺は完成させたプロモーション計画書を提示する。
長谷川さんはじっくりとそれを見ると頷いた。
「なるほど、とてもキナコさんを大切に考えた計画ですね……安心しました」そう言ってニッコリ微笑んだ。
「いかがでしょうか?」
「私もこの計画書なら大いに賛成です、やはりアーティストが守られる体制が整っていないと上手く行きません」
「ありがとうございます」俺は少しホッとする。
「SONEレコードはそちらの計画をサポートする形で音楽出版をお手伝いさせて頂きたいと思います」大きく頷いた。
「ありがとうございます、その言葉を聞いて安心しました、これからよろしくお願いします」俺は確信して手を出す。
二人でしっかりと握手した。

奏太くんがにっこりとコーヒーを運んでくる。
緊張も解けて世間話になった。

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